2006年12月12日に『ニコニコ動画(仮)』がスタートしてから間もなく10年!

数々のアイドルやクリエイターなどを生み出し、視聴者をPCの前に釘づけにしたオバケコンテンツの誕生秘話と当時の熱気をインタビューでプレイバック!

第1弾・川上量生、第2弾・戀塚昭彦、第3弾・小林幸子に続き、巧みなトーク術でかつて人気ゲーム実況プレイヤーのひとりだったルーツ氏。今は漫画家として活躍中も、ブレイクのきっかけはニコ動だった!

■ユーザーの想像で高学歴イケメンに

―なぜ実況プレイヤーに?

ルーツ 最初期の頃ってゲーム実況者が5人くらいしかいなくて、僕はそこまでゲーマーでもなかったんですけど、これなら自分でもできるかなって(笑)。

―ニコニコっぽいですね。すぐに評判になったんですか?

ルーツ いえ、最初に始めた頃は5000再生くらい。『クロノ・トリガー』を実況しているときに、ほかの実況プレイヤーさんが動画内で僕のことを紹介してくれて、そこから平均で3万再生くらいに伸びましたね。

―紹介し合うような文化はよくあった?

ルーツ いやいや、むしろ最初期はタブーで。当時コメントは子供しかいなかったから、「知らないやつの名前出すな!」「知らないとかにわか」みたいに言い合って荒れちゃうから。

―ああ、ありますね。コメント内でのけんか(苦笑)。

ルーツ ほかにも別の人がプレイしたゲームはやっちゃダメとか、あと画質は悪いほうがいいとかもありました。運営に課金しないで汚い動画を編集なしで、それでいてなるべく長時間上げるのがアウトローでカッコいいみたいな風潮で(笑)。

―当時は一応違法行為でしたからね。でも人気実況者になったら女子からモテそうですが。

ルーツ それがオモシロくて、最初は顔出しなしだからみんな勝手にイケメンだと思って、女のコとか僕のことを想像でイケメン風な絵に描いたりしてくれたんですよ。でも顔出しした瞬間、クモの子を散らすように誰も描いてくれなくなって(笑)。

―幻想だったと(笑)。

ルーツ あとは適当に経済とか難しそうな話をすると、どうやら高学歴らしいみたいな噂が広まって。「ルーツは早稲田だよ」「いや、慶應だ!」なんて誤情報が錯綜(さくそう)してました。

―ネットの怖さですね。そして今は漫画家。なぜ?

ルーツ 実況自体あんまり続ける気はなくて、昔から漫画家になりたかったんです。ただ、22歳で就活する時期になったとき、このまま社会人にはなりたくなかったから漫画家になるためにゲーム実況の知名度を利用するだけ利用しようと(ニヤリ)。

―そのタイミングで出版社から声がかかったんですね。

ルーツ そうですね。幻冬舎さんでウェブ漫画を描かせてもらってて、それを自主製作アニメ化してニコ動に投稿したらバズったんです。そしたら出版社さんが「ルーツは数字を持ってる」ってことで、『月刊コミックバーズ』でも連載させてもらって、単行本も発売できました。

―まさに漫画家の“ルーツ”はニコ動実況動画ですね。

ルーツ ありがたいですけど、あれは若気の至り。恥ずかしいから動画全部削除したい(笑)。

◆続編⇒「ニコニコ動画」からアイドルデビューした愛川こずえ 「ニコニコがなかったらたぶんニートになってた(笑)」

●ルーツ







大学在学中に実況デビュー。その後、漫画家として活動を始め、『するめいか』を連載。アニメ化もされた『てーきゅう』では原作を担当した

(取材・文/武松佑季(A4studio) 撮影/下城英悟)

「ニコニコ動画」でブレイク後、漫画家デビューのルーツ「ニコ動での知名度を利用しました(笑)」