10月7日、8日、「ころあず」のニックネームで知られる人気声優の田所あずさが、「恵比寿LIQUIDROOM」にて、初の2DAYSワンマンライブを行った。本稿では、2日目の10月8日のライブの模様をレポートする。

ハードなナンバーの後に親しみやすいMC


【初の2DAYSワンマンで彼女が魅せた姿は。田所あずさライブレポ】の写真付き記事はこちら
約1000人のキャパを誇るライブハウス恵比寿LIQUIDROOM」は満員状態。そこに集まっている観客は、田所あずさが出てくるのを今か今かと待ち構えている。BGMにはハードなロック。開演時間が近づくに連れて、客席のボルテージは上がっていき、BGMに合わせて手拍子が起こり始める。

そして定刻の17時から4分ほど過ぎたとき、バックバンド「あずさ2号」のメンバーがステージに登場。ほどなくして、本日のメイン、田所あずさも姿を見せた。

1曲目はシングル曲である「純真Always」。この時点で客席のボルテージはMAX状態に。高く突き上げられた腕と大きな歓声。その状態をキープしたまま、2曲目「キセキ」、3曲目「Fighter's high」とハードなナンバーが続く。

普段「ころあず」と呼ばれている彼女は、どちらかというとほんわかとした雰囲気だ。しかし、ステージ上で歌っているのは「ころあず」ではない。「田所あずさ」というアーティスト。アップテンポで激しい曲を歌う彼女は、もはや声優ではない。

しかし、いったんMCになると「ころあず」の顔が見える。ハードなナンバーを終えた後、

「はーい、けがはダメですよー」

と明るい声で客席に語りかける彼女は、親しみやすい「ころあず」に戻る。この2面性こそ、アーティスト「田所あずさ」の魅力だろう。

生の「叫び」のような歌声が印象的な「世界が終わったあとの夜」

今回の2DAYは、初日が「OVERDRIVE」、2日目が「DISTORTION」というサブタイトルになっている。ギターの歪みの強さで言えば、OVERDRIVE<DISTORTION。もちろん、初日よりも2日目のほうが、激しいセットリストになっている。

バックバンド「あずさ2号」は、この2DAYSからギターが2人体制に。より分厚く激しいサウンドとなった。それに負けないように、田所あずさは時には激しく、時には伸びやかに歌い上げる。

6曲目の「アンソリティア」は、彼女自身初の作詞作曲を担当。それだけに思い入れは強いようで、MCでもその想いを語っていた。

圧巻だったのは、8曲目の「世界が終わったあとの夜」。2ndアルバム「It's my CUE.」のシークレットライブにおいても、ファンから人気ナンバーワンだった曲だ。バラード調で始まる曲だが、途中から重いハードな曲調に代わり、普段の彼女からは想像できない、「叫び」に近いハイトーンボイスがとても印象的。それは生の歌声でも同じ。より彼女のリアルな姿が見えた気がした。

9曲目からはバンドメンバー紹介をはさみながら、最後までノンストップ。ロック色が強まった2ndアルバムから立て続けに5曲。髪を振り乱し、バンドが紡ぎ出すグルーブに身を委ねるように歌う彼女は、僕の想像を遥かに超えてロックアーティストだった。

2017年、全国ツアーが決定!

アンコールは、2ndアルバムの1曲目「Come on,A-Z!!(Before the CUE)」と2曲目「It's my CUE.」。2ndアルバムの挨拶的な曲で、明るくノリのよい2曲で、客席の熱は再び上昇。1000人のうねりが、客席からステージ上に襲いかかっていくような感覚があった。

そしてここで、重大発表が。来年から全国8ヶ所のツアー「Azusa Tadokoro LIVE 2017〜DilEMmA〜」が決定したということ。もちろん客席は大盛り上がりだ。

日程は以下の通り。

2017年4月9日(日) 茨城 水戸ライトハウス
2017年4月15日(土) 広島 広島セカンド・クラッチ
2017年4月16日(日) 福岡 DRUM LOGOS
2017年4月22日(土) 大阪 UMEDA AKASO
2017年4月23日(日) 愛知 ボトムライン
2017年4月28日(金) 北海道 KRAPS HALL
2017年4月30日(日) 宮城 仙台Darwin
2017年5月4日(木・祝) 東京 EXシアター六本木

茨城県出身の彼女にとって、茨城でのソロライブは感慨深いものがあるだろう。そして、初となる全国ツアー。いったいどんなライブを見せてくれるのだろうか。

平均を超えた存在に向かう「田所あずさ

1stアルバム「Beyond Myself!」が、どちらかというとポップでバラエティに富んだ楽曲が収められた、「声優・田所あずさ」の挨拶的なアルバムだとしたら、2ndアルバム「It's my CUE.」は、ハードなロックナンバーを中心とした「アーティスト・田所あずさ」の所信表明のようなアルバムだ。

個人的に、以前から彼女はハードなナンバーのほうが声質に合っていると感じていたが、このライブを見て確信した。田所あずさには、ハードなロックがよく似合う。そして、マイナーコードもよく似合う。

MCで、「アンソリティア」を作曲するときも「メロディをもっと暗くしたいばかり言っていた」と語っていた。そう、田所あずさの「リアル」は、ハードなマイナーコードにあるのだ。

彼女が作詞した「spit out」にこんな歌詞がある。

ねぇ 平均的な存在で終わらせたくないと臨んだはずだから
ねぇ 単純な言葉で表さないで

田所あずさを「声優」や「アーティスト」という言葉では表せないのかもしれない。肩書のない「田所あずさ」という平均を超えた存在になることを、彼女は望んでいるのだろうか。

セットリスト
1.純真Always
2.キセキ
3.Fighter's high
4.あおぞら
5.Straight Forward
6.アンソリティア
7.Cherish
8.世界が終わった後の夜
9.孤独な惑星
10.ALERT from THE END
11.英雄なんていない
12.spit out
13.1HOPE SNIPER
--アンコール--
1. Come on,A-Z!!(Before the CUE)
2.It's my CUE.
3.Boom!Boom!


>>田所あずさホームページ
>>田所あずさ オフィシャルブログ「不安でしょうがないっ!」

[文=三浦一紀]