
「給料は上がらないのに、税金と社会保険料だけが増えていく」そんな閉塞感のなかで、投資大国アメリカの現役世代は、ある仕組みを使い倒して着々とミリオネアを量産させました。本記事では、岩崎陽介氏の著書『頭のいい会社はなぜ、企業型確定拠出年金をはじめているのか』(青春出版社)より、「企業型確定拠出年金」のしくみやメリット、日本の経営者に広く普及していない理由について解説します。
節税も資産形成も叶える「企業型確定拠出年金」
企業型確定拠出年金の最大の特徴は、一度拠出を始めると60歳まで出せない、ということです。
一見、使い勝手が悪そうな制度に思えるかもしれません。それにもかかわらず、なぜ私がこんなに一生懸命、お勧めしているかというと、そのデメリットを打ち消して余りあるお得なメリットが付与されている制度だからです。
みなさんの給料明細を見ていただくと、給料の額面から、だいぶ減ったものが手取り額になっていませんか。これは、給料の額面から、所得税、住民税、社会保険料などが引かれているからです。企業型確定拠出年金は、この給料の額面から天引きされる税金や社会保険料を抑える効果があります。
さらに、その掛金を運用していくことができるのですが、運用して増えた利益に関しては非課税です。今流行りのNISAのような機能も兼ね備えているのです。
税金や社会保険料は、年々増加傾向にあります。特にコロナによって、今後増加していく可能性が高いでしょう。そんな時代において、税金や社会保険料がお得になって、老後に向けて資産形成がしていける、とてもありがたい制度なのです。
60歳まで出せない、ということは、60歳以降のお金を貯めていくための制度です。すなわち、老後の資産形成のための制度です。私はよく「一度入れたら60歳まで取り出せない、割れない貯金箱ですよ」とお伝えしています。
誤解を恐れずに言うならば、老後の資産形成のための制度や金融商品の中で、これ以上にお得なものはありません。
積立・運用で資産1億円超の「401kミリオネア」が増えている
企業型確定拠出年金の歴史をたどれば、おおもとはアメリカです。アメリカでは、企業型確定拠出年金を多くの国民が利用し、資産形成を効率的に行っています。
アメリカの企業型確定拠出年金は401kと呼ばれていますが、アメリカ版ヤフーファイナンスの記事によると、コロナ禍のときにも、「401kミリオネア(資産を1億円以上保有している人)」といわれる人たちが増加したといいます。
税制や社会保険料のメリットに加えて、資産運用の力も活用して、上手に資産形成していることが見て取れます。日本においても、ぜひこの制度を有効活用する以外に手はありません。
所得が上がるほど“恩恵”も増える…企業型DCのメリット
では、実際、どれくらいメリットが出るのか? 私は「最低でも、掛金の15%はお得になりますよ」とお話ししています。企業型確定拠出年金の掛金は上限を5万5000円とし、各個人で自由に決めることができるのですが、その拠出した金額の15%分の税金がお得になります。
たとえば、1万円拠出した場合は、1500円キャッシュバックされるイメージです。
「最低でも15%お得になる」というのは、所得税の最低が5%、住民税は全国ほぼ一律10%だからです。高所得の方は、その分、所得税もどんどん上がっていくので、さらにメリットは拡大していきます。それに加えて、社会保険の等級が下がれば、社会保険料の支払いを抑える効果も上がります(社会保険料が下がることによる留意点もあります)。
以上をまとめると、最低でも掛金の15%がお得になることに加えて、次のメリットがプラスアルファされていくイメージです。
・所得が上がれば、さらに税金メリットがプラスされる
・社会保険料の支払いが減る可能性がある
・掛金を運用した場合、その運用益は非課税
老後の資産形成において最強の制度である企業型確定拠出年金を有効活用して、効率的に老後に備えていきましょう。
優秀な人材を確保するための「福利厚生」にも
老後2000万円不足問題が話題になってから、年金を含めて老後のお金に対する不安感は高まっています。そんな時代に、老後のお金を自分で準備しておかなければいけない、という思いは以前にも増して強まっています。
企業型確定拠出年金が会社にない場合は、各個人が金融機関で個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)をやるのですが、その加入者は近年急増しています。ここからも人々の老後のお金に関する関心が高まっていることが見て取れます。
iDeCoをすでにやっている人、もしくはこれからやりたいな、と思っていた人にとっては、企業型確定拠出年金が導入されることは願ってもないことです。なぜなら、口座管理料等が原則、すべて会社負担になるからです。iDeCoは年間数千円の手数料がかかります。それが会社持ちになるというのは、従業員にとっては嬉しいことです。
また、iDeCoの場合は、投資の勉強を自ら行っていく必要があります。しかし企業型確定拠出年金が会社に導入されれば、会社側が投資教育の機会を提供してくれることになるので、これも従業員にすれば助かる部分です。
これからは少子高齢化に伴って、人材不足がますます加速していくことが想定されます。また、コロナ後のV字回復期においても、人材の奪い合いは激しさを増していくことでしょう。そんな時代においては、従業員にいかに報いるか、福利厚生をいかに充実させることができるかが、経営者にとって大きな経営課題の一つになってきます。
そこで、優秀な人材の維持・確保のためには、福利厚生の一環としてこの制度をいち早く取り入れるべきでしょう。今まで以上に従業員を大切にし、よりイキイキと働ける環境を整えるためにも、企業型確定拠出年金は有効です。
中小企業経営者に制度が普及していない“裏事情”
「こんないい制度なのに、なんで今まで知らなかったのだろう」
この制度をお勧めした経営者から、よくこんな感想をいただきます。おっしゃる通りで、これまで企業型確定拠出年金とは、大企業においてはごく当たり前に導入されているのですが、中小企業にはあまり情報が提供されていない制度でした。
これは実は金融機関側の問題で、ある程度まとまった加入者が見込めない企業には積極的に提案していなかったのです。金融機関には手数料などうまみがないというのも積極的にお勧めされない理由の一つでしょう。また、制度の説明や手続きなど専門性が求められるため、それに対応する人材が不足しているというのも一因でしょう。
そのため、日本にある厚生年金適用事業所250.9万社(2020年3月末現在)のうちの3万8328社(2021年3月末現在)にしか導入されていない制度なのです。約1.5%の比率です。
一方で、加入者数はというと、約750万人です。労働人口は6831万人(2021年12月末時点)なので、約11%です。この数字を見ると、大企業を中心に普及が進んでいて、中小企業においてはまだまだ普及が進んでいないということがよくわかります。
現在は企業型確定拠出年金とiDeCoを合わせると、おおよそ1000万人が確定拠出年金の利用者です。iDeCoまで合わせると、労働人口に対して約15%まで比率が上がってきます。
2022年4月以降には確定拠出年金がより使いやすくなる法改正もあり、iDeCoをはじめ、確定拠出年金への関心というのはさらに高まっていくことが予想されます。
また、最近、保険募集人(生保・損保)、IFA、FPなどの金融パーソン、税理士、社労士などの「士業」の方々が、この企業型確定拠出年金制度を中小企業向けにお勧めするケースが少しずつ増えてきています。
近年の流れを見ていると、おそらく近い将来、この制度は、今まで情報が行き届いていなかった中小企業にも広がっていき、かなりの企業、人々が利用するようになるでしょう。はじめた会社から得をすると言っても過言ではありません。この流れに乗り遅れないでほしいのです。
岩崎 陽介
株式会社Financial DC Japan
代表取締役社長



コメント