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4つの製品分野で勝負をかける

戦略の第一人者アリソン氏の指揮のもと、MGは4つのセグメントに特化した。Bセグメントのスーパーミニ、BセグメントのSUV、Cセグメントのハッチバック、CセグメントのSUVだ。これらは英国販売の約80%を占める主要セグメントだ。

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昨年の販売台数は約8万4000台で伸びが鈍化した(長年展開するヒョンデにほぼ並ぶ水準)。これは競合他社の増加に加え、ヴォグゾールなどの「老舗」ブランドが低価格での販売手法を習得したためだ。

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MG4の高性能バージョン『MG4 Xパワー』

今後の展望はどうか。ピグナキス氏は再び攻勢に出る時期だと見ているが、爆発的拡大を狙うつもりはない。

現在の事業規模は、販売量と収益性のバランスにおいてほぼ理想的だ。既存顧客への対応やディーラーの満足度維持にも十分対応できる規模である。「それに、このペースで拡大を続けていたら、すぐに英国でクルマを売っているのは当社だけになるでしょう」と彼は冗談めかして言う。

年末までには機能性と質感を高めた改良型MG4が登場する。一回り大きいSUVも追加され、2026年にはさらに新型車が登場予定だが、英国市場は同社のグローバルモデルラインナップのごく一部に過ぎない。そのため、英国の経営陣は次なる展開を決める時間的余裕があると見ている。

デザインスタジオがもたらす影響

MGの英国デザインスタジオは、筆者が訪れた中で唯一、オフィスビルの最上階に位置するスタジオだ。本社の最上階のワンフロアを占め、ロンドンの喧騒と景色を望むが、外界から隔絶された静謐でクリエイティブな雰囲気が漂っている。

自動車メーカーは昔から、デザイナーを現代の潮流の影響を受けられる場所に置きたがる。このスタジオはそれを究極的に体現していると言えるだろう。

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ロンドンにあるMGのデザインスタジオ

スタジオと30人ほどのスタッフは2019年にロンドンへ移転してきた。それ以前はバーミンガムにあり、環境は今ほど良くなかった。デザイン責任者のカール・ゴッサム氏は当時をよく覚えている。彼は2005年、南京汽車が上海汽車と合併して現体制が生まれる直前にMGに入社した。この体制はMGの成功の礎となった。

ゴッサム氏が加わった当時、主な仕事は初代『MG3』の開発だった。同車は長く活躍し、2011年の発売後、2度のフェイスリフト(2013年と2018年)を経て、2024年に新型モデルにバトンタッチして生産を終えた。MGのデザインは、2019年にロンドンへ移転してからさらに飛躍した。ゴッサム氏が先進デザイン責任者として指揮を執り、主役級のMG4 EVやサイバースター、そしてそれを支えるさまざまなモデルを生み出したのだ。

ゴッサム氏は英国市場で展開されるモデル以外にも、未導入のモデルやSAIC傘下ブランドの車両開発にも深く関与している。

MGの知名度を最も高めたのは英国スタイルのMG4だ。実用性と手頃な価格を兼ね備えた電動ファミリーカーの象徴として広く評価されている。「開発は2019年に始まりました」とゴッサム氏は振り返る。「EV専用プラットフォームがあったのは大きな強みでした。主に欧州市場向けのクルマを作るという目標は、結果的に大成功でした。英国だけで3年足らずで4万5千台を売り上げたのです」

SAIC会長を唸らせたスポーツカー

ゴッサム氏は、MGデザインで働く最大の魅力はチームの比較的自由な活動範囲だと語る。スタジオは中国主導プロジェクトの支援業務も担うが、多くの新規プロジェクトでは自ら主導権を握り、通常は「テーマ選定」段階(車両の全体的な外観が決定される時点)まで進める。その後は中国が引き継ぎ、実物大モデル(ロンドンでは製作不可)の製作とエンジニアリングを担当する。

スポーツカーサイバースターは多くの点で異例と言える設計だった。ゴッサム氏がMGのデザイン責任者(現:先進デザイン責任者)に就任するとほぼ同時に、「手に入るものなら何でも使って」MGスポーツカーを作ると宣言した。現代のMGスポーツカーを買うのは誰か、そしてそれはどんなクルマになるのか? その答えを探っていった。

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MGが久々に投入したスポーツカーサイバースター』

サイバースターの開発はいわゆる「スカンクワークス」方式で進められたため、長い時間を要した。つまり、スタッフは他の業務もこなさなければならなかった。正式な開発サイクル計画に組み込まれておらず、シザードアの設計など前例のない課題が山積みだった。中国では前例のないプロジェクトだったため、経営陣の理解を得ることが重要だった。中国から上司が視察に来た際、ゴッサム氏はマツダMX-5(日本名:ロードスター)を借りて昼食に連れて行った。

サイバースターのコンセプトモデルは、ロックダウンの影響で開発者不在のまま北京モーターショーのSAICブースで公開された。直接アイデアを売り込めないのは悔しかっただろうが、SAIC会長はサイバースターを大変気に入り、即座に量産を指示。シザードアを含む全仕様の実現を要求したため、中国のエンジニア陣に難題を突きつける形となった。

サイバースターの成功と、上海を拠点とするデザイン担当副社ヨゼフ・カバン(フォルクスワーゲン・グループ出身、ブガッティ・ヴェイロンの設計で知られる)の着任は、ゴッサム氏率いるデザイン部門にとって明るい兆しとなっている。

「わたし達のプロジェクトの成功が信頼の土台を築いたのです。これは新たな章の始まりだと感じています」とゴッサム氏は語ったのであった。


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