
S4 V8をベースにS1を再現
英国の新興企業アンコール(Encor)が、ロータスのスポーツカー『エスプリ』のレストモッドモデルを発表した。オリジナルの販売終了から約40年を経て、カーボンファイバー製ボディと新型V8パワートレインによって生まれ変わった。
【画像】ロータス・エスプリの最新レストモッド! レトロフューチャーなV8スポーツカーへ【アンコール・シリーズ1を詳しく見る】 全18枚
イングランド東部チェルムスフォードに拠点を置くアンコール社は、ロータス出身のデザイナーなど自動車業界で経験豊富な人材を集めて設立された。今回発表された『シリーズ1(Series 1)』は同社初の製品で、50台限定で約43万ポンド(約8900万円)とされている。
チーフエンジニアのウィル・アイブス氏によると、1970年代に人気を博したエスプリS1のアナログな運転体験を「洗練」させ、現代技術と組み合わせて実用性を高めることが目標だったという。「ほぼすべての面で改良されている」とのことだ。
アイブス氏は「オリジナルを尊重しつつも、それに縛られることは避けたかった」とし、「このクルマを愛している一方で、改良の余地は大いにあった」と認めている。
新型シリーズ1はエスプリS1を再解釈したものだが、実際に車両のベースとなっているのは1994年の最終モデルであるS4 V8だ。その理由は、より先進的で強固な構造のシャシーを採用していたためだ。
それでも、ロータス・エミーラのエクステリアデザインに携わったチーフデザイナー、ダン・デュラント氏は、可能な限りオリジナルの精神を忠実に守る「責任」があると述べた。
アンコール社とロータスの間に協業関係はないが、共同創業者兼商業責任者のサイモン・レーン氏は「ロータスがこのシリーズ1を、自分たちの製品を補完するものとして捉えてくれることを願います」と述べた。
トランスミッションはほぼ新設計
エスプリS1との最大の違いはパワートレインだ。アンコール社によれば、オリジナルの907型2.0L直列4気筒ガソリンエンジンは、現代に求められる特性やエモーションに欠けているという。
そこで、エスプリS4に搭載された918型3.5Lツインターボ・フラットプレーンV8エンジンを採用し、「本来あるべき」パワーを目指した。
このエンジンのピストン、ターボチャージャー、インジェクターは新設計だ。最高出力は50ps向上して400ps/6200rpm、最大トルクは8kg-m向上して48.4kg-m/5000rpmとなった。オリジナルのエスプリS1と比べると、240psと29kg-mの向上となる。
車両重量は1200kgで、1トンあたり333psのパワーウェイトレシオを実現した。
また、V8エンジンには最新の電子スロットルボディコントロールとECUを組み合わせている。アイブス氏は、これにより「さらに正確な制御と、最も重要なドライバビリティが大幅に向上しました」と述べている。
5速マニュアル・トランスミッションも改良された。アイブス氏は「このスペースに他のユニットを組み込むことはほぼ不可能で、オリジナル車における限界と考えられてきました」と述べており、「古いケースから新しいトランスミッションを効果的に作り直す」必要があったという。
結果、トランスミッション内部部品のうち「ごく一部」のみを残し、実質的に新ユニットを構築することになった。さらにドライブトレインの強度向上のため、リミテッドスリップデフを追加した。
「この弱点を解消したことで、エンジン出力を若干引き上げられるようになりました。旧型トランスミッションによる制約がなくなったのです」
この改良により、アンコール・シリーズ1は0-100km/h加速4.0秒と、オリジナル車のほぼ半分のタイムを実現した。最高速度は約280km/hに達する。
V8エンジンではなく電動パワートレインを搭載する計画はあったかと記者に問われると、アイブス氏は「検討は行った」ものの、「純粋さを追求している」ため「わたし達が作りたかったアナログ体験を実現できなかったでしょう」と答えた。
足回りは現代的に再構築
再構築されたV8エンジンに合わせて、サスペンションシステム、アンチロールバー、電子制御システムも完全に新規設計となり、現代的な車体構造を獲得した。
特に重要な技術的変更点の1つは、フライオフ式ハンドブレーキから電子式への切り替えだ。これにより全体のパッケージングを改善し、バルクヘッドの強化、機械部品削減による軽量化、リアブレーキの大型化などが可能になった。
アイブス氏は次のように述べている。
「優れた部分はすべて残しています。(オリジナル車は)率直に言って素晴らしいクルマです。パワーステアリングの性能は、当時も今も最高峰と評価されてきました。アンコールはそれらをすべて継承しつつ、その上に新たな要素を構築しているのです」
「わずかに軽量化され、わずかにパワーアップしています。これが(S4生産終了後)20年にわたる技術発展の成果です」
「マクラーレンのような現代車の硬いサスペンションに変える意味はありません。柔軟性を保ちつつ、かつてのアナログな運転感覚を再現したい」
オリジナルに忠実なデザイン
アンコール・シリーズ1は、オリジナルのロータスとほぼ同じ見た目(サイズも同一)だが、ボディは完全新設計だ。ドナー車両のS4のグラスファイバー製チューブを撤去し、S1の仕様を厳密に再現したカーボンファイバー製ボディを装着している。
アイブス氏によると、強度と軽さを両立するために新しいボディシェルを採用したという。
「構造全体を見直すことにしました。既存のボディシェルを完全に取り外し、後の活用先を確保した上で、バックボーンシャシーに装着する完全新規のボディシェルを製作しました。シェルはオリジナル比で約半分の重量であり、もちろん驚異的な剛性を備えています」
外観はオリジナルを「洗練」させたものだが、現代的なタッチと独自のデザイン要素が随所に散りばめられている。
例えば、フロントとリアに配置されたレトロフューチャー的なデイタイムランニングライトが大きな特徴だ。リトラクタブル・ヘッドライトにはLEDを採用し、点灯時の開き角度を低く抑え、空力性能の向上に寄与している。また、8灯式のリアライトはエンジンが8気筒であることを示している。
変更点は細部に及び、オリジナルのサイドボディの黒いラインも廃止されている。
「あれは当時としては実に巧妙な設計でした。というのも、上下にそれぞれ巨大なタブを作り、中央で接着しているのです。接着用にはフランジ部分があり、それを打ち消すために黒く塗装し、デザインに溶け込ませたのです」とアイブス氏は言う。
1970年代の雰囲気とデジタルを融合
インテリアは新旧の融合だ。10.1インチの縦型インフォテインメント・スクリーンと、10.25インチのドライバーディスプレイを搭載。それに木製シフトノブ、1970年代風のバックミラー、オリジナルのウインカーレバーを組み合わせている。
衝突安全性の向上にも取り組んでおり、一体型のカーボンファイバー製ロールケージを装着した。レーン氏によると、「オリジナルのエスプリには横転保護装置がなかったため、横転させるのは絶対に避けたい」からだという。
「アンコールは車両を徹底的に分析し、改善することができました」とアイブス氏は力を込める。
デュラント氏は、「製品がどうあるべきかをチームで議論しました。可能な限りピュアな状態から始め、そこからどこまで洗練できるかを試したかった」と語った。
「時代が大きく進み、技術も大きく進歩しました。わたし達が採れる選択肢は、かつて車両開発に取り組んだ(ロータスの)チームが持っていた選択肢とはまったく異なるものです」
デュラント氏によると、開発中、チームは「これほど愛される象徴的なマシンに対して非常に強い責任感」を抱き、「絶対的な敬意をもって扱う」ことを常に意識していたという。
法規制の制限を受けながら新しいクルマを作るのではなく、1970年代に設計されたクルマを改良することについて記者に問われると、デュラント氏は「素晴らしいことです」と答えた。
「法規制は確かに、特定の方向へ押しやるものです。結果として、オリジナルの純粋さが薄められたものになってしまいます」と同氏は語る。絞り込むようなアンダーボディやノーズの高さなど、今日では禁止されるような要素こそが「誰もが愛し、求めるプロポーション」だという。
「巨大な技術的制約がラインの自由を阻む中、ここまで低く過激なデザインを実現するのは極めて困難です。だからこそ、このようなクルマを開発できたのはまさに至福の体験です」
アンコール・シリーズ1の価格は、ドナー車両のS4 V8の調達費用を除いて43万ポンド(約8900万円)とされ、わずか50台のみ販売する計画だ。ロータスが生産したオリジナルのエスプリS1は約800台である。
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