今の日本は、誰もが絶対的な正解を求め「善か悪か」「1か0か」という考え方に陥っている。そのような堅い考え方が蔓延してしまったばかりに、社会全体にゆとりがなくなり、社会システムが膠着し、日本という社会は変化を受け入れられなくなっている。しかし、これからも日本を誰もが住みやすく、ゆとりある幸せな社会にするためには、このような堅い考え方から脱却しなければならない。

【詳しくはこちら】ダ・ヴィンチニュースへ

 そのためには『創造的脱力 かたい社会に変化をつくる、ゆるいコミュニケーション論』(若新雄純/光文社)で紹介している、ゆるいコミュニケーションを積極的に取り入れる必要があるだろう。

 著者は市役所に現役女子高生の意見を取り入れる部署をつくった「鯖江市役所JK課」や会社の社員全員がニート取締役という「NEET株式会社」などイロモノ的な社会活動を行っている若新雄純氏だ。氏は本書を通して、新しいモノや考え方を創造するためには従来のようなマジメなアプローチだけではなく、あえて「ゆるく」物事を考え、今までのように上下関係と立場を重んじる考え方を変化させようと語っている。

 実際に若新雄純氏が手がけたゆるいコミュニケーションを基本として設立された「鯖江市役所JK課」と「NEET株式会社」は今までとは違った社会へと変化をもたらす“新しい答え”を生みつづけている。

 若新雄純氏が手がけた鯖江市役所JK課は、今までの堅いお役所的な考え方をやめ「プロい市民」である現役女子高生たちの声をダイレクトに取り入れたところ、大きなイノベーションが生まれた。現役の女子高生が市役所の仕事を手伝うという真新しさによって、メディアの注目を集めただけでなく、彼女たちが常日頃から抱えていた悩みのおかげで、公共サービスがより向上した。

 ネットでは鯖江市役所JK課に対して、さまざまな憶測や誹謗中傷の声があげられていたが蓋を開けてみれば、そのすべてが間違いであり、今までにない創造的なまちづくりが行われる結果になったのだ。また一部ネット上で悪いうわさが流れたNEET株式会社だったが、こちらも倒産することなく、ゆるやかにではあるものも試行錯誤を繰り返し、取締役ニートたちは、自分たちが住みやすい社会を築こうと努力している。

 こういった若新雄純氏の活動が、一定の成果を上げているのは、今までのように型にはまらない、ゆるいコミュニケーションを大切にしているからだ。

 「ゆるいコミュニケーション」と聞くと、とても楽そうで、平和で自由奔放なイメージが思い浮かんでしまいがちだが、実際はゆるいコミュニケーションは、型にはまったお約束事で出来たコミュニケーションよりも、激しい討論を必要とする。なぜなら、ゆるいコミュニケーションは立場に上も下もないからだ。

 年齢や肩書は役にたたない関係の中で、お互いが持っているさまざまな違いを理解するのは簡単なことではない。そのためには、従来のような「上に従え」的コミュニケーションではなく、人間同士の生のぶつかり合いが必要不可欠で、互いが納得する答えを出すことが必要となってくる。時には怒ったり、笑ったりしながら感情を共有し、認め合っていかなければならない。

 原始の人類がやっていたような、生の人間同士のぶつかり合いこそが、ゆるいコミュニケーションの、本当の姿なのだ。そして、その戦いの果てに「いい加減」なゆるさとは違う、相手のことを思いやり、その場を楽しみ、だけど形にはこだわらない「創造的脱力」が生まれる。

 すでに決まりきった固いコミュニケーションに比べると、無駄が多いコミュニケーションに思えるが、その無駄があるからこそ、誰もが想像できなかった新しい答えを生みだすことが出来るのだ。

 膠着した社会システムが破綻しつつある日本を救う新しい答えを出すのは、もしかしたらお互いの立場を超えて、生の人間と人間とがぶつかり合う、ゆるいコミュニケーションなのかも知れない。

文=山本 浩輔

『創造的脱力 かたい社会に変化をつくる、ゆるいコミュニケーション論』(若新雄純/光文社)