【連載】聖地巡礼さんぽ~あの作品の街を歩く~Vol.26

【写真を見る】幼いころは仲の良かったすず子と千夏(上池袋さくら公園)

漫画や映画、ドラマなど、人気作品の舞台となった街を散策し、“住みたい街”としての魅力を深堀していく本連載。ここからみんなの“住みたい街”が見つかるかも?

第26回は、16年12月まで放送されていたアニメ「Lostorage incited WIXOSS」の舞台となった池袋エリアをピックアップ。

トレーディングカードゲームWIXOSS」をもとにした、「selector」に続く新シリーズ。小学2年まで池袋で過ごし、父親の転勤に合わせて転校を繰り返していた穂村すず子は、高校2年へ進級する時、8年ぶりに池袋へ帰ってくる。

しかし、クラスになじめない彼女は、クラスメイトがプレイしていた「WIXOSS」を覚えれば友達ができるかもしれないと、カードデッキを購入。その中の1枚のカードに描かれた少女が声を出して動き出したことで、彼女は特別な空間で行われる、過酷な“セレクターバトル”に巻き込まれていく。今回は主人公のすず子が住む、池袋のスポットとともに、街の魅力を紹介する。

■ 「上池袋さくら公園」

エンディングで、すず子と彼女の幼馴染の千夏が、幼いころの回想として水遊びをしているのがこの上池袋さくら公園。幼いころの二人がこの近くに住んでいたため、この近くの踏切なども描かれている。しかし、高校生になった二人は、すれ違いにより次第に敵対するようになる。

JR池袋電車区と隣接する、旧国鉄の用地約5000平方mの広さを誇る公園。住宅地の中にあるとは思えないほど広々とした公園で、アニメに描かれていた水遊びができる広場のほか、アスレチック遊具やキャッチボール場なども備えており、近所に住む老若男女が集える場所になっている。また、上池袋図書館が隣接しており、天気がよければ公園のベンチで読書をする人の姿も見られる。

■ 「サンシャイン60通り」

家族とけんかした千夏が家を飛び出し、この通りに訪れるシーンをはじめ、作中でもたびたび登場する、池袋のメインストリート。にぎやかな繁華街の背景が、千夏の悲しい感情をより引き立たせるなど、この作品の印象的なスポットの一つだ。

通りの名前にもなっている、池袋随一のエンタメスポットであるサンシャインシティをはじめ、池袋HUMAXシネマズといった映画館や、ユニクロやアメリカンイーグル アウトフィッターズといったアパレルショップ、バラエティ豊かな飲食店など、多彩な店が立ち並んでおり、毎日多くの人たちでにぎわっている。

■ 「Racines FARM to PARK」

8話で、すず子が高校の後輩のはんなからWIXOSSのトレーニングをしてもらっていたのが、南池袋公園内にあるRacines FARM to PARKのテラス席。アニメでは、トーレニングが終わった後に、すず子が手作りしたチョコバナナマフィンを食べている。

池袋の人気ビストロ「Racines」の別業態として、南池袋公園のリニューアルに合わせて16年4月にオープン。“1日おいしいものが食べられる”をコンセプトに、ブレックファースト、ランチ、カフェ、ディナーとメニューを変えているのが特徴。パンは、系列のブーランジェリーで焼いたものを使用しているほか、野菜は契約農家から仕入れるなどのこだわりが詰まったメニューはどれも絶品だ。

店長の柳岡律子さんは「この店は、人と街のコミュニティをつなぐために、南池袋公園の中にオープンしました。店が地域の人たちの憩いの場となり、そこからつながりが広がっていってくれたらうれしいですね」と話してくれた。

■ 「池袋平和通り商店街」

5話で、2人組の男にナンパされていた千夏が、同級生の白井とともに、男たちから走って逃げ込んだのが、この商店街の設定。そこで千夏は白井から、セレクターバトルで負けた時の秘密について知らされる。

1946年に発足し、60年の歴史を誇る「池袋平和通り商店街」。1989年モール化し、現在は90以上の店が並び、明るい雰囲気の商店街として、地元の人たちから愛されている。また、商店街の中に「池袋の森」という公園があり、そこにアゲハチョウトンボを羽化させて飛ばそうという、地域活性化のプロジェクトを行っている。池袋駅から5分ほどの距離ながらも、季節になると、たくさんのきれいなチョウトンボが飛び交うという、都心では珍しい風景も見られる。

理事長の岸本明さんは「ゆくゆくは、それぞれの店の前にプランターを置き、そこにチョウトンボが止まる風景を生み出したいんです。池袋という都会なのに、オープンカフェからそういう景色が見られたら話題にもなるし、素敵だと思うんです」と今後の展望を話してくれた。

■ 「池袋西口公園」

4話でセレクターバトルの真相を探るため、バトルのブッキングをするブッキングメーカーを探す、すず子とはんな。そんな二人がフックメーカーの里見と遭遇したシーンをはじめ、アニメ内でたびたびこの公園が描かれている。

豊島師範学校跡地にできた公園は、待ち合わせ場所としても使われる平和の像や、噴水なども備えた開放的な空間が広がる。東京芸術劇場が隣接しており、周囲のオブジェなどによりアートな雰囲気を醸し出している。夜になると噴水や公園のオブジェがライトアップされ、昼間とは一味異なった幻想的な景観に。

また、駅の目の前という便利な場所にあり、公園内にはステージも備えているため、ふくろ祭りや池袋ジャズフェスティバルをはじめ、四季折々、さまざまなイベントがこの公園を中心に行われる。

「舞台となる場所を選ぶうえでは、シリーズ通しての作品感として、大都会の片隅で孤独に戦うアンチヒロイックな雰囲気があり、視覚的にシンボリックな建造物が多く、誰もが知っている有名な場所ということが基本になっています。そこにならい、前シリーズが新宿だったので、今回は池袋を舞台に選びました」(作品プロデューサーの川瀬浩平さん)。

繁華街らしいにぎかな街並みながら、少し駅から離れれば住宅街もあるという、リアルな生活が感じられる池袋は、実在のカードゲームをもとにした、過酷なバトルというファンタジーと現実が同居するこの作品の世界ともリンクする。

Lostorage incited WIXOSS」に登場したスポットを巡って、彼女たちが繰り広げたバトルの追体験をしてみてはいかが。【東京ウォーカー/小松孝裕】

第27弾は1月中旬配信予定

カードの中のしゃべる少女・ルリグのリルと出会ったことで、すず子はセレクターバトルへと身を投じることになる