
電圧や電流を適切に切り替え、高速充電を可能とする「USB PD」。スマホやタブレット、ノートPCはもちろんのこと、ディスプレーなどの周辺機器まで、多くの機器を同じ充電器で動かせるようになるという、大変便利な規格です。
しかしその半面、勝手に調整されてしまうため、期待とは違う動作をしていることがしばしばあります。同じ充電器にノートPCとスマホ、タブレットを接続して充電していたら、ノートPCだけ充電されていなかった……とか、高速充電のハズが5V充電になっていた……とかですね。さらに、PD非対応で電源しか配線されていないようなデバイスには、5Vすら供給してくれません。このように、知らなければ「なんで!?」となってしまう動作がいくつもあります。
トラブルの原因になりやすいのが、USB PDで使われるType-Cケーブルは、見た目で対応規格の判断がしづらいこと。外付けSSDへのファイルコピーが妙に遅いなと思ったら、USB 2.0ケーブルだった……なんていう罠はよくあります。
また、60Wを超える電力を供給したい場合、eMarkerが内蔵されたケーブルを使う必要があります。しかし、このeMarkerが内蔵されているかは見た目でわからない製品が大半。ひどいものになると、「100W対応」などとパッケージに書いておきながらeMarkerがなく、60Wまでしか使えないという詐欺のような商品すらあります。
電力表示機能付きのケーブルを使えば、期待通りの給電がされているのかある程度わかるでしょう。しかし、多くの製品にあるのはワット数表示だけ。見たいのは、電圧や電流なんですってば。
●USBチェッカー、見るのは電力だけ?
こんなときに便利なのが、「USB電力計」(USBテスター、USBチェッカーとも)。電圧や電流がひと目でわかるうえ、1000円前後で買えるため、普段から活用している人も多いことでしょう。
ただし、わかるのはあくまで電力に関するものだけです。ケーブルの対応規格何か、eMarkerがあるのかどうかまでは判断できません。
こういったケーブルの詳細を調査するには、「AVHzY CT-3」や「FNIRSI FNB58」のような高機能モデル、または、以前紹介した「USB CABLE CHECKER3」のようなケーブルチェックに特化したデバイスを使うのが確実です。(関連記事:最高かよ! USBのケーブルやポートの正体を暴ける「USB CABLE CHECKER3」)
問題があるとすれば、こういった高機能なデバイスは1万円前後と価格が高いこと。できることなら、もっと安く手に入るものが欲しいですよね。
そんな願いをかなえてくれるのが、KOWSIの「KWS-X1」という製品。Amazonのマケプレだと2500円を超えていますが、アリエクだと1500円以下で買えることも珍しくないという、価格の安さが魅力です。それでいて、eMarkerや各種高速充電のチェック機能を備えているという、多機能なモデルになっています。
今回はそんなKWS-X1について紹介していきましょう。
●基本の電力計機能となる3つの画面
本体にある5つのボタンで操作します。ボタンは左からBack(戻る、もしくはメニュー表示)、OK(決定、もしくは一時停止など)、◀(前)、▶(次)、OFF/ON(Sinkモード)。押せばなんとなくわかるので、操作で迷うことはあまりありません。
使い方は簡単で、USB PD対応の充電器とデバイスの間に挟むだけ。これで、電圧と電流、充電時のモードなどが確認できます。メインとなる電力計機能は3つあり、◀▶ボタンで画面を切り替えられます。
見たい情報に合わせて画面を切り替えればいいだけなので、難しいことはありません。個人的によく使うのは、充電モードがわかる1つ目の画面。機器間で調整した電圧と電流の値(PDOなど)と、実際の値とが1画面で確認できるのが気に入っています。
ちなみに、OFF/ONボタンのSinkモードとは、PDで電力を受け取れるデバイスとして認識させるかというもの。ONにしておくと、KWS-X1の先に別のデバイスを接続しなくても電源が入るようになります。
といっても、何もデバイスが接続されていませんから、電流や電力はゼロのまま。意味がないように思えるかもしれませんが、次に紹介するプロトコルテストなどで役立ちます。
●プロトコルテストで対応機能のチェック
プロトコルテストは、充電器の機能を試すのに向いている機能。USB PDやQC(Quick Charge)といった高速充電規格に対応しているかどうかが調べられるほか、実際に電圧を変化させて出力させるといったことが可能です。
まずはUSB PD対応の充電器を用意し、KWS-X1を接続。Sinkモードをオンにしていると、起動するはずです。続いて、基本画面からBACKボタンを押してメニューを表示し、「2 Protocol」を選びます。
まずは「Auto-Test」を試してみましょう。
Auto-Testは、KWS-X1が対応している高速充電機能を片っ端から試してくれる機能。つまり、充電器がもつ機能を調べてくれるわけです。
試しに、手元にあった140WのUSB PD対応充電器を見てみましょう。プロトコルテストの実行は、OKボタンの長押しです。
この画面から、PDは140Wまで対応で、PPSは105W対応、電圧は5/9/12/15/20/28V出力が可能、QCは2.0/3.0対応で20Vまで、といったことがわかります。
続いて、Auto-PDを試してみましょう。
PDO一覧が出たら◀▶ボタンで任意のPDOを選び、OKボタンを押します。すると、実際に出力電圧が変化するはずです。
これをうまく活用すると、任意の電圧を出力するトリガーデバイスとしても使えます。PD非対応なのにType-Cを電源端子として装備している激安ノートとか、そういったものへの給電もできるようになるわけです。
ただし、想定外の電圧を無理やり供給することができるため、操作を間違えると、接続したデバイスが壊れる可能性もあるので注意しましょう。
なお、今回はUSB充電器に直接KWS-X1を接続しましたが、USB Type-Cケーブルで接続しても同じようにテストできます。ただし、60Wまでのケーブルを使ってしまうと、いくら140Wの充電器を接続しても、60Wだと認識されるので注意しましょう。
●eMarkerのあるケーブルなら対応規格も確認できる
KWS-X1を手に入れる本命機能ともいえるのが、eMarkerのチェック機能。eMarkerの有無はもちろんのこと、その内容まで表示できるため、ケーブルが対応するUSBの規格まで確認することができます。
ということで、早速使ってみましょう。
まずはSinkモードをONにして、USB充電器と接続。このとき、調べたいケーブルで接続するようにします。BACKボタンを押してメニューを表示し、「3 E-marker」を選びましょう。
このとき、画面に赤い文字で「Please turn the cable over」と出た場合は、USB端子の裏表が逆という意味。裏返して挿し直しましょう。
正しく挿している場合は「Click 'OK' To Test」と表示されるので、OKボタンを押します。これだけで、eMarkerの内容がチェックできるはずです。
「USB4Gen3」とあるのでUSB4対応、「50V 5A」とあるので、240W(計算上は250Wですが)対応だということが確認できました。
ちなみに、eMarkerがないケーブルの場合は、「E-marker Not Recognized Click 'OK' To Retry」と出て、情報が表示されません。
また、eMarkerがあるのにKWS-X1だと読めないケーブルがまれにあります。他のUSBテスターでは読めたりしますから、KWS-X1でこの表示が出ても、必ずしもeMarkerがない……というわけではない点には注意しましょう。
●電力計にちょっとプラスするだけで買える価格が魅力
eMarkerが読める多機能なUSBテスターは、1万円前後と高め。自分が知る限りですが、性能を抑えた廉価なFNIRSIのFNB38でも、3000円近くします。
それが、KWS-X1ならアリエクで約1500円。一般的なUSB電力計より少し高いだけですから、これから電力計を買おうと考えているなら、KWS-X1を狙うのがオススメです。とくに、ケーブルのトラブルを避けたい、充電器の性能を知りたいと考えているなら、持っていて損はないでしょう。
個人的に気に入っているのは、SinkモードをONにするだけで5V出力のトリガーとして使えること。そう、KWS-X1を挟むだけで、電源しか配線されていないようなデバイスにも給電可能になるんです!
電源端子がType-Cなのに、Type-A/Cケーブルでしか動作しないデバイスが意外と手元にあって、困ってたんですよね。分解してCCに5.1kΩの抵抗をつけてもいいんですが、面倒で……。
そんなときは、KWS-X1で解決。これが本当に便利です。
●お気に入りポイント●
・プロトコルテストで任意の電圧を出力可能
・激安なのにeMarkerが読める
・Sinkモードで簡単に5V出力できる



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