
凄まじかった会場の熱気
ジャパンモビリティショー2025が閉幕してから、1ヵ月以上が過ぎた。
【画像】101万人が来場!熱気に包まれたジャパンモビリティショー2025会場の様子 全57枚
会場となった東京ビッグサイトには10月30日から11月9日までの会期中に101万人が来場したという。前回の111万人には及ばなかったが、無料で見学できるスペースが実質的になくなったことを考えれば、むしろ大躍進と評価すべきだろう。
それにしても、会場の熱気は凄まじかった。
そもそも10月29日にメディア向けに行われた記者会見の混雑ぶりは目を見張るほどで、話題になったセンチュリーの記者会見にはブース内が満員とのことで内部には入れず、狭い入口を通じて中の様子を窺うしかなかった。
いや、センチュリーだけでなく本家のトヨタ、レクサス、さらにはホンダや日産に至るまで、どのブースも立錐の余地もない混雑ぶりで、ステージにはまるで近づけない状況だった。
一般公開日の人出も驚くほどで、11月5日の9時40分ごろにトヨタ・グループがブースを構える南棟を訪れたところ、300mほどある通路の端から端まで、オープンを待つ観客が5列か6列ほどでびっしりと並んでいたのには度肝を抜かれた。この日、夕方17時近くにも南棟を訪れた時にはまだ大変な人ごみで、人気のセンチュリー・ブースは40分待ちと表示されていたので入場を諦めることにしたくらい。
もっとも、この待ち時間は実際よりもやや長めに表示されていたらしく、たとえ40分と表示されていても実際には15分か20分程度で入場できたという話を知人から聞いた。表示よりも早く入場できれば観客の満足度は高まるだろうから、これはうまい戦略といえる。
IAAも2023年にミュンヘンで再出発
そのおよそ2ヵ月前、私はミュンヘンで行われたドイツの自動車ショー、『IAA』を取材していた。日本の自動車ショーが東京モーターショーからジャパンモビリティショーへと名前を変えたのと同じ2023年に、IAAはそれまでのフランクフルトからミュンヘンに会場を移し、再出発を切っていたのだ。
かつては私もフランクフルト・ショーに足繁く通ったものだ。当時、メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンは街のディーラーよりもはるかに大きな規模のブースを出展。しかも2階建てや3階建てになっていることも珍しくなかった。
もちろん、出展していたのはドイツの自動車メーカーだけでなく、ヨーロッパ各国やアメリカ、日本からも参加する自動車メーカーは少なくなかった。従って1日でショー全体を取材するのはとうてい不可能で、2日から3日かけて各ブースを回るのが常だった。
そんなフランクフルト・ショーの人気に翳りが見え始めたのは2017年のこと。そして2019年ははっきりと来場者数が減っているように感じたほか、出展を控える自動車メーカーも現れ始めた。その影響か、会場の一部に黒幕が張られ、内部に入れないスペースも散見されたことが強く印象に残っている。
そして2021年は新型コロナウィルスの影響で、フランクフルト・ショーも東京モーターショーも開催を見合わせ。2年後の2023年にはIAAがフランクフルトからミュンヘンに会場を移し、東京モーターショーはジャパンモビリティショーと名前を変えて再出発を果たしたのである。
かつての活気を失ってしまった自動車ショー
新型コロナウィルスによるパンデミックの影響を受けたのはドイツや日本だけでなく、長い伝統を誇っていたジュネーブ・ショーも2019年を最後に開催されなくなってしまった。
そのほかの国際自動車ショーでいえば、パリ・サロンこそ従来どおりの内容で開催されているものの、北米のデトロイト・ショーも2019年を最後に大きく様変わりして規模を大幅に縮小。各国の自動車ショーを取材して回っていた私も、ショーのために海外出張することは久しくなくなっていた。
なぜ、自動車ショーはかつての活気を失ってしまったのか。私自身は環境問題が自動車産業界に与えた影響が大きかったと捉えている。
地球温暖化を防止するために自動車のCO2排出量削減が求められるようになると、各メーカーは環境に優しい電動車をショーに出展するようになった。あわせて、運転する喜びとは無縁のピープルムーバー的な車両が各ブースのメインステージを飾るようになり、人やモノの移動のラストマイルを支える電動車いすや電動スクーターなどが多数展示されるとともに、自動運転やカーシェアリングなどといった言葉が脚光を浴びるようになった。
そうした変化が2017年から2019年にかけて急速に進んだところで新型コロナウィルスが蔓延し、少なくない数の国際自動車ショーに『留めを刺した』というのが私の見方である。
2023年にジャパンモビリティショーへと衣替えした旧東京モーターショーも、結局のところ、前述した『新時代の自動車ショー』の流れを汲んだものだった。結果的には、無料スペースを数多く用意し、そこを訪れた観客もカウントすることで入場者数をなんとか100万人の大台に乗せることに成功したものの、正直、会場で熱量を感じることはほとんどなかった。
IAAのもう少し異なる事情
今年9月にミュンヘンで開催されたIAAでも、あまり熱量は感じられなかったが、それはもう少し異なる事情によるものだった。
ミュンヘンのIAAも電動車が主体で、走りを強く意識したモデルはポルシェ911ターボSくらい。あとは実用的ではあっても、あまりエキサイティングとはいいかねるモデルを中心とした出展だった。そのせいかどうか、各メーカーの記者会見も熱気を欠いたもので、決して広いとはいいかねる各ブースに集まった報道関係者の数もかつてに比べれば大幅に少なくなっているように感じた。
こうした変化には、主催者が目指した新しい方向性も関係しているようだった。
というのも、メイン会場となったメッセ・ミュンヘンは、ミュンヘン中心部から電車で30分ほど離れた郊外に位置していた。そしてミュンヘン市中心部には屋外の展示スペースを設け、こちらは無料で見学できる2段構えのショーとして開催されたのだ。
つまり、市中心部の無料スペースは一般の観客を対象とするB to C、メッセ・ミュンヘンのメイン会場は自動車産業関係者が商談を行うB to Bを主な目的としていたのだ。
しかし、今年のジャパンモビリティショーは完全に違った。前述のとおり、記者会見が行われたプレスデーには日本だけでなく欧米やアジアからも報道陣が訪れたほか、一般公開日も多くの観客で賑わった。
この違いは、いったいどこから来たのだろうか?
(以下、なぜジャパンモビリティショーは大躍進したのか?後編に続きます)
■IAAモビリティ2025の記事
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