
◆セクシー画像で標的を絞り込む
そもそも、AI美女を使った詐欺グループは、どのような基準でターゲットとなる男性を選んでいるのだろうか。AI活用アカウントの分析や、成人向けAI漫画を手がけるクリエイターのmomo氏(@uraakamkun)は、「セクシー画像を投稿するSNSアカウントが、詐欺へ誘い込む最初の入口になっている」と指摘する。
「素人を装ってセクシーな画像や動画を投稿しているアカウントの中には、DMへ誘導し、より露骨な性的画像や動画を提供したり販売したりするケースがあります。そこで反応を見ながら見込み客を選別し、『この人ならいける』と判断した相手に本格的なアプローチを仕掛けていくのがひとつのパターンになっています」
◆熟女系アカウントが誘う巧妙な罠
momo氏によれば、とりわけ注意が必要なのが、素人らしさを演出した〝熟女系アカウント〟だという。こうしたアカウントほど、詐欺行為へ発展する可能性が高いと、こう警鐘を鳴らす。
「熟女系アカウントには、同世代の中高年男性が集まりやすい傾向があります。その世代は生成AIに関する知識やリテラシーが十分ではない場合が多いので、若い世代なら『これは不自然だ』と気づくような画像でも、本物の女性だと思い込み、そのまま深みにはまってしまう。だからこそ、こうしたアカウントと交流する際には、相手が実在する人物なのかを慎重に見極める力が必要なんです」
では実際、詐欺グループはどのような手口で男性の心に入り込むのだろうか。
◆定年後の孤独につけこまれてしまった
関東地方に暮らす、石原一輝さん(仮名・60代)は、定年退職直前に離婚してしまい、寂しい生活を送る中で、SNSに新しい出会いを求め、マッチングアプリなども利用するようになったという。
「驚いたのは、世の中にはこんなに詐欺師というか、人を騙そうっていう連中が多いことでした。私は年金暮らしですから、年収は200万円に届かない程度で、見た目も平凡。そんなプロフィールを正直に書いているのに、年収1500万円の美容師を名乗る美女から『お友達になりたいです』なんていうお誘いがDMなどで来る。もちろん、業者だとはわかっていたんですが、好奇心があるからやりとりして遊んだりね。だから、絶対に自分だけは騙されないと思っていたんです」
石原さんは、語学が堪能であったことから外国人女性との出会いを探していた。そうした中で、SNS上で50代の欧米女性と知り合った。やがて、DMでも親密にやり取りをするようになり、一時は結婚まで真剣に考えていたという。
「別にお金を要求してくるわけでもないし、こちらのメールアドレスや電話番号のような個人情報を教えてほしいとも言わない。でも、気になったのは、お互いの写真を送り合う時に、なんか妙にセクシーなやつばっかりを送ってくる。しかも、部屋の中とかじゃなくて、大草原とか大きな滝が背景とか、そういうのばっかり。いくら海外といっても、そんな頻繁に自然がある場所には行けないでしょう?」
◆画像検索で正体を見破る
石原さんは違和感を覚え、送られてきた画像を画像検索や海外サイトで調べてみた。すると、同じような構図や人物画像が複数見つかり、AIで生成・加工された画像である可能性が高いことがわかったという。
「海外のサイトに、いろいろな性的趣向を持つ男女が集まるコミュニティがあったんです。その掲示板には、滝の前で男女が抱き合っているような写真がたくさん載っていて、『この画像をAIで加工して使っているのかな』と思いました。おそらく、日本人を勧誘するためにDMしてくれたんでしょうね……」
この時は画像の不自然さに気づき、深刻な被害には至らなかった。しかし、その経験がかえって、「自分は詐欺を見抜ける」という過信につながってしまったと話す。
◆クレジットカード番号が詐欺サイトに…
「その後、大手の婚活アプリで、若い女性とマッチしました。飛び抜けた美人ではなくて、プロフィールも年収200万円ほど。ごく普通の女性に見えました。詐欺に使われる写真は、いかにも加工した美女ばかりだと思っていたので、逆に『この人は本物かもしれない』と信用してしまったんです」
女性は「付き合いたい」「魅力的だ」と好意を寄せ、やがてメールで直接やり取りしたいと持ちかけてきた。石原さんも次第に夢中になり、実際に会った後のことまで想像するようになったという。
ところが、しばらくすると女性宛てのメールが突然届かなくなった。数日後、別のアドレスから連絡があり、「利用していたメールサービスが、運営会社の倒産で使えなくなった」と説明された。
「別の出会い系サイトに移ったので、そっちに登録してほしいって。今思えば、おかしいんですよ。でも、連絡が途絶えて、本気で心配していた。再び連絡が来た安心感もあって、疑う気持ちは消えていました。すぐに連絡を取りたい一心で、指定されたサイトを開いて、クレジットカード番号などを入力した直後、パソコンの内蔵カメラが勝手に作動し始めたんです。その瞬間、詐欺だと気付きました……」
慌てて、退会しようとしてもできない。サイト名を検索すると、「詐欺サイトなので注意」という情報が次々と出てくる。石原さんはすぐにカード会社や警察へ連絡し、カードを停止。サイト側にも、悪用できない措置を取ったと警告するメールを送った。
「無我夢中で、半分泣きながらやりましたよ。カードは破棄して、契約そのものも解約しました。幸い金銭的な被害はありませんでしたが、個人情報を知られたことが今でも怖い。それに、あの時、撮影された映像も何に使われるのか、不安で仕方がないです」
◆安心感を誘う素人らしさの正体
石原さんは、「あの女性は、AIで巧妙に作られた人物だったはずです」と、その理由をこう語る。
「詐欺をする側が、自分や仲間の本当の顔をさらすとは思えない。おそらく、写真もプロフィールも、こちらを信用させるために作られたものだったのでしょう。正直言えば、絶世の美女ではなかったから、『僕も相手をしてもらえる』と思ってしまった。それが、甘かったんですよね……」
「普通だからこそ信じてしまう」。AI女性を悪用した詐欺は、人間の恋愛感情や安心感を巧みに利用しながら、今も静かに被害者を増やしているのかもしれない。
<取材・文/橋本未来>
【橋本未来】
主に関西圏で広告関係やマガジン系の仕事をしながら、映像の企画・構成なども手掛ける。芸人さんやちょっと変わった経営者さんなどの話を聞くのがライフワーク Twitter:@h_mirai1987

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