
このほど、フランス西部の海底で、驚くべき巨大構造物が見つかりました。
それは今から約7000年前、紀元前5800年ごろに築かれたと考えられる「長さ120メートルの海底の石壁」です。
現在は水深9メートルの海底に沈むこの壁は、当時の人々が高度な技術と社会組織をすでに持っていた可能性を示しています。
一体なんの目的で建てられたのでしょうか?
研究の詳細は西ブルターニュ大学(UWB)らにより、2025年12月9日付で学術誌『International Journal of Nautical Archaeology』に掲載されています。
目次
- 海底に眠っていた「石器時代の巨大建造物」
- 「魚捕り」か「防潮」か、その目的は?
海底に眠っていた「石器時代の巨大建造物」
この発見があったのは、フランス・ブルターニュ地方の西端に位置するセナン島(イル・ド・セナン)沖です。
ダイバーたちは、長年海中に沈んでいた全長約120メートルの石の壁と、同じ時代に造られたとみられる十数基の小規模な人工構造物を確認しました。

これらは、2017年に引退した地質学者イヴ・フーケ氏が、レーザー測深によって作成された海底地形図を調べる中で発見したものです。
海底の谷を不自然に横切る直線構造を見つけ、「自然物ではあり得ない」と直感したことが調査のきっかけでした。
その後、2022年から2024年にかけて潜水調査が行われ、花崗岩で造られた人工構造物であることが正式に確認されました。
紀元前5800年から紀元前5300年の間に築かれたと推定されており、建設当時は現在より海面が低く、構造物は海岸線付近に位置していたと考えられています。
「魚捕り」か「防潮」か、その目的は?
研究チームは、この巨大な壁が、潮の干満を利用した魚捕り用の仕掛けだった可能性、あるいは海面上昇から土地を守るための防護壁だった可能性を指摘しています。
いずれにせよ、数トンにもなる石材を採取し、運び、正確に積み上げるには、高度な技術力と計画性が欠かせません。
論文では、この構造物が「巨石記念物(メガリス)」と同等の重量規模を持つ点に注目しています。
ブルターニュ地方に点在する有名なメンヒルなどの巨石文化より、数世紀も早い時代に、すでに同様の石材加工技術が存在していた可能性があるのです。
この発見について、西ブルターニュ大学の考古学教授イヴァン・パイエ氏は、「沿岸社会がどのように組織され、資源を管理していたのかを理解する新たな手がかりになる」と述べています。
現在、海底に沈むこの巨大な壁は、かつて人が暮らし、働いていた土地の痕跡です。
急激な海面上昇によって領域を失った出来事は、やがて「沈んだ都市」の伝説として人々の記憶に残った可能性も指摘されています。
7000年の時を越えて姿を現した石の壁は、石器時代の人々が、私たちの想像以上に組織的で、環境と向き合っていたことを静かに物語っているのです。
Huge undersea wall dating from 5000 BC found in France
https://www.bbc.com/news/articles/crk7lg1j146o
Ancient undersea wall dating to 5,800 BC discovered off French coast
https://phys.org/news/2025-12-ancient-undersea-wall-dating-bc.html
元論文
Submerged Stone Structures in the Far West of Europe During the Mesolithic/Neolithic Transition (Sein Island, Brittany, France)
https://hal.science/hal-05406477
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
ナゾロジー 編集部



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