仕事を与えられていない社員が会社に漫画を100冊持ち込み、「仕事しないで良くなってすごい楽でいい」と開き直っているーー。そんな書き込みがネット掲示板に投稿された。

投稿者によると、その社員は今年入社した新人。「典型的なゆとりで叱られたらやる気なくして反発してくるような奴」で、とうとう周囲から見放されて仕事を与えられなくなったそうだ。

すぐに辞めるだろうという予想に反して、その社員は「堂々とマンガを100冊くらい持ち込み」、「仕事ないのに毎日2時間くらい残業(マンガ)して、残業代を請求している」という。課長から漫画の持ち込みは禁止だと言われても、「クビにしてみろよ」「俺はこのまま会社から搾れるだけ搾り取りますので」と開き直り、聞く耳をもたないそうだ。

仕事をせず持ち込んだ漫画を読みふける社員を、クビにすることはできないのだろうか。会社は、給料や残業代を支払わなければならないのだろうか。松村龍一弁護士に聞いた。

●そもそも仕事を与えられていないので、クビにすることは難しい

「当然ですが、仕事をしない従業員に対しては給料・残業代を支払う必要はありませんし、クビにすることも可能です。しかし『仕事をしない』というためには会社が『仕事を与える』必要があります。今回のケースでは、周囲がその従業員に仕事を与えていないということなので、少し難しい問題が生じます」

松村弁護士はこのように述べる。

「雇用契約というのは、従業員が会社に対して一定の時間(勤務時間)を提供し、会社はその時間に指揮命令をする(仕事をさせる)ことが出来るという、いわば時間の売買契約のようなものです。

そのため、従業員が勤務時間に出社して仕事ができる状態なのにもかかわらず、会社が仕事を与えない場合には、会社は従業員に対して仕事をさせる権利を放棄していると判断される可能性があります。

この場合には、会社は社員に給料を支払わなければなりません。そもそも仕事を与えられていないわけですから、仕事をしないことを理由にクビにすることもできません」

今回のケースでも、クビにすることは難しいのだろうか。

「そうですね。新人従業員の能力や、やる気に問題があるのかもしれませんが、会社としては何らかの仕事を命じるべきです。

その上で、従業員が与えた仕事をこなせないようであれば、その仕事ぶりを理由に会社を辞めてもらうことを検討した方がいいでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
松村 龍一(まつむら・りゅういち)弁護士
早稲田大学工学部卒業 北海学園大学法科大学院修了
2011年に法律事務所テオリアを設立し着手金無料の完全成功報酬で残業代請求など多くの労働問題を手がける。現在までに労働者側の代理人として企業から総額15億円以上の未払賃金等を回収した実績を持つ。

事務所名:法律事務所テオリア
事務所URL:http://zangyo-bengo.jp

会社で見放された「社内ニート」が漫画100冊持ち込み開き直り…クビにできるのか?