6月に世界を騒がせた英国のEU離脱問題がきっかけで、思わぬところで残留離脱論争が巻き起こっている。

離脱問題が発生しているのは、東京都町田市。都の西部に位置し、人口は約42万人と、都の市町村の中では八王子市に次いで人口が多い。市の大半を神奈川県に面している特異な地理から、「町田は東京都神奈川県か」という町田問題が以前から持ち上がっていた。

市内を走るバスは「神奈川中央交通」、気持ち的には完全に神奈川県

町田市を地図で見ると、神奈川県に大きく張り出していることがわかる。神奈川県相模原市川崎市横浜市だけではなく大和市にも隣接しており、もはや神奈川県の一部と言っても不思議ではない。

町田駅を通る小田急線は、新宿を出発後、登戸で神奈川県に入り、鶴川、玉川学園前、町田で再び東京に。そして、次の相模大野でまた神奈川県に入る。

筆者(編集部S)は神奈川県綾瀬市出身で、最寄り駅は小田急線海老名駅町田駅までは10分ほどと近いため、高校生のころから遊びに行くといえば町田だった。完全に神奈川文化圏といえる。

町田市は行政の面でも神奈川県と密接に関わっている。隣接する相模原市には「町田市民との広域証明発行サービス」というものがあり、相模原市町田市に住民登録があれば、どちらの市の窓口でも住民票などの証明書を発行してもらえる。両市の図書館の利用も可能だ。

「町田問題」はテレビでも度々取り上げられている。2016年7月23日放送の「新・情報7daysTBSテレビ)」では離脱問題について触れ、街の人の、

「町田だけが飛び出ちゃっている。いっそのこと神奈川でいい」
「市内を走るバスはかなちゅう(神奈川中央交通というバス)」
「郵便物も神奈川県町田市でも届く」

といった声を紹介していた。

地元メディア調査では「独立派」の存在も明らかに

実は町田は約120年前まで神奈川県に属していた。1893年、町田市は政府の主導で神奈川県を離脱し、東京府(現東京都)に移管された。多摩川の水質管理が理由とされているが、そろそろ神奈川に復帰してもいい頃合いだろう。

地元メディア、町田経済新聞は、7月にウェブアンケートを実施(回答数665)。その結果、「東京都町田市がいい!」が39.55%で多数派ではあったが、「神奈川県町田市がいい!」も28.12%と離脱派も決して少なくない様子。アンケートでは「独立すべき」という回答も26.17%いたが、この場合は町田県になるのだろうか。いずれにせよ、現状に疑問を抱いている層が相当数いるようだ。

ツイッターでも番組放送を受けて、「確かに町田の人が話してるのは相模弁だし、神奈川に離脱していいわ」という声のほか、神奈川県民からは「町田は、神奈川のものだ!」「町田は我が領土」といった声が出ていた。

前出の「新・情報7days」の取材に対し、市は「町田市東京都です。ご理解ください」とコメント。あくまで東京都に所属することを強調していたが、50年後、100年後にどうなっているか気になるところだ。

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