2015年現在、日本にはおよそ160万人の“ひきこもり”が存在するそうです。人口の1%以上がひきこもりとなった今、兄弟親戚同級生はおろか、貴方自身がひきこもりになってしまうかもしれません。そのような悲劇を避ける為にも、是非参考にしてほしい作品の主人公、それがこの『N・H・Kにようこそ!』の「佐藤達広」です。ちなみに“NHK”は“日本ひきこもり協会”の略称です。

 大学中退後、両親からの仕送りをあてに家にひきこもるニート生活を続け、日々を自慰と(合法)ドラッグに費やす主人公「佐藤くん」。そんな彼を立ち直らせようと奮闘するヒロイン「岬ちゃん」と高校時代の後輩「山崎くん」を中心に、“ひきこもりからの脱却”をテーマに、その過程での葛藤やもどかしさが描かれます。


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佐藤達広とは?(N.H.Kにようこそ!)
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【※一部、ネタバレの内容を含む可能性が御座います。ご注意下さい。】


■圧倒的ダメ人間

 今回スポットを当てる本作の主人公「佐藤くん」こと「佐藤達広」。長身で顔もそこそこなのに、前述の通りの残念さ・・・。加えて、対人恐怖症気味で幻覚や幻聴、さらに虚言癖が目立つなど、もはや痛々しくて見ていられなくなるほどです。作者である滝本竜彦氏の実体験をベースに書かれている為、“ひきこもりの現実”が巧みに表現されており、現役ヒッキーやニートの方々にとっては、まるで自分を見ているかのように感じるかもしれません。

■ダメだからこそ素晴らしい

 ここまで人としてダメな要素ばかり挙げていますが、それこそが彼の魅力なのです。そもそも彼の行動原理の大半は“怖いから逃げる”、ただそれだけ。他人を怖がるのも、現実に絶望して薬でトリップするのも、全ては自分が大事だから。昨今の量産型ハイスペック系主人公とは相反する存在、アンチヒーロー的なポジションとも言えるでしょう。過剰なまでの自己愛から転じて自己嫌悪に陥り、迫り来る現実から逃亡を繰り返すその姿は、どんな作品の主人公よりも愚かで滑稽で不健全。しかし、だからこそ人間臭くて魅力的なのです。

■ダメの振り見て我がダメ直せ

 嫌な事から逃げ、責任は転嫁し、他人は拒絶・・・と、どこまでもダメ人間の「佐藤達広」。物語終盤までは全くといっていいほど成長を見せないそのダメっぷりは、見ていて胸糞が悪くなるほど(笑)。マトモな人であれば見るに耐えず、最後まで視聴出来ないかもしれません。しかし、彼の姿を見てそう感じるのは、誰もが佐藤くんになる可能性を秘めているからではないでしょうか?

 “厳しい現実に直面しても逃げも隠れもせず立ち向かう!何があっても逃げない!”など、実際に実行出来る人は少ないでしょう。皆、現実も他人も責任を負うのも怖いのです。ひきこもりやニートにとっては現状からの脱却を示唆し、正反対に位置する社会人や学生にとってはこれ以上ないほどの悪例となる佐藤くん。彼は視聴者に対して、自らを省みる機会を与える稀有な存在なのです。みなさんも今一度、「佐藤達広」と自分を照らし合わせてみてはいかがでしょうか。


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★記者:ふらいむらき(キャラペディア公式ライター【バンタンゲームアカデミー ゲームライター専攻】)

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