
「節税につながるうえに、返礼品も受け取れる制度」として、多くの人が活用している「ふるさと納税」。地方自治体の財源確保や地域活性化にもつながる仕組みとして評価される一方、「住民税の通知を見て驚いた」といった声も。特に、年末に駆け込みで寄附をおこなったり、仕組みを理解せずに上限を超えて寄附したりした場合、「逆に損した気がする」と感じるケースもあるようです。
「まだ間に合うかな?」慌ててスマホを開いた年末の夜
「昨年の12月のことです。会社の先輩が『今年はふるさと納税した?』『まだなら急げ』と声をかけてきたのがきっかけでした」
東京都内で働く51歳の会社員・松井貴之さん(仮名)。その日、帰宅後にスマートフォンで検索し、有名な返礼品比較サイトから「和牛」「海産物」「お米」などの人気商品を中心に寄附先を選んでいった松井さん。
これまでふるさと納税に本格的に取り組んだことはなく、申請や制度の細かい仕組みをよく理解しないまま、年末にまとめて申し込んでしまったといいます。
「あとでゆっくり控除上限を計算しようと思っていて。収入から考えればやや超えていたかもしれないけど、『まぁ大丈夫だろう』くらいに思っていました」
ふるさと納税の寄附は、翌年の6月ごろに受け取れる「住民税決定通知書」の金額に反映されます。
「想定していたより控除額が少なく、結果として月に5,000円ほど住民税が高いままだったんです。思わず言葉を失いました」
後日、自分の寄附額と、ふるさと納税の「控除上限額」とを見比べてみた松井さんは、自分が所得に対して寄附をしすぎていたことに気づきました。
「一部の寄附が控除対象外になってしまっていたんです。つまり、節税にならない“ただの寄附”になっていたという…。もっと早く調べておくべきでした」
さらに松井さんが戸惑ったのが、「ワンストップ特例制度」の申請手続きでした。後から慌てて調べて、初めてその事実を知ったといいます。
「5つを超える自治体に寄附すると確定申告が必要だって知らなかったんです。申請書の提出も間に合わなくて、結局、税務署に行く羽目になりました」
ワンストップ特例制度とは、確定申告をしなくてもふるさと納税の控除が受けられる制度。ただし、年間5自治体以内かつ、寄附のたびに申請書を期限内に提出する必要があります。
「うっかり6自治体に申し込んでいたうえ、申請も一部出し忘れていました。返礼品のことで頭がいっぱいで、制度の基本をおろそかにしていたんだと思います」
制度の仕組みと注意点
ふるさと納税の制度は、寄附者が実質2,000円の自己負担で、寄附した金額の多くが翌年の住民税や所得税から控除される仕組みです。ただし、控除を受けられる金額には上限があり、その上限は年収や家族構成、扶養の有無などによって異なります。
たとえば、年収600万円の独身会社員の場合、控除上限額の目安はおよそ7万7,000円前後とされています(総務省「ふるさと納税ポータルサイト」より)。この上限を超えて寄附をすると、超過分は税金から控除されず、結果として自己負担が増えることになります。
また、2023年6月には総務省が「事務手数料の透明化」や「寄附金の適正な使途の明示」などを盛り込んだ制度改正を実施しました。返礼品競争の過熱を抑える狙いから、自治体側にも一定のルールが設けられています。
「もっと調べてからやればよかった、というのが正直なところです」
松井さんはそう振り返ります。
今年の年末を迎えるにあたり、松井さんはすでに「今年分のふるさと納税は終えた」といいます。その一方で、今年はふるさと納税とは別に、災害支援や子ども支援を目的とした団体への寄付もおこないました。
「ニュースを見て、何かできないかと思って。寄付そのものに後悔はありませんが、ふるさと納税とは税金の扱いが違うという点は、今回あらためて意識するようになりました」
寄付金控除は、一定の要件を満たせばふるさと納税以外の寄付でも受けられますが、確定申告が必要になるなど、手続きや仕組みは異なります。松井さんは、「去年の経験があったからこそ、今年は少し慎重になれた」と話します。
ふるさと納税は、正しく理解したうえで活用すれば、家計にとってメリットの大きい制度です。一方で、返礼品の魅力に目が向きすぎるあまり、制度の本質や注意点を十分に確認しないまま利用してしまうケースも少なくありません。
総務省のデータによれば、2024年度のふるさと納税の利用者数は1,000万人を超え、年々増加傾向にあります。制度が多くの人にとって身近になるなかで、「仕組みを理解して使う」ことの重要性が問われています。



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