チャットアプリで知り合った当時中学3年生の少女の半裸写真を撮影し、みだらな行為をしたなどとして、神奈川署は4月11日小田原市に住む45歳の男性を児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)と神奈川県青少年保護育成条例違反の疑いで逮捕した。

産経ニュースによると、男性が神奈川署に「15歳の女の子と付き合っているが、犯罪になるのか」と電話したことから発覚したという。男性は写真を撮ったことは認めているが、「結婚を前提に付き合っていた」と真剣交際だったことを話しているそうだ。

仮に2人が真剣交際だったとしても、許されないことなのだろうか。青少年保護条例にくわしい奥村徹弁護士に聞いた。

●「結婚前提」なら許されるが、証明が困難

いわゆる青少年保護条例の淫行処罰規定については、最高裁大法廷判決(1985年)があって、次のように解釈されています。

「『淫行』とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、青少年を…その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である」

つまり、青少年との性行為などが必ずしも「淫行」になるとは限らないということです。神奈川県青少年保護育成条例でも、「『みだらな性行為』とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交」と規定しています。

「結婚を前提」とした真剣交際なら淫行には当たりませんが、裁判例を見ると、真剣交際かどうかの判断では、次のような要素が考慮されます。

・年齢差

・青少年が婚姻年齢(女性16歳、男性18歳)に達しているか、

・虚言がないこと(年齢、婚姻歴等)

・性行為の頻度(ホテルで会ってホテルで別れるような関係ではないこと)

・初対面から性行為までの期間

・行為の内容(避妊、アブノーマルプレー

・保護者の承諾や親族への紹介があるか

当事者がただ「真剣な交際だ」と供述するだけでは足りないようです。免責を主張するには、これらの事項について証拠を集める必要がありますので、不起訴・無罪になるのは容易なことではありません。

●「撮影」が許容される場合も

また、児童ポルノ製造罪は法文上、真剣交際であっても成立することになっています。

もっとも、罪が保護しようとする対象は、主として描写される児童の尊厳にあるので、許容される場合もあるとされています。児童ポルノ法の立法者による解説書には次のように書かれています。

「描写される児童との関係や被描写児童の承諾の経緯、理由等を考察し、当該提供行為について真撃に承諾し、かつその承諾が社会的に見て相当と認められる場合には、違法性が認められない場合もありうる」(森山真弓、野田聖子『よくわかる改正児童買春ポルノ法』p190)

真剣交際関係の場合に、性行為が処罰されないのに、撮影行為のみが処罰されるのは不合理ですので、青少年条例の大法廷判決と同様の要件で許容されるべきであると考えています。

●高い逮捕率、まず弁護士に相談を

報道の事例の被疑者は、警察に相談したことをきっかけにして逮捕されたようですが、青少年条例違反や児童ポルノ法違反の逮捕率が高いことを考えれば、まず、弁護士に相談すべきであったと思います。

もっとも、相談サイトでの弁護士の回答などを見ていると、相談を受けた弁護士も「真剣交際であれば罪にならない」「逮捕されないだろう」と回答していることが多いようです。

これは、青少年条例違反にしても、児童ポルノ製造罪にしても、最終的には罰金で終わることが多く、費用の面でも弁護士に依頼しないことが多いことと関係していると思います。弁護士側に経験が蓄積されておらず、相談者にとって都合がいい回答なので軽信しやすいのでしょう。

実際には、青少年条例違反の淫行・わいせつ禁止規定の逮捕率(逮捕件数/検挙件数)は5~6割になっています。この種の事件にくわしい弁護士に相談して、正確なコメントをもらうようにしてください。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
奥村 徹(おくむら・とおる)弁護士
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。
事務所名:奥村&田中法律事務所
事務所URL:http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/

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