
S15用6速ミッションとハルテック制御を組み込み、バイク用ステアリングダンパーで揺れを抑えたL28改3.2リッターのメカニズム
ヤフオクに1日中張り付き、ホイールもフェンダーもボンネットもロールケージも落札する。そんな“ヤフオクレーシング”を自称するプライベーターが、20年かけて仕上げたのが1975年式の日産「スカイライン2000GT-X」だ。L型を積むケンメリを筑波1分6秒台まで持ち込んだ、その執念のクルマ作りを取材した。
1975年式ケンメリ「スカイライン2000GT-X」を20年、なぜヤフオクで作り続けるのか
愛車を“ヤフオクレーシング”と呼ぶ。オーナーの渡辺さんは、20年ほど前に手に入れた1975年式スカイライン2000GT-X、通称ケンメリに手を入れ続けている。購入の決め手は、スパッと切ったようなカタチと、少しグレたような佇まいだった。

L型エンジンさえ載っていればグレードは問わず、とにかくケンメリでL型チューンをやりたかった。若いころにできなかったことへの思いが、クルマ作りの原点になっている。
「若い頃にできなかったことを、やりたかったんですよ。購入したときはソレタコデュアル(ソレックスキャブ、タコ足、デュアルマフラーを組み合わせた定番のチューニング)で、エンジン本体はノーマルという状態でした。そこからしっかりした車高調を作って車高を下げて、というところからですね。あとは、出る部品は全部ヤフオクです。ホイールとかフェンダーとかボンネットとかロールケージとか、大概のものは出ますよ。ただ時期があるので、待ちきれないときは新しいのも買ったりします。もうヤフオク中毒もいいところで、一日中ケンメリとハコスカを探しています。個人的にはヤフオクレーシングって呼んでるんですけど。プライベーターは、やっぱりこうなりますよね」
通称ケンメリのスカイラインとは? 1972年デビューの4代目、そのグレード構成
通称ケンメリは、1972年9月にデビューした4代目のスカイラインだ。 C110スカイラインは、その販売戦略と象徴的なデザインから「ケンとメリーのスカイライン」、通称「ケンメリ」として広く知られている。 デビュー翌年の1973年には、S20型エンジンを積むGT-Rも追加された。
ボディバリエーションは4ドアセダン、2ドアハードトップ、5ドアのバンとワゴンの3タイプで、セダンとハードトップにはそれぞれ4気筒ショートノーズと6気筒ロングノーズが用意された。 エンジンは直4の1.6リッターと1.8リッター、直6の2リッター(L20)が設定されている。
渡辺さんの1975年式スカイライン2000GT-Xは、カタログ上では2ドアハードトップのホイールベースを延長し、2リッター直6を積むモデルだった。 GT-XはL20型のなかでもSUツインキャブを備えた130ps仕様が搭載され、部分革巻きの強化木製ステアリングやパワーウインドウなどを標準装備する上級グレードだ。 そのL20が、いまはP90ヘッドを組んだL28改の3.2リッターへと積み替えられている。

筑波サーキットで1分6秒台。L28改3.2リッターと6連スロットルの中身
渡辺さんのケンメリは、筑波サーキットのコース2000で1分6秒台を記録している。心臓部のL28改3.2リッターは、オートサービス渡辺のピストンなどで排気量を拡大した。インジェクション化にあたってはオーストラリア製の6連スロットル(インマニは国産)を組み、オートサービス渡辺のフルカウンタークランクなどをセット、制御はハルテックが担う。このあたりはさすがにヤフオクではない。
駆動系や足まわりも作り込まれている。HPIのL型用S15用6速フルクロス(各ギヤのギヤ比を接近させ、シフトアップ時の回転落ちを抑える仕様)トランスミッション、R200デフ(ファイナルギア比4.3)、オイルクーラー、エンドレスのブレーキなどを備える。オイルクーラーは自身でバンパーをカットして装着した。さらにエンジンの揺れを抑えるダンパーも組み込んでいる。
このダンパーには、オートバイ用のステアリングダンパーを流用した。渡辺さんがオートバイ乗りだった経験からの発想で、装着の効果は高く、トランスミッションが入りやすくなったという。内装はリアシートなどを取り払って軽量化し、この状態で公認を取得している。ここまで手を入れたのは、すべてサーキットを走るためだ。
油温と軽量化が今後の課題。ケンメリでサーキットを走り続ける理由
タイムはこれ以上を狙っていないという渡辺さんにも、まだ手を入れたい部分が残る。課題は油温と軽量化の2点だ。
「油温をどうしようかなっていうのは、最近思っているんですけどね。オイルクーラーじゃ足らなくて、今日も決勝レースで150度ぐらいまでいって、途中でアクセルをだいぶ抜きました。対策を取らないと、エンジンが壊れちゃうかなっていう感じですね。あと軽量化ですね。ケンメリは重いんですよ、ボディが。S30のZとかに比べると重いので、軽量化はしたいんですよね。正直L型車はえらく手間がかかるし、えらく金もかかるんだけど、まあ楽しいですよ」
自らヤフオクレーシングと称し、プライベーターとしてサーキット走行やレースを楽しむ渡辺さん。20年をかけて理想へ近づけてきたケンメリと、まだ見ぬ理想を求めてヤフオクとにらめっこする日々は、これからも続いていく。手間もお金もかかると笑いながら、それでも楽しいと語る姿に、L型と生きるプライベーターの原点が見える。
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