
マクラーレンF1の生みの親が放つ、1万2100回転の自然吸気エンジンを積む極上の3座ツーリングマシン
2026年8月14日、ゴードン・マレー・スペシャル・ビークルズ(GMSV)はモントレー・カー・ウィークで新作スーパーカー「S1」を世界初公開した。サーキット志向の「S1 LM」をベースに長距離ツーリング仕様へ昇華させた、世界限定64台の希少モデルだ。最高出力690馬力のV12とMTを誇る最新マシンのメカニズムと設計者の背景を紹介する。
伝説のスーパーカー「マクラーレンF1」を生んだ天才設計者
「ゴードン・マレー」という名前は、モータースポーツ界とスーパーカーの歴史に深く刻まれている。彼はブラバムやマクラーレンでF1マシンの設計を手掛け、数々のワールドチャンピオンシップ獲得に貢献した伝説的なエンジニアだ。
市販車において最も有名な功績は、1992年に発表されたスーパーカー「マクラーレンF1」の生みの親であることだ。同車で採用された「中央運転席」や「自然吸気V12エンジン+マニュアルトランスミッション」というパッケージングは、自動車史におけるひとつの到達点とされている。2017年には自身のブランド(GMA/GMSV)を設立し、「T.50」などを世に送り出してきた。新作「S1」には、彼の半世紀以上にわたる設計哲学が凝縮されている。

1万2100回転まで吹け上がる4.2リッター自然吸気V12と6速MT
「S1」の心臓部には、コスワース製の4.2リッター自然吸気V12エンジンを搭載する。チタン製のバルブやコンロッド、ドライサンプ潤滑システムなどコンペティション仕様のパーツで構成された低慣性エンジンは、驚異の1万2100回転まで吹け上がる。最高出力は690馬力(690PS)を発揮し、500Nmの最大トルクのうち81%をわずか2500回転から引き出すため、ロングツーリングでの扱いやすさも極めて高い。

トランスミッションは、ツーリング用のギア比を採用した6速MTを標準装備する。ストレートなケーブルルーティングにより精緻なシフトフィールを実現し、ドライバーと機械の濃密な繋がりを高めている。
固定式リアウイングを廃止したクリーンで洗練されたシルエット
ベースとなった「S1 LM」は極端な空力デバイスを備えていたが、新作の「S1」では大型の固定式リアウイングや長いフロントスプリッター、深いサイドスカートを完全に排除した。外板パネルを新設計し、クラシックなプロポーションから着想を得たクリーンでエレガントなシルエットを獲得している。

空力面では、新開発のアクティブリアエアロシステムをボディに統合した。極端なダウンフォースに頼らず、公道におけるメカニカルグリップとバランスを高める設計へと変更された。フロントのエアインテークには、ゴードン・マレーが1992年に手掛けた幻のモナコショーカーをオマージュした補助ライトが組み込まれている。
快適な3座キャビンと軽量化を両立した至高のツーリングカー
車高は「S1 LM」から10mm引き上げられ、サスペンションも公道でのしなやかさを重視して再チューニングされた。昇降式ガラスを内蔵したディヘドラルドア(斜め上方に跳ね上がるタイプのドア)新たに採用し、日常的な乗降性を大幅に向上させている。
豪華なトリムや防音材、プレミアムオーディオを備えた快適な3座キャビン(中央運転席)でありながら、目標総重量をさらに小型の「T.50」よりも軽く設定しているという点に、設計者の軽量化に対する並々ならぬ執念が伺える。

電動化や1000馬力オーバーの過剰なパワー競争が加速する現代のスーパーカー市場において、「S1」が提示したのは他社とのスペック競争ではない。あえて公道で人間がコントロールし尽くせる690馬力に数値を抑え、自然吸気V12と6速MT、そして徹底した軽量化によって「純粋に走る歓び」へ原点回帰したパッケージングだ。
価格は公表されていないものの、世界限定64台という希少性とともに、デジタル化が進む現代においてアナログなドライビング体験を極めたひとつの到達点と言える。
■ ゴードン・マレー・スペシャル・ビークルズ「S1」主要スペック一覧
・ベース車両:独自開発(S1 LMベース)
・生産台数:世界限定64台
・価格:未発表
・エンジン:コスワース製 4.2リッター自然吸気V型12気筒
・最高出力:690PS
・最大トルク:500Nm
・最高回転数:1万2100rpm
・トランスミッション:6速マニュアルトランスミッション(6速MT)
・乗車定員:3名(中央運転席レイアウト)


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