「暖気」と呼ばれる集中暖房の供給が開始した中国東北部ではここ数日、深刻な大気汚染によるスモッグが発生している。とくに遼寧省瀋陽市の状況はひどいようだ。汚染物質を含んだスモッグは市民の身体にとって有害だが、人体に悪影響を及ぼす健康被害とは別の「被害」も助長しているようだ。

 それは、「車上荒らし」の増加である。中国メディア・新浪汽車は9日、同市で現地時間8日午前8時ごろ、所有する車が車上荒らしの被害に遭っていたことを発見し、警察に通報した女性市民の話を紹介した。また、7日から8日の週末にかけて同じ場所で10台あまりの自動車が同様の被害に遭ったとする市民の話を伝えた。

 この週末は雨と雪の悪天候に加え、濃いスモッグが立ち込めたため、外に出かけたり自動車を運転したりする市民が少なかったことが、犯罪者に「仕事」の時間を十分与える結果につながったようだ。

 同市では11月1日より「暖気」の供給を開始。石炭エネルギーを利用する「暖気」は冬の大気汚染を起こす主要因とされており、同市では供給開始初日に市内の供給会社の検査を実施、基準を超える排ガスや脱硫装置の問題などに対する取り締まりを実施した。

 しかし、大気の悪化を食い止めることにはつながらず、8日午後3時過ぎには空気品質指数(AQI)が「極めて重度な汚染」レベルの500に達するとの予測が出され、最大級の警戒を求める一級(赤色)警報が発表された。

 中国東北部の冬の寒さは厳しく、「暖気」は多くの家庭にとって欠かせない存在である。だからといって、このシーズンになった途端に大気汚染が生じる状況を放置するわけには行かない。大気汚染によるスモッグは、環境や市民の健康のみならず、社会の治安にも影響しかねない問題なのだ。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)