冬の楽しみのひとつ「天体観測」。はるか遠くの星を眺めながら、どんな世界なのか想像するのも一興ですが、陽系にはヘンな星が多いのはご存じでしょうか?

太陽系の惑星は、北極星から見て反時計回りに公転し、その影響で自転も反時計回りになるのがセオリーですが、「ヴィーナス」の名で知られる金星は唯一逆向きに回転するヘソ曲がり。太陽からおよそ29億万km離れた天王星は地軸がほぼ「横倒し」で、42年ごとに昼と夜が入れ替わる気の長い星。地球にほど近いところにも、興味深い惑星が多く存在するのです。

■金星の特技は「ヘッドスピン」

太陽系の惑星が太陽のまわりを「公転」しているのはご存じでしょう。地球の場合、北極を見下ろすと反時計回りに公転し、これが「年」や「四季」を生み出しています。太陽に近い惑星は速く、遠い惑星ほど公転周期は遅くなりますが、「向き」は反時計回りで統一され、逆向きに進む惑星は存在しません。太陽系が「ちり」やガスだったころは逆向きのものも多かったのでしょうが、ぶつかり合って消えてしまうか、より大きい物体に取り込まれたため、すべて同じ向きになったと考えられています。惑星自身がコマのように回転する「自転」も反時計回りなのは公転の影響で、もし公転が時計回りなら自転も逆回転、と規律正しく動いているのです。ところが、なかにはアナーキズムあふれる惑星もあり、ひとりだけ逆に自転している星があります。ヴィーナスの名で知られる「金星」です。

金星は、太陽系のなかで唯一逆向きに自転する惑星で、金星で暮らすと「西から登ったお日様が東に沈む」が「これで良いのだ」となる場所です。さらにおもしろいのが、

 ・公転 … 224.7日

 ・自転 … 243.0日

と、1年よりも1日のほうが長く、1日に2回の誕生日もありなので、住むにはややこしそうですね。かなりメンドウくさい星ですが、最初から逆向きに自転していたのではなく、なにかが激突し上下が逆転した説が有力で、そのため地軸が177度傾いている、と表現されています。

■1日は17時間なのに、42年間も「昼」が続く?

高速で自転しているのに、とてつもなく長い1日の星もあります。太陽系7番目の惑星「天王星」では、昼と夜が42年ごとに訪れるのです。

天王星の自転周期は約17時間と、地球の時間では0.7日で「1日」が経ちます。ところが、地軸は約98度と大きく傾き、公転面とほぼ水平になっているため、ダダをこねて寝転げ回るちびっ子のように自転している状態。そのため天王星には、半日経っても「昼」にならないエリアが存在するのです。

地球にたとえると、

 ・赤道付近 … 昼夜があるのは春と秋だけ

 ・軸付近 … 夏は日が沈まず、冬はのぼらない

と、昼か夜かは公転次第、しかも公転周期は約84年と長いため、場所によっては42年間の日照りか暗闇を味わうことになってしまうのです。

1日は17時間なのに昼と夜が42年間では、生活リズムを維持するのもタイヘンそうですね…来年の「昼」を味わえるのは84年後ですから、天王星での生活を楽しむなら「長生き」が最重要課題になりそうです。

■まとめ

 ・太陽系の惑星は、北極側からみると反時計回りに公転している

 ・自転も反時計回りなのは、公転の影響

 ・金星はひとりだけ自転が逆向き。なにかにぶつかって上下さかさまになったらしい

 ・天王星は地軸がほぼ水平なため、軸近辺では42年ごとに昼/夜が訪れる

(関口 寿/ガリレオワークス)