
空前の人手不足で、「若手が採れない・定着しない」という声が多くの企業から聞こえてくる。必然的に、ベテラン社員に長く頼る企業が増えている。
帝国データバンクが全国1289社を対象に、従業員に何歳ごろまで活躍してほしいか尋ねたところ、全体の平均は67.9歳だった。規模別にみると、「小規模企業」が68.3歳、「中小企業」が68.1歳、「大企業」が66.8歳となり、企業規模が小さくなるにつれて平均は高くなった。
業界別では、「農・林・水産」が70.1歳で唯一70歳を超え、「運輸・倉庫」(68.6歳)、「サービス」(68.5歳)と続いた。一方で、「建設」は67.4歳と全業種のなかで一番低かった。ゼネコンなどでは独自の安全基準を設けるほか、今年4月からは労働安全衛生法改正により高年齢労働者の労働災害防止対策が努力義務化され、安全面を考慮して高齢になるほど活躍しづらくなっている。
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企業が定年制を設ける場合、その年齢を60歳以上とする必要があり、65歳までの雇用確保措置が義務付けられている。今回の結果で、雇用確保措置の年齢を3歳ほど上回り、企業は従業員に70歳近くまで活躍することを期待していることがわかった。そして、高年齢の従業員には健康である限り、若手の指導や経験を生かした業務を続けてくれることを望んでいる。ベテラン人材の経験や技術は企業にとって大きな財産だが、人手不足になったから長く働いてほしいという企業側の都合だけでは持続しない。
実際、今は退職後の再雇用制度を設けている企業は多いが、仕事内容はほとんど変わらないにもかかわらず、賃金・給与を低く抑えることができるので、働き手より企業側にメリットが大きい。70歳まで働いてほしいという期待の裏にそうした人件費削減の本音が隠れていないだろうか。また、再雇用後の賃金・給与を下げなくても「70歳まで働いてほしい」とオファーする企業がどれくらいあるのか気になるところだ。
長く働ける環境づくりは、シニア層だけを対象にするものではない。会社には「社員が何歳まで働きたいと思える職場なのか」という課題が突きつけられている。人手不足の今は、従業員が待遇改善を求める絶好のチャンスである。とくに、コロナ禍後のインフレ局面において、物価上昇率が賃上げ率を上回り、実質賃金が低下している。大手では改善してきているが、中小はまだまだだ。
そして、人手不足を解消するには、就職氷河期世代の人材をもっと積極的に採用してはどうだろうか。この世代は、希望する仕事に就けず、不本意ながら非正規雇用となった人が多い。当時、企業が採用を極端に控えたのが理由だった。
文/横山渉 内外タイムス

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