
高市早苗首相の秘書が関与したと報じられている、総裁選での対立候補への誹謗(ひぼう)中傷動画の投稿問題。当初、高市首相は「私自身も秘書も面識がない」と、疑惑を真っ向から否定していた。
だがその後、動画作成を証言した松井健氏と秘書のものとされるオンライン会議の音声を文春オンラインが報道。7日には共同通信が、松井氏が実名で行った「高市氏陣営から相談され、対立候補に批判的な動画を作り、SNSで大量発信した」との旨の証言を掲載。
すると高市首相は「面識がない」という言葉の意味合いについて「実際にお会いして名刺交換して、相手の所属や氏名をちゃんと承知していることはない」と、オンライン会議が一般的になっている昨今ではやや苦しい説明を展開。そして10日には「(秘書が)昨年、信頼できる方から紹介を受けた企業とのオンライン会議に参加した」と答弁。当初の強気な姿勢から、答弁が変遷しつつある。
そこには、かつて放送法の政治的公平性をめぐる内部文書についてねつ造と断じ、仮にねつ造でなかったら議員辞職するか問われ「結構だ」と言い切ったときのような勢いはない。
永田町でもこの問題に関して「警察庁が動き、今後の報道の行方や政権に与える影響などの分析を進めている」「松井氏が他の大手メディアのインタビューも受ける」などと書かれた怪文書も飛び交う。問題への関心がここ1週間ほどで急速に高まり、潮目が変わりつつある状況だ。
「総裁選での誹謗中傷という、ほかの陣営は反発したくなる話だし、こういうときに高市首相の仲間は少なく、支えようというムードが希薄になってしまう。『飯会苦手な女』として、総裁選で自身を支えたメンバーへのねぎらいすら十分に行わなかったツケがくるのでは……」(自民関係者)
「野党は批判ばかり」の批判を恐れる中道
また、今後の問題の行方は高市首相自身の答弁に左右されるとの見方も。
「『(文春の)有料オンライン会員になろうとは思わない』など、答弁が行き当たりばったりで、『逆切れ』の印象も強く、一言が致命傷になる可能性がある。6月中には予算委員会の集中審議にも出席するので、自滅してしまわないか心配だ」(同)
ただ、この問題の真相解明に向け追及する方針の中道・立憲・公明など野党の勢いが十分かというと微妙だ。
立憲は高市氏の秘書の参考人招致を要求し、共産も関係者の証人喚問を検討すべきだと指摘するなど強気の姿勢だが、中道内には「この問題に対する世論があまり高まっていない。それよりも有権者は物価高対策への関心のほうが高い。動画問題にあまり力を入れすぎると、また『野党は批判ばかり』と言われる。森友・加計問題や桜を見る会問題の追及を熱心にしていた立憲議員が2021年の衆院選で何人も敗れたことを思い出したほうがいい」(中道落選者)との声もある。
通常国会の会期は来月17日までで、あと1カ月以上ある。閉会時には、首相自ら通常の短時間の「ぶら下がり取材」ではなく、マスコミ各社からの質問を受ける記者会見も開かれるのが通例だ。松井氏が新たな証言をするかも含めた今後の展開が、高市政権や中道などの野党双方の今後を左右しそうだ。
文/中村まほ 内外タイムス



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