
〈かつて高市首相は「女性天皇に反対しない」と明言していた…ノンフィクション作家が見た“彼女の驚くべき変節ぶり”〉から続く
現在、皇位継承権を持つのは、秋篠宮さま(60)、悠仁さま(19)、常陸宮さま(90)の3人のみ。皇位継承問題は“待ったなし”だ。衆参両院の全党派の「安定的な皇位継承に関する全体会議」で議論がなされているが、象徴天皇制が専門の、名古屋大学大学院の河西秀哉教授(48)の指摘は明快だ。
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「直系長子が皇位を継承」が最善策だ象徴天皇制を安定的に維持するためには、性別を問わず、「直系長子が皇位を継承」というルールにするのが、最もシンプルかつ最善の策だと考えます。
ですから、私は愛子天皇誕生にも賛成です。女性・女系天皇を認めてもよいと言うと、ネット上では「反天皇制主義者だ」などと叩かれますが、男系男子皇位継承論に捉われて皇統の危機を放置する方が問題です。
歴史を紐解けば、女性天皇は、10代8人存在しました。現在の皇室典範では、第1条で「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と記されていますが、これは明治政府が定めた皇室典範を踏襲したもの。つまり、比較的近代に作られた決まりなのです。
ただ、明治時代には側室制度が存在し、側室の子にも皇位継承資格がありました。それゆえ、男系男子に限るとする論理が成り立ったわけです。大正以降は一夫一妻制が確立され、側室は昭和に廃止。1947年、戦後初の皇室会議で11宮家51人の皇籍離脱が決定し、皇室はスリム化に大きく舵を切りました。
環境が大幅に変わっているのに、男系男子にこだわり続ければ、皇統が先細りになる未来は、この時から、すでに目に見えていたといえます。
議論に民意が一切反映されていない現状現在、皇族数の確保に向けて、2021年の有識者会議の報告書をもとに、皇室典範改正案が議論されています。その柱の1つが、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する案。夫と子は皇族の身分にならず、子の皇位継承資格も認めないというものです。もう1つは、先ほどの皇籍離脱した旧宮家の男系男子子孫を養子として皇族に復帰させる案。皇位継承資格はないが、養子入り後に生まれた男子は資格を有する。
2月の衆院選で戦後最多の316議席を獲得した自民党は、これらを後押しする立場です。連立を組む日本維新の会も同様です。
この流れで改正法案が通れば、愛子天皇誕生の可能性は完全に閉ざされます。そもそも、将来的な女性・女系天皇を模索する提案は、この議題に入っていない。
近年の世論調査では、女性天皇に賛成の意見が6割から9割台と多数を占めています。つまり、この民意は今回の議論に一切反映されていないのです。政府や自民党は「静謐な環境で議論を」と言っていますが、単に、一部の保守派の岩盤支持層のために、大多数の国民の声を無視したいというのが本音でしょう。天皇即位を期待される愛子さま人気と、政界で行われている議論が、かなり乖離しているのが現実です。
「女系の継承は一度もない」と言うけれど…仮に愛子さまが即位すると、過去にも存在した「男系の女性天皇」になります。さらに子が即位すれば、男女どちらであれ、女系天皇になる。保守派は、男系で紡がれてきた皇統を守りたいと考えており、女系への移行を容認していません。その余地をなくすために、女性天皇さえ認めないのが現在の議論の枠組みです。
高市早苗首相は、2月の国会答弁で「皇位が女系で継承されたことは一度もない」と強調しました。確かに、純粋な女系天皇はいませんが、改正案に上がっている旧宮家の子孫の養子復帰案も、実は「過去に一度もない」ことです。
歴史上、天皇に男子がおらず、遠縁の皇族が養子となり、皇位を引き継いだケースはありました。現在の天皇家に繋がる光格天皇(1780年即位)です。
しかし、一度皇籍を離れた家系で、離れた当人ではなく、親が天皇にならずして、数代先の民間人を皇族へ復帰させた前例は、存在しません。つまり、女系天皇の誕生も、旧宮家の子孫の復帰も、どちらが実現しても“史上初”なのです。
さらに、旧宮家の11家は、男系で辿ると、現在の皇室から20数代、室町時代まで遡らなければならない。血縁は女系を辿る方が男系より遥かに近いです。
将来的な女系天皇を認めるか、旧宮家の子孫を皇族に復帰させるか――どちらかの史上初を選べというのなら、私は女系容認でいいだろうと考えます。
また、旧宮家の子孫を養子とする制度を整えたとして、皇族になりたいと考える当事者が、どれだけいるのでしょうか。祖父、曾祖父の代が約80年も前に皇籍を離れ、ご自身は民間人として生きてきたのに、生活は一変します。そのうえ、結婚して子供ができたら、自分が天皇の父になる可能性も出てくるのです。
思い返せば、小泉政権時代の2005年、当時の有識者会議が女性・女系天皇の容認を柱とする報告書をまとめ、翌年の国会に皇室典範改正案が提出される見通しとなっていました。想定されていたのが、愛子天皇の誕生です。
その後、紀子さまが懐妊され、06年9月、皇室で41年ぶりの男子、悠仁さまをご出産されました。そこで女性・女系天皇の議論は立ち消えになったのですが、先送りせず、並行して検討を続けておくべきでした。
愛子さまが国民に慕われ、愛される背景一方で、現在、公務に励まれる愛子さまは、ご自身に求められている役割を理解し、ますます皇族としての自覚を深められているように見えます。ここまで支持を集めるのは、国民が天皇家の“物語”を知っていることも大きい。雅子さまの体調問題もありましたが、天皇陛下はそれを庇ってこられた。愛子さまの不登校などが話題になったこともあります。苦労を重ねた時期をご家族で乗り越え、愛子さまはかくもご立派に成長された。国民に慕われ、愛される背景があります。
愛子さまは、次世代の天皇に相応しい資質をお持ちだと思います。その道を切り拓くには、高市首相や自民党が無視することができないレベルにまで、愛子天皇を期待する国民の声が高まっていくしかありません。
「週刊文春 電子版」では、旧宮家の生活実態や本人たちを連続直撃した【「愛子天皇」大論争に新展開】旧宮家・男系男子の衝撃告白「女系天皇でいい」など続報を配信中。女性・女系天皇の賛否についての25000人アンケートの結果や「愛子天皇」をなぜ高市首相は拒絶するのか《宮内庁長官を直撃》など「愛子天皇」論争について詳しく報じている。
(河西 秀哉/週刊文春 2026年5月7日・14日号)



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