厚生労働省が公表した人口動態統計(概数)によると、2025年の出生数は67万1,236人でした。これは2024年比2.2%減の数字であり、出生数は10年連続で過去最少を更新しています。少子高齢化に歯止めが利かない日本において、未来を担う子どもたちが健やかに成長できる環境を、社会全体で整えることが望ましいはずです。しかしなかには、自分の孫でさえ「全然可愛くない」と嘆く人も……。いったいなぜなのか、みていきましょう。

大きな声では言えません。でも…

「ウチの孫、全然可愛くないんです。本当に」

そう告白するのは、43歳の娘と小学2年生の孫(男の子)をもつトモコさん(仮名/69歳)です。

トモコさんは十数年前に夫を病気で亡くし、現在は遺族年金と自身の国民年金(月約12万円)を受給しながら一人で暮らしています。

世間では、孫に対してお金や時間を費やすシニア世代の姿が微笑ましく取り上げられることも少なくありません。しかし、トモコさんにとって、隣県に住む娘と孫の存在は、今やストレスの種でしかないといいます。

トモコさんが世の中の“孫信仰”を真っ向から否定したくなる背景にはなにがあったのでしょうか。

孫が可愛くないのは娘夫婦のせい?

「孫がとにかくわがままで……。娘夫婦の教育方針なのか、孫のことを絶対に叱らないんですよ」

娘いわく、子どもの感受性を育むために「叱らない育児」を実践しているとのこと。しかしトモコさんの目には、それが単なる「しつけの放棄」にしか見えません。

たとえば実家にやってきても、土足のままソファに飛び乗る、大声で奇声をあげる、トモコさんが大切にしている置物を乱暴に扱う。それを見かねたトモコさんが「こら、危ないでしょ」と注意しても、娘は「お母さん、怒らないでよ」と言いながら、スマホをいじって放置するばかりだといいます。

孫のわがままはさらにエスカレート

帰省のたび「おばあちゃん、おこづかい!」とせびる孫に、トモコさんはいつも5,000円を渡していたそうです。月12万円の年金暮らしにとって、5,000円は決して軽い出費ではありません。それでも、少しでも喜んでくれるならと無理をして捻出していたそうです。

しかし、前回の帰省時はちょうど年金支給日の直前だったこともあり、トモコさんの手元にはあまり余裕がありませんでした。そこで申し訳ないと思いながらも、「今日はこれで我慢してね」と、ポチ袋に1,000円札を入れて孫に手渡したそうです。

1,000円を受け取った孫のリアクション

すると、すぐに袋を開けて中身を確認した孫は、信じられない言葉を吐き捨てました。

「うわ! ばあちゃん、ケチくせー!」

お礼どころか、悪態をつく孫。トモコさんはあまりのショックに、目の前が真っ暗になったといいます。

さらに絶望したのが、その様子を見ていた親であるはずの娘の反応でした。注意するどころか、「あはは、今どきの子は1,000円じゃ満足しないよね。お母さん、次はもっと奮発してあげてよ」と、一緒になって笑っていたのです。

「その瞬間、なんか『もういいや』って。万が一のとき娘たちに迷惑かけたくないから、夫が遺してくれた貯金の1,000万円には手をつけず、質素に暮らしていました。でも、こんな娘と孫のために、なんで私が我慢しなきゃいけないんだろうって感じて、ばかばかしくなりました。いまはもう無理に我慢せず、自分のために貯金を切り崩しながら美味しいものを食べたり、旅行に行ったりして楽しんでいます」

家族のために自分を犠牲にしてきたトモコさんですが、現在は娘家族と適度な距離を置いているそうです。

高齢・単身無職世帯のリアルな生活費

そもそも、トモコさんのようなシニアの単身世帯の生活は、決して甘いものではありません。

総務省が公表した令和6年の家計調査報告(家計収支編)によると、65歳以上の単身無職世帯の1ヵ月の消費支出は14万9,286円でした。トモコさんの年金収入は月12万円ですから、平均的な生活を送ろうとすると毎月3万円近い赤字が発生する計算です。

さらに、厚生労働省の「簡易生命表(令和6年)」によると、日本人女性の平均寿命は87.13歳と、69歳のトモコさんには、まだ20年近くの老後生活が残されている可能性があります。

こうしたなか、病気や要介護状態になったときの医療・介護費用を考慮すると、夫の遺産1,000万円は決して「余裕のある金額」とは言えません。

にもかかわらず、子や孫から金銭援助を「当然の義務」のように求められ、応じなければ悪態をつかれる状況……トモコさんが「孫が可愛くない」と感じるのも無理はないでしょう。

「血のつながり」は大切。しかし…

世間が思い描く“おばあちゃん像”のイメージに振り回され、自分を擦り減らしては元も子もありません。

「親しき中にも礼儀あり」という言葉があるように、血のつながった家族であっても、敬意や感謝を忘れた相手であれば、毅然とした態度で「NO」を突きつけることが、自身の老後を守る最大の防衛策となります。

特に、親の親切を当たり前と思い込み、依存してくる子ども世代に対しては、早い段階で「これ以上のお金は出せない」とはっきり境界線を引くことが重要です。

トモコさんは現在、娘からの「今週末遊びに行っていい?」という連絡を「予定があるから」と断る強さを持てるようになったといいます。

「最初は寂しさや罪悪感もありましたが、今は自分の人生を生きている実感があります。孫を可愛いと思えない自分を責めるのはやめました」

世間のイメージやプライドに振り回され、限られたお金と時間を身勝手な親族に貢ぐ……ではなく、自分の心と身体の健康のために使う。それこそが、幸せな老後につながるのかもしれません。

(※画像はイメージです/PIXTA)