共働き家庭では、祖父母が孫の送迎や預かりを担うことがあります。親世代にとっては大きな助けになる一方、週に何日も続けば、祖父母自身の予定や体力にも影響します。「孫のためなら」と始めたことでも、年月とともに負担の感じ方が変わることがあります。

「週に2日くらいなら」から始まった孫のお迎え

「お母さん、今日もお迎えお願いできる?」

長女の美香さん(仮名・40歳)から連絡が届くのは、午後3時を過ぎたころです。

母の久美子さん(仮名・68歳)は、夫との二人暮らし。夫婦の年金は合わせて月約23万円、預貯金は約1,500万円あり、住宅ローンを完済したマンションで暮らしています。

美香さんは夫と小学2年生の娘との3人暮らし。久美子さんの家から車で20分ほどの場所に住み、夫婦ともフルタイムで働いています。

孫の送迎を頼まれるようになったのは、小学校への入学がきっかけでした。

当初は週に1、2回だけ。放課後児童クラブから孫を迎え、娘夫婦のどちらかが帰宅するまで久美子さんの家で過ごすというものでした。

「そのくらいならいいよ。私も孫に会えるし」

久美子さんも喜んで引き受けました。

ところが、美香さんの仕事が忙しくなるにつれ、回数は増えていきました。現在は月曜、火曜、木曜、金曜の週4日がほぼ固定になっています。

午後4時前に家を出て孫を迎え、夕食を食べさせる日もあります。習い事のある火曜日には、そのまま車で教室まで送ります。

「何時に迎えに行くか決まっているから、その日は午後から遠くには行けないんです」

それまで久美子さんは、友人と日帰り温泉へ行ったり、午後から映画を観たりしていました。しかし送迎を始めてからは、平日の予定を入れる際、まず孫のお迎えがあるかを確認するようになりました。

ガソリン代や孫の夕食、おやつなども久美子さんが負担しています。

一度の金額は大きくありません。それでも週4日となれば、毎月の支出は少しずつ増えていきます。

内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上で現在収入のある仕事をしている人や、地域活動、趣味・おけいこ事など何らかの社会的活動を継続している人は61.4%でした。高齢期にも、それぞれ仕事や趣味、地域とのつながりを持ちながら生活している人は少なくありません。

久美子さんも、孫を迎えに行くことだけが生活の中心だったわけではありません。それでも「今日はお願い」と言われれば、断ることはほとんどありませんでした。

「娘が困るでしょう。孫を一人にするわけにもいかないですから」

そんな生活が1年半ほど続いたころ、久美子さん自身にも変化が出てきました。

「私の予定は、いつ入れればいいの?」初めて口にした本音

ある日、久美子さんは以前から友人に誘われていた日帰り旅行へ行くことにしました。1ヵ月以上前から予定を決め、美香さんにも「この日は迎えに行けないからね」と伝えていました。

ところが前日の夜、美香さんから電話がありました。

「ごめん、明日どうしても仕事抜けられなくて。お迎えお願いできない?」

久美子さんは一瞬迷いました。

「明日は旅行だって言ったでしょう」

「分かってる。でも、今回だけ何とかならないかな」

いつもなら予定を変更していたかもしれません。しかし、その日は久美子さんも断りました。

「私だって予定があるのよ。いつも孫の予定を優先していたら、私はいつ自分の予定を入れればいいの?」

言った直後、久美子さん自身も驚いたといいます。

「孫のお迎えが嫌だったわけじゃないんです。ただ、週4日になったころから、私が空いているかどうかを確認するというより、迎えに行けるものとして話が進んでいたんですよね」

美香さんも、母の負担を具体的に考えたことはなかったといいます。母が仕事をしておらず、自宅からも近いため、「予定がなければお願いできる」と考えているうちに、週4日の送迎が日常になっていました。

こども家庭庁『令和7年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況』によると、2025年5月1日時点の登録児童数は157万人を超えています。共働き家庭の増加などを背景に、放課後や長期休暇中の子どもの居場所への需要は大きく、家庭だけでなく社会的な支援も重要になっています。

その後、親子で送迎について話し合いました。久美子さんが担当するのは原則週2日。残りは美香さん夫婦で勤務時間を調整し、必要に応じてファミリー・サポート・センターなど地域の子育て支援も検討することにしました。

習い事への送迎も毎週久美子さんが担当するのではなく、娘夫婦と交代します。費用についても、ガソリン代や孫の夕食代として美香さんが毎月一定額を渡すことにしました。

送迎が週2日になったからといって、久美子さんが孫に会わなくなったわけではありません。むしろ、お迎えのない日は友人との予定を気兼ねなく入れられるようになり、孫を迎える日も以前より余裕を持って過ごせるようになったといいます。

祖父母による送迎や預かりは、子育て世帯にとって大きな支えになります。ただ、一度引き受けた役割でも、頻度が増えれば負担は変わります。

家族の助けを長く続けるためには、できる日数や時間、費用の負担をその都度見直すことも必要です。孫との時間を大切にしながら、祖父母自身の生活も守れる形に整えることが、無理のない関わり方につながります。

(※写真はイメージです/PIXTA)