12月初旬、佐川急便の配達員が荷物を投げたり蹴ったりしている様子の動画がYouTubeに投稿され、話題となった。
その後、佐川急便が自社の配達員であることを認め、配達員の男性本人が「いろいろなイライラが重なっていた」と話していることも報じられている。

「ドアを叩かれ続け怖くなって出た」
一部の宅配便業者のテキトーな仕事ぶりに対する怒り・戸惑いの声を耳にする機会は、非常に多い。

都内の30代主婦は声を荒げてこんな経験を話す。
「小学2年生の娘が一人で留守番しているとき、『危ないから、誰か来ても、出なくて良いからね』と伝えておいたんです。でも、帰宅してみたら、玄関に大きな荷物が置いてあって。ビックリして娘に聞くと、ドアを激しく叩かれ続けていて、怖くなって出たんだって。たぶん家の中の電気が見えたとかだろうし、再配達が面倒くさいのもわかるけど、小さい子が一人で留守番しているときは、防犯上危険なので、勘弁してほしいです」

業者側からしてみれば、家の中に人がいる気配があるのに、渡すことができず、再配達となるのは、なんとも口惜しいことだろう。
なんとかして置いて帰りたい気持ちはわかるが、かといって、迷惑な訪問販売や勧誘、幼い子や女性を狙った犯罪も多いいま、「家に一人でいるときは出なくて良い」と留守番の子に母親が指示するのは、当然だとは思う。

また、30~40代主婦たちは以下の目撃談や経験談を話してくれた。

「うちのマンションは坂道にあるんだけど、台車に荷物を大量にのせ、スピードを出して台車を転がしていくから、途中で荷物を2~3個落としている姿をよく見かける」

「台車で荷物を勢いよく運んでいく際に、店の前にとめてあった自転車を何台も倒していく姿も見た」

「マンションでエレベーターを待っていたら、扉が開いた瞬間に、台車を押しながら走って降りようとする宅配便業者と衝突したことがある。急いでいるのはわかるけど、かなり危ないと思う」

「大量の荷物を台車で運んでいる宅配便業者さん。マンションのエレベーターの乗り降りのとき、いつも開閉ボタンをマンションの住人に押させて、自分が真っ先に乗り降りするのはどうなんだろうとよく思う」

「ほとんどピンポンダッシュだった」
また、「たまたまトイレに入っているときなどにインターフォンが鳴り、急いで出たけど、間に合わず、再配達になってしまった」などと嘆く人は多い。

なかには、「家にいるのに、いつでも不在連絡票を置いて行かれる」と嘆くケースもある。40代の自営業の女性は言う。
「基本的に家にずっといるのに、なぜか気づくと不在連絡票が入っていることがたびたびある。『インターフォンが聞こえなかったのかな』と思い、音を確かめたけど、異常はないし……。ある日、荷物が届く予定のときにインターフォンを聞き逃さないよう、自室のドアを開けっぱなしにしていたら、ドアポケットがカタンとなる音が。それでダッシュで出たのに、すでに不在連絡票がつっこまれていて、ドアを開けると、エレベーターで去っていく宅配業者さんの後ろ姿だけ見えた」

また、別の日には、玄関近くにたまたまいたときにインターフォンが鳴り、ドアを開けたが、ダッシュで下りのエレベーターに乗りこむ宅配便業者を見たという。「ほとんどピンポンダッシュだった」そう。
いずれのときも、宅配便業者は荷物を持っておらず、手ぶらに見えたらしい。

このマンションには1階に管理人がいるため、おそらくエントランス付近に荷物を置いておき、不在連絡票だけ訪問先のドアに突っ込んでいくことを繰り返していたのだろうという。

増大するドライバーの負担
近年はネット通販の普及により、宅配便業者の取扱件数が増え、また、「再配達」の手間により、ドライバーの負担が増大し、疲弊状態になっていることが問題視されている。
自分などもネット通販をかなり利用しているだけに、特に不在連絡票を受け取ったときなどは申し訳ない気持ちになることがある。

少しでも宅配便業者の負担を減らすために、個人としては、時間指定できる荷物であれば、自宅にいる時間を指定して確実に受け取ること、また、マンションとしては「宅配ボックス」を設置することなどは必要だろう。

でも、急ぐから、忙しいから、疲れているからといって、荷物を平気で落としたり、人やモノに衝突したり、あらかじめ用意した不在連絡票だけ置いていくのはどうしたものか。
ネット通販がますます増える今後、流通システムの見直しが必要な時期に来ているのかもしれない。
(田幸和歌子)

宅配テキトー問題、今後ますます深刻になっていきそうです(画像はイメージです)。