白ボディに白ゼッケンという絶妙なサジ加減。1963年式オースチン・ヒーレーが放つ当時の粋なカフェレーサー文法に沿ったオーラ

当時の文法に則った粋なカフェレーサー仕様が、大人のオープンカー乗りの心を強く惹きつける

音楽でもファッションでも、その時代時代の流行というものが存在する。もちろん自動車の世界にもそれは当てはまる。クルマは道具であり機械であるから、技術の進化や法規への対応といったハード部分に左右される面は大きいが、それでも世界的なデザインの潮流や、それをカスタムして楽しむユーザーの時代ごとの傾向はあるものだ。1960年代の旧き佳きカフェレーサーのテイストを上品にまとった、素敵なオープン2シーターを新潟のイベント会場で見つけた。派手なカスタムが溢れる潮流の中で、当時の文法に則った粋なカスタマイズで独自の輝きを放つオープン2シーターとオーナーのブレない情熱を紹介したい。

実用性を高めて登場したヒーリー「マークⅡ」を当時のテイストで仕上げる

新潟県三条市のミズベリング三条で4月12日に開催された「20世紀ミーティング2026年春季」の会場で、いぶし銀の輝きで筆者を手繰り寄せた1台に出会った。このイベントは、広い駐車スペースに集まったクルマとオーナーたちが情報交換をしつつ親睦を深めるというゆったりとした趣旨となっている。

その名の通り2000年までに生産されたクルマとバイクなら何でもエントリー可能という敷居の低いものであり、今回も2輪と4輪あわせて154台の幅広い車種がミーティング会場に並んでいた。日本のヒストリックカーイベントが盛んになり始めた1980年頃は、参加車両の多くは1950年代から1960年代生まれのクルマであったが、昨今では世代交代が進み、参加車両の約半数は平成生まれのクルマとなっている。

1963年式オースチン・ヒーレー「スプライトMk.II」

そんなヤングタイマーが目立つ会場だが、もちろん1950年代から1960年代生まれのクルマも頑張っている。懐かしくも見慣れたその姿は、ブリティッシュ・ライトウェイト・スポーツの代名詞とも言えるオースチン・ヒーレー「スプライト」である。

スプライトと聞いて、多くの人が真っ先に思い浮かべるのはカニ目の愛称で親しまれている「スプライトMk.I」かもしれない。しかしこちらはフロントとリアのデザインを大幅に刷新し、ガラリとイメージを変えて1961年に登場した「Mk.II」である。個性的なMk.Iに対し、ずいぶんと常識的な外観を手に入れたMk.IIは、ボンネットの開き方が一般的な形となり、リアにはトランクリッドが設けられるなど、実用面での使い勝手を大きく向上させている。

歴代のオープン2シーターを乗り継いできたオーナーの深い愛情

「もともとブリティッシュ・ライトウェイト・スポーツが好きだったんですよ」

そう話を聞かせてくれたのは、オーナーの廣川さんだ。

このオースチン・ヒーレー「スプライトMk.II」にはもう10年ほど乗っているそうだが、その前にはスプライトMk.IIIに7年ほど乗っていたという。さらにホンダ「ビート」やマツダの初代「ロードスター(NA型)」にも乗っていたというから、オープン2シーター・スポーツへの愛は半端ではない。

1963年式オースチン・ヒーレー「スプライトMk.II」

改めて廣川さんのスプライトMk.IIを眺めると、ハイウェイイエローと呼ばれる黄色みを帯びた白いボディに、茶色がかった赤内装が非常にシックな組み合わせである。前後をバンパーレスとし、フロントにはドライビングランプを追加している。左右のドアにはゼッケンサークルが配されているが、白いボディに白いゼッケンサークルという絶妙な匙加減がたまらない。

1275ccエンジンとウェーバーキャブで中身も抜かりなく鍛え上げる

ノーマルの風情を残しながらも、少しだけカフェレーサーのテイストを漂わせる。そんな廣川さんのスプライトMk.IIは、見た目だけではなくエンジンにも手が加えられている。

「このクルマは1963年式ですが、排気量は1275ccです。キャブはSUからウェーバーの40φに換装しています」

BMC系英国車のパワーユニットとしてお馴染みである4気筒OHVのAタイプエンジンは、さまざまな排気量が存在することで知られている。初代のスプライトMk.Iは948ccでスタートし、Mk.IIへと進化したのは1961年のことだが、その後1962年には1098ccに排気量を拡大している。

1963年式オースチン・ヒーレー「スプライトMk.II」

歴代スプライトで最大排気量となる1275ccエンジンが採用されるのはさらに後年の1966年のMk.IVの時代であるが、その最強エンジンをさらにウェーバーで武装して、シレッとボンネットに収めているのが廣川さんのスプライトMk.IIなのだ。

昨今では人目を憚らないド派手なオーバーフェンダーや太いタイヤなどで周囲を威圧するカスタムがとかく注目を集めがちであるが、そんな時代にあって当時の文法に則って粋に仕上げられた1台である。最近脂っこいものが胃にもたれる昭和世代にとっては、まさに一幅の清涼剤のような「安心して見ていられる」存在として心に響くはずだ。

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オースチン・ヒーレー スプライトMk.II:現代のクルマにはない、開放感とシンプルさを極めたキャビン周りの造形が魅力的だ