ブリザード吹き荒れる南極に暮らすペンギンたち。
人間からすれば「なんでそこやねん」と思う場所でも、本人たちはマイペース。
ひょうきんな姿で、のびのびと楽しげな気配すら漂っていると思いませんか?
そんな彼らも、実は“あるモノ”を使い、一生懸命に家をつくっていました。
今回は、アデリーペンギンの住宅事情に迫ります!
ようやく暖かい春が訪れようとしている日本。うってかわって、ブリザード吹き荒れる極寒の地、南極が今回の舞台です。
TBSのドラマ『南極大陸』も記憶に新しいですが、あの力強い主題歌のイメージに比べれば、ペンギンなんてカワイイもの――なんて思ってたらアナタ、やられますよ。実は、ちょっと痩せ型の会社員なら羽のパタパタでしばき倒せる生き物なのです。
そんなペンギンですが、南極大陸で繁殖するのはアデリーペンギンと皇帝ペンギンの2種類のみ。それぞれウン十万羽の大きなコロニーをつくり、子育てをするのが特徴です。
10月、南極大陸に遅い春が訪れると、海岸の近くには岩場が姿を現します。この短い雪解けの季節こそが、アデリーペンギンの恋のシーズン。カップルになったアデリーペンギンたちが、いそいそと地面の小石を拾い集めます。理由は、ヒナや卵が冷たい雨や雪解け水に浸ることを避けるため。小石を火山のように積み上げて“小石の家”をつくるのです。
すべてのカップルが家つくりに精を出すころ。岩陰からそろりと顔を出した一羽のアデリーペンギンがいます。キョロキョロと辺りを見まわし、留守とおぼしき隣家に近づいていきます。
Photo by Liam Q
と、おもむろに隣家の石をくちばしにはさみ、短い足を高速回転!! 一目散に走り出しました。ペンギンが帰るのは、恋人が待つ自分の家。彼は、持ってきた小さな石を家の中にコロン……自分の家に追加してしまいました。
なんということでしょう。ドロボウです。ドロボウペンギンです(悪い顔!)。
Photo by lin padgham
ちなみに、ドロボウしてるのが見つかると、家主から鋭い攻撃を受けます。
Photo by Liam Q
不毛の地・南極では、数少ない小石はまるで宝石。すべては子どもの命のため、よそから盗ってきてしまうことがあるのです。たとえ無事にヒナがかえったとしても、空からはカモメに狙われ、隣家ペンギンとのご近所トラブルも絶えず、決して順風満帆とはいえないようです。
カワイイ顔に隠された、ペンギンの苛酷な人生。ポツンと雪原に立つ姿がますます愛おしいものに思えたとしても、抱きしめたりしようものなら頑丈な羽のチョップで叩きのめされますのでご注意を……。
<暮らしのヒント>
生きるためとはいえ、ペンギンたちの仁義なき集合住宅。よそへ盗みに入っている間に、我が家がどこぞのペンギンに入られていた――なんてことすらありそうです。ただし、ドロボウが留守宅を目ざとく見つけるのは人間も同じ。厳重な戸締りはもちろん、一人暮らしでも「行ってきます」と玄関先から家の中に声をかけておくと◎(時折むなしくなりますが、めげてはいけません)。また、長く家を空けるときは、新聞や配達物が溜まって目立つことのないように、あらかじめ配達を断っておくとよさそうです。
<まとめ>
戸締り、空き巣対策はしっかりと。
Photo by lin padgham
<豆知識>
和名:アデリーペンギン
学名:Pygoscelis adeliae
分類:ペンギン目ペンギン科
サイズ:約70cm
得意技:急ぐときは“おなか滑り”
【参考文献】
『やっぱりペンギンは飛んでいる!! (知りたい!サイエンス)』
(いとう 良一、佐藤 克文・著/技術評論社)
『ペンギンの飼い方』
(福 信行・著、真柴マキ・編集/組立通信)
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