
子どもや孫の帰省を楽しみにしている人は多いでしょう。一方、数日間の宿泊となれば、食事の準備や寝具の用意、外出費など、迎える側の負担も増えます。年に一度だからと無理を重ねているうちに、「今年も同じように」と期待されることが重荷になる場合もあります。
「今年も5日間」恒例になっていたお盆の帰省
「おばあちゃん、今年のお盆も泊まりに行くね!」
小学4年生の孫から電話でそう言われ、美智子さん(仮名・68歳)はすぐには言葉が出ませんでした。
長女の由佳さん(仮名・39歳)は、夫と10歳、7歳の子どもとの4人暮らし。美智子さん夫婦の家までは車で約2時間の距離です。
美智子さんは夫の隆さん(仮名・69歳)と二人暮らしで、年金は合わせて月約25万円。預貯金は約2,000万円あります。住宅ローンは完済していました。
娘一家がお盆に泊まりに来るのは毎年の恒例です。最初は2泊ほどでしたが、孫が小学生になるころから4~5泊に延びました。
朝食はパンだけでは足りず、卵やヨーグルト、果物も用意します。昼はそうめんやチャーハン、夜は孫が喜ぶように肉や刺身を買い、外食へ行けば美智子さん夫婦が会計を済ませていました。
「年に一度ですから、楽しく過ごしてほしいと思っていました」
前年のお盆に娘一家が5泊した際には、食料品だけで普段より約4万円多くかかりました。焼肉店や回転寿司へ出かけ、孫を水族館にも連れて行ったため、合計では10万円近い出費になったといいます。
お金だけではありません。
4人分の布団を出し、シーツを洗い、毎日6人分の食事を作る。帰宅後の洗濯物も増えます。娘夫婦が「久しぶりだから」と地元の友人に会いに出かける日は、孫2人を夫婦で預かりました。
帰省が終わるころには、美智子さんは毎年疲れ切っていました。
「帰った次の日は、何もしたくなくなるんです。それでも娘には、『楽しかったね。また来年ね』と言っていました」
総務省『2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年平均』によると、総合指数は前年比3.2%上昇しました。さらに2026年6月も前年同月比1.7%上昇しており、物価上昇は続いています。食事をする人数が一時的に増える帰省では、以前と同じ内容を用意しても家計への負担は大きくなりやすくなっています。
今年も当然のように「泊まりに行く」と言う孫を責める気にはなれませんでした。気になったのは、まだ娘から日程について相談されていなかったことです。
「来てほしくないわけじゃない」初めて娘に伝えた本音
その日の夜、美智子さんは隆さんに孫からの電話について話しました。
「今年も5日くらいなのかな」
すると隆さんは、「もう去年みたいにはできないよ」と答えました。
隆さんは前年から膝を痛め、長時間歩くことがつらくなっています。美智子さんも最近、腰痛で整形外科へ通い始めました。
さらに今年は、お盆明けに夫婦で2泊3日の旅行を予定していました。
「娘たちが帰った後に旅行なんて、体力がもたないと思う」
数日後、由佳さんから「13日から17日まで行こうと思ってるよ」と連絡が届きました。美智子さんはそこで初めて、5日間の宿泊は難しいと伝えました。
「今年は2泊くらいにしてもらえない?」
由佳さんは驚きました。
「どうしたの? 毎年楽しみにしてくれてたじゃない」
「会えるのはうれしいよ。でも、食事を作ったり布団を用意したりするのが、前より大変になってきたの」
美智子さんは、これまでの帰省でどのくらい費用がかかっていたのかも初めて話しました。
すると由佳さんは、「そんなに使っていたとは思わなかった」といいます。
娘一家にとって、お盆の帰省は「実家に泊まりに行く」感覚でした。しかし美智子さん夫婦にとっては、4人を数日間迎える準備が必要な年中行事になっていたのです。
話し合った結果、今年は2泊3日に短縮。食材の買い出しは由佳さん夫婦も一緒に行き、費用も負担することにしました。外食代も各世帯で支払い、娘夫婦だけで外出する時間は設けません。
孫には、美智子さんから「おばあちゃんたちも旅行に行くから、今年は2回お泊まりしようね」と説明しました。孫は特に不満を示さず、「じゃあ何して遊ぶ?」と聞いてきたといいます。
美智子さんは、その反応にも拍子抜けしました。
「孫ががっかりすると思って、勝手に無理をしていた部分もあったのかもしれません」
家族の帰省は、迎える側にとってもうれしい機会です。ただ、年齢や体調が変われば、以前と同じ人数、日数、費用を負担し続けることが難しくなる場合もあります。
宿泊日数や食費、外出の予定を事前に相談しておけば、どちらか一方だけが無理をする必要はありません。長年続けていく習慣だからこそ、その年の状況に合わせて過ごし方を変えていくことも必要です。

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