16年間、神奈川県で小学校教員をつとめた“ささT”さんが運営する、チャンネル登録者数19万人の人気YouTubeチャンネル「ささT 学級経営と教師の本音」。ささTさんは、小学生の二人のお子さんの子育てに奮闘しながら、現在はYouTubeを中心に教育に関わる発信をしています。



ささTさん



 1290万回再生(2026年9月現在)を記録する人気ショート動画、「小学校2年担任のイレギュラー多めな1日」は、教師の仕事の忙しさやリアルな日常が詰まった内容に、多くの共感が寄せられました。


 ささTさんは、コロナ禍の2020年、学校に行けない子どもたちのためにと授業動画の配信をスタート。2026年3月に教員を退職するとショート動画が次々と話題を呼び、勉強ライブや出前授業、オンラインサロンの運営に、活動の幅を広げています。


 なぜ、教師の日常を追った動画はこれほどの反響を呼んだのでしょうか。また、令和の小学生や学級崩壊のリアルや、元教員だからこそ知る「学校の本音」を、ささTさんに聞きました。


◆突然の転校宣言? 気が休まらない教師の1日




――ささTさんのチャンネルでは、「教師の1日」を追った動画が人気ですが、実際にどんなことが大変ですか?


ささTさん(以下、ささT):一日中気を張っていなければならないことだと思います。常に何かが起こりますし、給食を食べているときも休憩ではありません。子どもたちといるのはすごく楽しいけれど、その背後にいる保護者のことも考えなければいけないので正直大変ですね。目の前の子どものために行動しても、あとで保護者からいろいろと言われてしまったり。


――先生が焦るのはどんな瞬間なのでしょうか。


ささT:動画では、ある児童が終業式の日に突然「夏休み中に引っ越すんだ」と言ってきて、転校するのかとびっくりして保護者に確認すると、学区内の転居だったというパターンを紹介しましたが、そういうことが実際にあったりします。逆に、子どもから重要な話を聞いて保護者に確認したら本当だったというケースもありますね。


また、お金に関することは少しでも間違いがあると不祥事になるので焦ります。集金した金額が足りなかったり、持ってきたのに無くしてしまったり。よく探すと、ランドセルの奥深くにお金が落ちていたり、子どもが間違った金額を保護者に伝えていたことが原因ということもあります。


私が勤務していた神奈川県では、給食費は口座引き落としになったのですが、教材費はまだまだ集金することが多いので大変でした。


◆学年別、ありがちなトラブルの原因とは



――学校で起こるトラブルといえば、どんなものが多いのでしょうか。


ささT:学年によって違いがあります。1年生は学校生活に慣れていないので、忘れ物や、お漏らしなどが日常茶飯事です。まだ子どもたちが全体に向けた指示を理解して動くことができないので、一人ひとり対応しなければなりません。また1、2年生でありがちなのは、正義感の強い女の子が、男の子に注意をして、男の子が怒り出して揉め事になるパターンですね。


3、4年生は「ギャングエイジ(親や教師よりも、友達グループを優先するようになる発達段階)」なので、人間関係で喧嘩になることが増えます。一部の子が不良っぽいグループで固まるようになり、トラブルを起こしやすくなることもあります。


5、6年生は人間関係が複雑になり、特に女の子同士の仲間はずれや、表面上は見えにくいトラブルが増える印象があります。


――トラブルが起こったときなど、先生が厳しい指導をすることは難しくなっているのでしょうか。


ささT:16年間教員を続ける中で、指導が難しくなっている実感がありました。子どもがやってはいけないことをしたときに、厳しい態度で注意するような指導ができなくなっているせいか、先生に叱られると学校に来なくなる子が昔と比べると増えていると思います。


私は、先生が厳しさを出せるかどうかは、子どもとの信頼関係がすべてだと考えています。信頼関係があれば、厳しくしても大丈夫。でもそれがなければ子どもは離れていくし、保護者からのクレームにも繋がります。私も、初めて6年生を受け持ったときはなかなか叱ったりできなかったのですが、経験を積むことで、厳しさを調整しながら指導することができるようになっていきました。


――保護者からは、先生の指導についてどんな声がありますか?


ささT:以前、インスタライブで保護者の方々に「厳しい指導をしてほしいかどうか、本音を教えてください」とお聞きしたことがありました。回答はバラバラで、「厳しくしてほしい」という方もいれば、「厳しすぎると嫌だ」という方もいました。それに対して、先生としては「厳しすぎるのは嫌だ」という保護者に基準を合わせるしかないんです。「厳しすぎるのが嫌だ」と思っている子どもがしんどくなってしまってはいけませんから。


ただ、保護者の方が唯一共通していたのが「子どもが先生のことが好きなら、叱られも平気です」ということでした。結局は、子どもとの信頼関係が大切ということなのだと思います。


信頼関係を築くことができれば、先生が子どものタイプによって指導方法が違っていたとしても、「不公平だ」とは捉えず、「先生はその子のために言い方を変えているんだな」と子どもたちは理解してくれます。


◆コロナ禍の授業動画から始まった、教員YouTuberの道のり



2025年度の卒業アルバム写真



――そもそも、ささTさんがYouTubeを始めたきっかけは何だったのでしょうか。


ささT:2020年にコロナ禍で学校の授業を受けられなくなった時期に、「YouTubeで授業の動画を発信したら、自分が受け持っていない子どもたちや、不登校の子たちなど、いろいろな子のためになるんじゃないか」と思って始めました。


学校に許可を取って、国語、算数、理科、社会を中心に、6年間で1000本以上の授業動画を投稿しました。平日は学校があるので、土日に撮影と編集をしていました。公務員は副業ができないので、当時は収益化はしていませんでした。


当初は、あまり再生数は伸びなかったのですが、不登校のお子さんの保護者の方からの「すごくためになります」という声や、現役の先生方からの「授業の参考にしています」という声があり、少しずつ役に立っているのかなと思えるようになっていきました。



――今年3月に、16年間務められた神奈川県の教諭を退職したのは、なぜだったのですか?


ささT:YouTubeを始めて4〜5年経った頃、登録者数が1万人を超えたんです。「動画のおかげで、テストで点が取れるようになりました」という声を聞いて、一教員として担任している子どもたちだけではなく、もっと多くの子どもたちのためにできることがあるんじゃないかと考えるようになりました。


私は子どもたちに幸せにしてもらってきたので、全国の子どもたちや、保護者、先生たちに、教育について伝えていくことで、子どもたちの幸せに繋がっていくんじゃないかと思ったんです。


そして、今年の4月に退職を決意して、子どもたちに辞めることを伝え「先生が挑戦している姿を見て、みんなもいろいろなことに挑戦してほしい」という想いを込めて離任式では「先生は登録者数100万人を目指します!」と宣言しました。


退職した時点での登録者数は1万5000人ほどだったのですが、退職後に投稿した「教員の1日」などのショート動画が話題になりました。現在は、YouTube以外にも、勉強ライブをしたり、小学校で出前授業をしたり、オンラインサロンで教育について語り合ったり、相談を受けたり、要望があれば家庭教師にも行ったりしています。


<取材・文/都田ミツコ>


【都田ミツコ】ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。



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