ツイッターは納豆だ。
“要するに、誰かが出たときについていきやすい―まさに納豆を一粒つまむと、粘りが次の豆につながるようなものです。”
ネット上だとコピーが簡単だ。だから、何か面白い行動を起こした人がいれば、すぐに真似できる。
応援のための情報拡散も簡単だ。ツイッターならリツイートするだけ、たったのクリック2回だ。
“納豆は200回ぐらいかき混ぜるとグルタミン酸が出てきておいしくなります。ソーシャルメディアも同じで、たくさんかき混ぜればいいのです。”
むかしは、この「かき混ぜる」が難しかった。何かやろうと思っても、身近に仲間がいない。出る杭は打たれてた。
ソーシャルメディア上でいろんな人に「こういうことを考えているのだけど、手伝ってくれないか」「多くの人にこんな情報あるって伝えて」と声をかけたり、「こんなことしようよ」と働きかけたり、ぐるぐるかき混ぜればかき混ぜるほど、粘りけが出てくる。すると、箸でつまんだ(飛び出した)ときについてくる納豆が多くなる―これが僕のツイッター=納豆論です。”
出る杭が、どんどん仲間を呼び起こせるようになってきたのだ。
だから、ソーシャルメディアの本質は、「誰でも情報を発信できるようになった」なんて陳腐なレベルではなくて、同じ気持ちや意志を持つ人とつながって、「動員」することが可能になった、「動員の革命」なのだ。
以上のような視点を出発点にして、ソーシャルメディアの現在や可能性を語った本が、津田大介『動員の革命』だ。

全4章構成で、それぞれの章が「解説編」「対話編」で構成される。


第1章 ソーシャルメディア×革命
アラブの春」を起こした真の力とは
第1章 対話編 モーリー・ロバートソン×津田大介
ソーシャルメディアで世界は変わったか
第2章 ソーシャルメディア×情報発信
ムーブメントをおこすために必要なこと
第2章 対話編 宇川直宏×津田大介
ソーシャルメディア時代のスーパースターとは
第3章 ソーシャルメディア×震災
東北復興のためにできること
第4章 ソーシャルメディア×未来
新しいマネタイズの方法とは?
第4章 対話編 家入一真×津田大介
ソーシャルメディアの力でマネタイズする
特別鼎談 中沢新一×いとうせいこう×津田大介
「動員」で世の中を変えていこう

第二章に、“5要素を上手く使って「動員」を起こせ!”という項がある。
ぐはーっと要約して紹介しよう。

1:リアルタイムから速報性と伝播力
ソーシャルメディアは、「今情報を流して、どれだけ早く反応があるか」という世界だ!
2:共感・協調からテレパシーのように共有し合う
自分内速報をどんどん流すと、自分のリアルタイムな感情がネット上にあふれ、個々の思考や喜怒哀楽の感情をテレパシーのように、共有し合うSFのような世界になってくる!
3:リンク~具体的行動につながる
感情を大勢と共有すると、具体的行動が促進される。ムーブメントにつながっていく。例として、チュニジアエジプトリビアの革命が挙げられる。ソーシャルメディアの速報性がきっかけで政府への怒りの感情の輪が拡がってデモに参加するという流れ。
4:オープン~参加も離脱も簡単
情報が誰でも見られるオープンな環境になっていて、参加するのも離脱も簡単であるという特性。ツイッターならハッシュタグ(#)をつけて書き込みするだけでコミュニティに参加する。いままでのように組織に一度入るとしがらみが生じて抜け出しにくいというような障壁がないから、気楽に参加できる。敷居の低いコミュニティを形成できる。
5:プロセス~細切れの情報が興味を喚起する
ソーシャルメディアは発信を細切れにせざるをえない。だから、細分化したプロセスを、完成までどのような変移をたどったかを見せることに力点が置かれる。完成したものだけではなくて、どういうふうに進んできたか、どういう議論を経たのか「見える化」される。コミュニティやプロジェクトの透明性が高くなる。

『動員の革命』は、これらの特性を活かして動員した例や、実際に行動している人との対話から、その未来を描きだす。
ゴージャスミンクの毛皮を着てデモをしたジャーナリストが警察車両に突っ込まれる動画が拡散したことで、毛皮のコートを着るのがデモの目玉の一つになった「ミンク革命」
オキュパイ・ウォールストリートでの「ヒューマン・マイク」。
寄付とNPOがブームになる、という予見。
有料メルマガは情報のファンクラブであるという論。
デモについての対話の中で出てくる“ネットのなかだけで意見を言い合っていると、自分中心の目で世界を見ているんですよね。だけど、デモに出ると、街がまわりにあるから、自分がどれだけ小さい存在かが分かる。実は社会から見えた自分の「見える化」もしている”といういとうせいこうの発言。
などなど、『動員の革命』は新書で手軽に読めるうえに、たくさんの刺激的な具体例とフレーズが飛び出すソーシャルメディアを使いこなす未来のための一冊。(米光一成

原稿2本書いて、どちらがいいか相談したら、激論になったので、なら2本載せてーってお願いしてみました。同じ媒体に同じ人が書いた同じ本の違うレビューが2本出現します。もう1本は、こちらスルーしない有吉はわら人形!『動員の革命』。

『動員の革命 ソーシャルメディアは何を変えたのか』(津田大介 中公新書ラクレ)帯文“今注目! ネット・ジャーナリズム界の寵児/恐れず理解し、使いこなせ! あなたは、この革命を体感しているか?”