こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。先月、『中国人が見た ここが変だよ日本人』(青林堂)という書籍を出版しましたが、今回のコラムでも、中国人である僕から見た日本の違和感を書いてみたいと思います。それは、日本の国技、相撲です。

■「日本出身」を強調するのは感じが悪い!?

 2016年1月24日大相撲初場所において大関・琴奨菊が14勝1敗の成績を残し、日本出身力士として10年ぶりの優勝を果たしました。この快挙は大きな話題となりましたが、僕は今回の報道に対する日本人の反応に違和感を覚えたのです。

 インターネットで調査したところ、以前日本国籍を取得した外国出身力士が優勝したことがあるため、メディア側は「日本出身」という表現を使用したそうです。それ以外にも外国人力士に対する心理的配慮もあると思います。SNSを見ると、「日本人力士の優勝というより琴奨菊という力士が優勝することに意味があるんだからそういう取り上げかたをすべき」、「賜杯拝戴のときに土俵上で政治家が余計な自国賛美のことを言ったり、絶対にしませんように」と、ナショナリズムが高揚することを否定したり、「モンゴル人力士達が優勝したら特に褒めない日本は腐ってる」、「外国人力士を受け入れておいて、日本出身力士の優勝をことさらにおめでたがって『日本出身』と強調するのは、なんだかとても『かんじ悪い』」などと、外国人力士の心境を気使うような意見が多く見られました。

 一見正論に見える彼らの意見ですが、僕は間違っていると感じます。まず自国のスポーツ選手が活躍する姿を見て歓喜するのは万国共通の反応です。ましてや相撲は古来より続く日本の国技であるため、日本人のナショナリズムを刺激するのは当然のことです。数年前に優勝した力士は日本国籍を取得したとはいえ、一般的な日本人の心理からすれば、彼はあくまでも「外国人」という認識でしょう。

 上記のような意見を述べた人々は「人種差別はよくない」、「競技者を国籍で区別するな」と訴えたかったのかもしれませんが、オリンピックサッカーW杯を見ればわかるように、スポーツの応援とナショナリズムは切っても切り離せないものなのです。僕自身は優勝した琴奨菊関は「日本人」、もしくは「生粋の日本人」と報道するべきだと思います。他の競技がナショナリズムを刺激されることでその競技力が向上されているように、そうすることで、より日本人力士の奮闘を促す結果になると思うからです。

 また、今回の相撲の一件から離れて言いますと、左派・リベラル系の人々はしきりに在日外国人に対する偏見を無くせと訴えています。ですが、現在のドイツ国内では中東難民による略奪、暴行事件が頻発しているように、在留外国人に対する過剰な保護を行うことで大きな問題が引き起こされることが多いのです。

 2013年に韓国籍の男が「日本人なら誰でもいい」という理由で数名を刺傷するなど、「マイノリティー」だという感情を理由に在日外国人が犯罪を行う例は珍しくありません。日本とは全く異なる環境下で育った外国人が日本での生活に適応できるかは未知数です。

 僕自身は犯罪発生を防ぐために、在日外国人たちの身辺を徹底的に調査することを義務付けるべきだと考えています。それは決して人種差別ではありません。なぜなら、それは、日本で真面目に暮らしている外国人にとって歓迎すべきことだからです。こうした取り締まりが行われることで、日本で暮らす外国人が、厳しい審査を潜り抜けた、しっかりとした身元の人物であることが証明され、地域住民たちから信頼の目で見られることになるからです。

 以前の僕は、相撲は「ブクブクに太った男たちが行うスポーツ」という認識があり、競技としての魅力を感じませんでした。多くの中国人も似たような感情を持っているようで、相撲は中国国内ではほとんど話題になりません。

 しかし中国在住時に日本文化を学ぶにつれ、力士は激突した時の衝撃をやわらげるために、あえて肥満体になること、脂肪の下には高密度の筋肉が隠されていることを知ったのです。フランスのサルコジ前大統領が「インテリのスポーツではない」と揶揄したように、相撲に偏見を持つ外国人は多いと思いますが、この日本文化がもっと世界に広まればそのような偏見は払拭されるでしょう。

 日本の文化を学習していたため、以前から僕はモンゴル勢をはじめとする外国人力士たちが日本の大相撲を席巻していることを知っていました。もともと巨大な体格を持つ欧州人、同じモンゴロイドながら北方民族で高い身体能力を持つモンゴル人に比べると、相撲の「正面から思い切りぶつかる」という競技の性質上、日本人はあらゆる意味で不利だと言えるでしょう。

 琴奨菊関は体格、身体能力にハンデがありながら外国人力士たちに打ち勝ちました。彼が優勝するまでには並々ならぬ努力があったことでしょう。これは大相撲中継を見ていた知人から聞いた話ですが、琴奨菊関が優勝を決めた時、会場内には日本国旗を振って歓声を上げる人がいたそうです。

 日本人が日本の国技の頂点に立つことは自然なことであり、今後、相撲の盛り上がりのためにも更なる日本人力士の奮闘を願いたいです。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)

(構成/亀谷哲弘)

中国人漫画家が感じた琴奨菊の優勝報道の違和感 (C)孫向文/大洋図書