内閣府の『高齢社会白書(令和7年版)』によると、65歳以上の世帯のうち63.7%が「単独世帯」または「夫婦のみの世帯」となっており、老老世帯の割合は年々増えています。高齢者の暮らしにおいて、孫の存在は大きな喜びであると同時に、体力的・経済的な負担となるケースも少なくありません。特に年金生活に入った祖父母世代では、「可愛いけれど疲れる」「もう少し距離を置きたい」と感じる人も。今回は「孫嫌い」と誤解され、心を痛める66歳の女性のケースを通じて、“老後の家族関係”の難しさを考えます。

「毎週末が憂うつだったんです」

「私が冷たいんですかね?」

そう問いかけるのは、神奈川県に住む66歳の主婦・吉川美恵子さん(仮名)です。60歳でパートを退職し、現在は年金月額約12万円で夫と二人暮らし。慎ましくも安定した生活を送っていました。

ところが、1年前から長女一家が「週末は子どもを預かってほしい」と頻繁に孫を連れてくるようになり、美恵子さんの週末は一変しました。

「娘も仕事で大変だろうし、最初は快く引き受けたんです。でも、体力的に本当にしんどくて…。孫は5歳と2歳で、元気いっぱい。ケガをさせないよう常に目を光らせていないといけませんし、お昼もおやつも用意しなければいけない。『孫はかわいい』という気持ちと、『もう限界』という気持ちがせめぎ合って、苦しくなるんです」

「孫育て」に関与する祖父母。特に都市部では共働き世帯の増加とともに、平日・週末を問わず「親代わり」の役割を担う高齢者が多くなっています。

「本音」と「誤解」

「本当は少し休ませてほしい。でも、『孫が嫌なの?』って言われそうで、娘にも言えませんでした」

美恵子さんは、ある日ついに体調を崩し、週末の予定をキャンセルしたことがありました。そのとき、長女からは「無理してたの? 言ってくれればよかったのに」とLINEが届きましたが、それ以来、微妙な空気が続いています。

「 “孫嫌い”だと思われているんじゃないかな。でも、そうじゃないんです。ただ、少しだけ“自分の時間”が欲しかっただけなんです」

育児・介護・家事――定年後も“家族のために”という役割を期待されることが多い女性高齢者。

加齢とともに体力が落ちるなかでの“無償の支え合い”は、決して軽い負担ではありません。気力だけでは乗り切れず、心身の疲労や経済的な不安を抱えながら過ごす人も少なくないのが実情です。

その一方で、祖父母世代に頼らざるを得ない現役世代が存在するのも事実です。待機児童問題や高い保育料、病児保育の不足など、「制度だけでは支えきれない育児の現実」がある以上、“孫育て”は今後も続いていくと見られます。

「私だって、孫の成長を一緒に喜びたいんです。でも、少し“間”があれば、もっと素直に愛せると思うんです」

そう話す美恵子さんは、その後、地域のシニア向け講座に通い始めました。「少しだけ、自分の時間を取り戻せた気がします」と笑顔を見せます。

家族を思う気持ちと、自分を大切にしたいという気持ち――そのどちらも否定されるべきではありません。

(※写真はイメージです/PIXTA)