
ブロンコビリーの創業家一族が、6月3日にパートやアルバイトを含む従業員の一部を対象に一律100株を贈与した。会社の発展のために尽力してきたことに対する感謝の気持ちを示すもので、更なる企業価値向上への意欲を高めることが目的。インセンティブ制度の一環だ。
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ブロンコビリーの株価は4000円台で推移しており、100株で贈与された従業員は無条件で40万円程度のボーナスを手にしたことになる。
「スシロー」を運営するFOOD&LIFE COMPANIESが従業員に対して新株予約権を付与した例はあるが、外食企業が従業員の士気を高めるために創業家の持株を贈与するケースは珍しい。新株予約権は期間や株価など満たすべき条件を課していることが大半だ。無条件での贈与とは性質が異なる。
持株の一部を贈与した背景には、外食産業の構造的な変化がありそうだ。
デフレ下における飲食店は、高品質な料理やサービスを低価格で提供することが当たり前だった。それが飲食店で働く人たちの劣悪な労働条件につながっていたわけだ。大手居酒屋チェーンや牛丼チェーンがブラック企業大賞などという不名誉な賞を与えられていたのは、デフレ期の真っただ中だった。
一方で就職難でもあったため、企業側は採用において優位な立場にいられる時代でもあった。
しかし、2022年ごろから急速なインフレが進行。飲食店は原材料の高騰もあって軒並み値上げを断行したが、客離れを起こさないクオリティーを維持する必要が出てきた。レジや配膳はある程度の自動化が可能だ。しかし、提供する料理の質や接客など、顧客満足度向上につながる最終的な部分は人材力がものを言う。
そして、足元では人材不足が深刻化した。東京商工リサーチによると、2026年1月から5月の飲食店の人手不足倒産は28件で、前年同期間の2倍に急増している。
飲食店は従業員の獲得と維持に力を注いでいるのだ。ブロンコビリーのインセンティブもこの文脈で説明がつきそうだ。
ブラック企業大賞は2019年度の開催が最後となったが、時代が変わったことを象徴しているかのようだ。
外国人労働者の受け入れ原則停止で人材獲得合戦激化の様相も
ブロンコビリーは経営のかじ取りを巧みに行っている会社だ。出店ペースは抑えつつも、確実に全国にネットワークを広げている。足元で力を入れているのが九州エリアで、2026年2月に福岡県に6店舗目を出店した。九州エリアへの初出店は2022年9月だった。じわじわと店舗数を増やしているのだ。
2026年1月から3月までの客数は前年同期間比で0.5%増加している。客単価が6.2%上がっているにもかかわらずだ。飲食店は客数を犠牲にしてでも単価を上げて売上アップを図るケースが少なくないが、数字のバランスを巧みにとっている印象がある。
ブロンコビリーには、サラダの食べ放題や店内仕込みのデザートなどのキラーコンテンツがある。このような集客の要となり得るサービスの提供品質を維持するためにも、従業員のモチベーションアップが欠かせない。しかもブロンコビリーはステーキ・ハンバーグ業態のため、鉄板の洗浄に時間と手間がかかるのだ。サラダの補充や食器の洗浄など、店舗マネジメントも含め、通常のファミリーレストランと比べてスタッフの負担が大きい。
人材獲得に関する飲食店の逆風は続いている。政府は外国人の「特定技能1号」において、外食産業での新たな受け入れを4月13日から原則的に停止したのだ。チェーン展開する飲食企業にとって打撃は大きい。
大手企業を中心に人材獲得合戦が熱を帯びそうだ。ブロンコビリーは創業家の保有する株式の従業員への贈与を今後も継続すると発表している。貯蓄から投資へと政府が呼びかけていることもあり、時代の流れに合致したインセンティブ制度だと言えるだろう。
文/不破聡 内外タイムス



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