
赤切符なら罰金と前科だが青切符なら反則金で済む
多くの人が、2026年の4月1日から自転車の交通違反での手続きが大きく変わったことは知っているだろう。”青切符”の導入だ。青切符制度は「交通反則通告制度」と呼ばれ、自動車の交通違反の際に行われており、スピード違反や一時不停止などで検挙された際、警察官から切符を渡された経験がある人もいるかもしれない。
いままでは自転車に乗っていて交通違反で検挙されると、いわゆる”赤切符”などを用いた刑事手続きによる処理が行われ、警察による捜査を経て検察官が起訴か不起訴かを判断、起訴になれば裁判を受けることになっていた。そこで有罪になれば罰金が課されるうえ、”前科”が付くことに。「まさかチャリンコで!?」と驚くかもしれないが本当の話だ。
ところが、こうした刑事手続きによる処理は、自動車での青切符の違反処置と比べると、時間的/手続き的な負担(取り締まり時の書類作成や取り調べのための出頭など)が大きいうえ、検察に送致されても不起訴となるケースが多く、実態として違反者に対する責任追求が不十分であることが指摘されていた。
かくして自転車側の法令違反が原因と認められる交通事故は相変わらず頻発。警察の取り締まりによる検挙件数は増加傾向にあるものの、事故件数はなかなか減らないのが実情だ。
約42%が歩道で起きている自転車と歩行者との事故
それはそうだろう。免許不要で、誰でも乗れるのが自転車のよさ。気軽な移動用ツールであって、”車両”という認識はほぼ皆無。交通ルールを十分に理解していない子どもも自由にペダルを漕ぐことができる。
「交通ルールなんか知ったこっちゃない」と、縦横無尽に走りまわる自転車を目にすることは珍しくない。この自転車の勝手気ままな振る舞いに急ブレーキを踏まされたり、ぶつかりそうになってキモを冷やしたことがあるドライバーも多いはずだ。
もっとも危険な場所は歩道だったりする。いまなお、歩行者がいるにもかかわらず、猛スピードで縫うように走る自転車を見かけことがあるが、実際、自転車と歩行者の事故のうち歩行者が死亡または重傷に至った事故の衝突地点は歩道が最多。全体の事故発生地点でいうと、じつに42.4%にものぼっているのだ。
そこで、16歳以上の者による自転車の一定の交通違反に対して導入されたのが前述した青切符制度というわけだ。自転車も軽車両であり、交通ルールを守る必要があることを自覚してもらうことがそもそもの目的だが、自動車同様、手続き的な負担を軽減すると同時に、違反者に前科が付くことをなくしながら、実効力のある責任追求が可能になるという点で、今後の事故抑止効果に期待が寄せられている。
“ながらスマホ”に鉄槌! 1万2000円の反則金
今回、青切符交付の対象となる自転車の違反行為はじつに113にもおよぶ。事故原因として顕著で、我々ドライバーが、日頃「いい加減にしろ!」と憤りを感じている行為はすべて含まれていると考えていいだろう。
反則金もその悪質度に応じて幅があり、トップに位置するのが、いわゆる”ながらスマホ”だ。依然問題になっていても反則金などは徴収されない歩きスマホと違い、自転車は軽車両。スマホ片手に周囲に視線を向けることなくフラフラ走っていれば、とっさの危険回避はもちろん、歩行者やほかの自転車に衝突して死傷させる可能性も否定できない危険な行為。自動車の場合(1万8000円)とそれほど変わらない1万2000円の反則金も当然か?
以下、グッと額は下がるものの、これも対クルマでは重大事故になりかねない”信号無視”や”通行区分違反=右側通行”が6000円、”一時不停止”および”通行禁止”が5000円、そして、2台以上で並んだ状態で走る”並走禁止違反”で3000円などが主なところ。
ちなみに、青切符でも反則金を納めずに放置していると、刑事手続きに移行し、場合によっては前科が付く可能性があるという。青切符を受け取ったら速やかに反則金を納めるのが賢明のようだ。
懲りない人に命ぜられる自転車運転講習の受講
なかには「クルマの違反と比べればたいした反則金じゃない」とタカをくくっている人もいるかもしれないが、大きな誤り。「自転車運転者講習制度」がある。
これは危険な違反を繰り返した自転車運転者に対して安全運転の大切さについての”気づき”を促し、再び危険な違反をしないようにするために導入された制度。具体的には14歳以上の者が、16種別(通行区分違反、通行禁止違反、信号無視など)の交通違反で3年以内に2回以上反復して検挙され、または交通事故を起こしたとき、公安委員会によって「自転車運転者講習」の受講が命じられるというもの。当然、受講料は有料だ。
それでもなお、「クルマじゃないから免許証に違反点数が付くわけじゃないし……」と嘯(うそぶく)く人がいるかもしれない。が、じつは、こうした考え方もヤバいのだ。
公安委員会が、「自動車などを運転することが著しく道路における危険を生じさせるおそれがある」と認めるときは、運転免許保持者に対して、6カ月を超えない範囲内で期間を定めて運転免許の停止処分が行われるというのだ。
自転車の刑事処罰の対象となる赤切符交付のケースに限られるとはいえ、運転免許を所持している人が、自転車でひき逃げ事故や死亡事故などの重大事故を起こした場合や、酒酔い/酒気帯び運転をはじめとしたとくに悪質・危険な違反を犯した場合に、運転免許の効力が停止されることがあるという。
実際、令和6年11月には、自転車の酒気帯び運転で検挙された40〜50歳代の男性3名に対し、自動車などを運転することが道路における危険を生じさせるおそれがあるとして、6カ月以内で運転免許を停止する処分が下された。
今回の自転車の青切符制度は、ドライバーにとって自転車との事故リスクの低減が期待される一方、自転車にも乗ることがあるドライバーには、運転免許証を失いかねない制度であることも覚えておく必要がある。
クルマより青切符が怖い? 狭い道もひたすら車道
2026年4月の自転車の交通反則通告制度(青切符)が始まって以降、街なか、とくに片側1車線の道路で走りにくさを覚えている人が多いだろう。理由は簡単だ。いままで歩道(あるいは路側帯)を当たり前のように走っていた自転車が、青切符を恐れて、いっせいに”原則車道左側通行”を遵守しだしたからにほかならない。
道幅が狭い道路にもかかわらず、頑なに路側帯の白線から車道にハミ出して走る自転車が急増。自転車を追い越すに追い越せずイライラを募らせているクルマを頻繁に見かけるようになり、筆者自身も同様の状況に何度か出くわすようになった。
自転車を運転している人が、『歩道のない道路で白線だけの路側帯がある場合、道路左側部分の路側帯に限って、歩行者を妨げない速度と方法で通行可能』というルールを理解していないために起こっている、由々しき問題だ。”自転車は車道左側通行”だけがひとり歩きした結果、クルマと自転車の接触/衝突のリスクは以前より格段に増したと言っていいかもしれない。
先の、自転車と歩行者の事故のうち歩行者が死亡または重傷に至った事故の衝突地点は歩道(路側帯も含む)が最多という状況を鑑みれば、致し方ない部分もあるのかもしれない。しかしそれでも、自分の身を危険にさらしてまで車道を走る必要がどこにあるのか。
自転車を運転する側も交通ルールを理解することが必須とは言え、警察も原則車道左側通行を啓蒙するばかり。例外を含めた自転車の正しい走り方の周知徹底がなされていないのはどうなのか?
抜くに抜けない自転車は忍の一字で堪えるべし!
自転車は停止している状態では自立できないきわめて不安定な乗り物だ。さらに路面のワダチや凸凹などにハンドルを取られて進路を乱すこともあれば、女性やお年寄りなど脚力の弱い人は思うようにペダルを踏み込めず、場所によっては前に進む力を落として安定性を欠くこともある。さらに、注意力散漫の子どもがペダルを漕ぐ自転車は、予想もしない方向にいきなり進路を変えかもしれないもっとも注意すべき存在だ。
件の青切符制度を含め、いまさらルールが変わるはずもなく、クルマと自転車の横方向の間隔の問題はきっとこれからも続くに違いない。だとしたら、我々ドライバーが自転車を避けるしかない。
自分のクルマと横方向の間隔が十分に取れない状況で追い抜くことは絶対に避けるべき。抜けない状況であれば、無理せず待つことだ。ジレてもしかたない。幅員が広くなった地点で抜き去ればいい。道交法では、原則として白の破線のセンターライン以外(白や黄色の実線)は、対向車線にはみ出しての追い越しが認められられていないのはご存知だろう。
メリットがあればデメリットもある。今回の青切符制度の導入は、自転車に対する「車道左側通行」の啓蒙という点で、ドライバーにとってまた悩ましい問題がひとつ生まれたということだ。
※本記事は雑誌「CARトップ2026年7月号」の記事を再構成して掲載しています


































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