少年法の適用年齢を現行の「20歳未満」から「18歳未満」に引き下げるべきかどうかの問題について、東京の弁護士会(東京、第一東京、第二東京)が1月10日、適用年齢を引き下げた場合の影響について考えるシンポジウムを開催した。精神科医や少年の自立支援施設の職員、少年院経験者らが登壇し、それぞれの立場から問題意識を語った。

少年法の適用年齢の引き下げについて、具体的な改正案などは示されていないが、法務省が検討を進めている。2016年12月下旬には、省内の勉強会の報告書を公表。「18歳、19歳が立ち直るためにきめ細かな処遇が行われなくなる」「選挙権など他の制度との関係で対象年齢の整合性をとったほうが国民にはわかりやすい」など賛否さまざまな意見を紹介している段階で、まだ議論はまとまっていない。

●「少年が立ち直る機能がなくなってしまう」

少年法の適用年齢を「18歳未満」に引き下げるということは、18歳と19歳が罪を犯した場合、通常の刑事手続を経て、懲役など通常の刑罰が科されるということだ。シンポジウムに登壇した精神科医の高岡健氏は、「刑事施設で刑罰だけが与えられ、治療・更生からどんどん遠ざけられる」と危機感を示した。

少年法の対象となるのは、万引きなどの比較的軽い事件が多い。(18歳と19歳の)こうした事件が全て刑法で扱われることになるとどうなるのか。これまでは、こうした事件が家庭裁判所で扱われることによって、家族関係の修復やサポートする人との出会いなどによって、社会復帰や社会参加の道が切り開かれてきた。それが『罰金刑』や『起訴猶予』といった形式的な処遇だけがあって、立ち直るための機能がなくなってしまうのではないか」。

●「少年は動物じゃない」

少年院に入院した経験があり、現在は水道の設備工事などで生計を立てる大山一誠さん(37)は、自身の体験から18歳と19歳にとっての少年院の役割を語った。

母子家庭で育った大山さんは、貧困と母の暴力などが原因で非行に走り、18歳の時に傷害事件で千葉県の八街(やちまた)少年院に入院した。当時は「学もない自分は、この先暴力団員にでもなるしかない」と考えていたそうだ。

少年院は、規律が厳しく、行動訓練や筋トレなど「血尿が出るほど辛かった」という。その一方で、漢字検定など教育の機会を与えられ「読み書きもろくにできなかった自分が、読み書きができるようになった。本も読むようになった」として、少年院を「自分が変わるきっかけになった場所」「学校とお寺と自衛隊が合わさったような場所」と表現した。

適用年齢を下げ、厳罰化の方向で議論が進んでいることについて、「少年は動物じゃない。教育でどうにか犯罪を防ぐ方向に、社会がなって欲しい」と訴えた。

(弁護士ドットコムニュース)

少年院は「学校と寺と自衛隊が合わさった場所」少年法適用年齢を議論、経験者が語る