中国では、法令を順守させるために強制執行力を持たせた係官を「執法人員」と呼んでいる。権柄ずくで取り締まりを進め、暴行事件も多いとして、評判が悪い。しかし執法人員であるからには、体を張ってでも仕事に取り組まねばならないのかと思わせる事態が発生した。新浪網などが報じた。

 発生場所は海南市海口市。市公路局(道路局)の執法人員数人が自動車に乗り込みパトロールしていた。中国では大型車両の過積載が問題になっている。過積載が一因の交通事故が発生しており、さらに道路そのものや、地中の水道管やガス管を想定外の速さで痛めてしまうからだ。

 中国では水道管が破裂して大量の水が噴出したり、ガスが漏れて場合によっては爆発するなどの事故が多発しているが、「過積載の車両通行で、管が損傷していた」などと説明される場合が珍しくない。

 執法人員は過積載と見られるトレーラー式の大型トラックを発見。荷台部分が箱式になっているので積荷を確認できないが、車体の様子を見た執法人員の目には明らかだった。停車を指示したが、従わない。執法人員の車はトラックを追跡した。

 トラックはセメント工場の砂利置き場に入った。執法人員はトラック運転手に出てくるように要求した。しかし、何度叫んでも出てこない。内側からロックしている。

 やっと出てきた。執法人員は荷台の扉を開けるよう求めた。運転手はトラック荷台の側面に向った。執法人員の1人はトラックのすぐ近くで見守った。

 トラック荷台は側面を開閉する構造だ。運転手は扉を上側にはねあげた。「ドドドドド!」。一瞬にして砂利が崩れ落ちてきた。執法人員は逃げる間もなかった。大量の砂利の重圧で押し倒された。飛び跳ねる砂利から顔を防ごうとして手をかざしたので、「バンザイ」をするような格好で埋まった

 運転手も執法人員が埋まるとは想定外だったようだ。崩れてくる砂利に足を救われながらも、驚きあわててその場から逃げてしまった。

 その後の詳しい経緯は伝えられていないが、運転手は後になり、事情聴取で生活のために過積載はやむを得なかったと話した。トラックの持ち主は別にいて雇われ運転手をしているので「過積載にしないと、親方だって儲かりません。私の給料もなくなってしまうんです」と話したという。

 最初に停車を求められた時に応じなかったのは、執法人員が公務執行中と分かる自動車に乗っていなかったこともあり、「ヤクザに絡まれた」と思ったと説明した。

 砂利に埋まった作業員は約30分後に掘り起こされた。特にけがはしていないという。(編集担当:如月隼人)(写真は新浪網<http://news.sina.com.cn/>の30日付報道の画面キャプチャ)