小学校の先生が「デスノートに名前を書くぞ」と児童に発言したとして、学校側が保護者に対し謝罪していたというニュースが話題になっている。発言をした30代の男性常勤講師は、校長から厳重注意を受けている。

この小学校は福島県田村市にある。市の教育委員会によると、講師は昨年11月下旬と12月上旬の授業中、集中力を欠いていた4年生と6年生の各2人に、授業用タブレットの画面に「デスノート」の表紙を表示させ、「名前を書くぞ」と発言したという。

ネットでは学校の謝罪対応への疑問が噴出。「閻魔様に舌を抜かれる」や「なまはげが来る」とどう違うのか、などの声もあがっている。弁護士ドットコムニュースの電話取材に対し、田村市教育委員会は次のように回答した。

「『デスノート』という、名前を書けば『死』に至るものを使った、『死』を連想させる指導をした、ということを問題視した。今の時代、教員に対する期待は大きい。軽はずみな発言だったと反省し、再発防止に力を入れたい」

●いわゆる「モンペ」案件ではないという

市教委によると、本件では保護者らから強いクレームがあったわけではなく、学校が率先して謝罪をしたという。

謝罪に至る経緯は次の通り。該当の発言からしばらくたった12月27日、児童の担任教師が保護者数名と立ち話をしているときに、「デスノート」発言がちょっとした話題になった。担任はその日のうちに教頭に報告。29日に校長が講師を厳重注意し、保護者に謝罪した。

謝罪の席上、保護者から「注意というより威嚇ではないのか」といった指摘はあったものの、大きく問題視する様子ではなかったという。いわゆる「モンスターペアレント」案件ではないようだ。

学校が謝罪に至った理由は、デスノートが「死」を連想させるからだという。

「子どもたちに『生きる力』を身につけさせるのが私たちの仕事。講師本人は『閻魔様』や『雷様』『なまはげ』などと同じレベルで言ってしまったようだが、『デスノート』を用いることで、子どもたちを不安がらせてしまった」

一方で、「あれをやったらダメ、これをやったらダメという風に、教員が萎縮することは本意ではない」「報道の後、一般の方から励ましの電話もあったが、『デスノート』発言に対し、厳しい声が多かった」と、苦悩が垣間見える発言もあった。

●「言葉狩り」的な批判ではなく、建設的な議論を

今回の件に法的な問題はあるのだろうか。いじめなど、学校問題にくわしい舟橋和宏弁護士は、次のように話す。

「今回の発言が、刑法の『脅迫罪』に当たるかどうかですが、デスノートに名前を書かれて死んでしまうといったことは、一般的に人々が恐れるというものでもなく、刑法上の責任を負う可能性はないと考えられます。

死を連想させるということで、不適切な発言であったという意見もあるようですが、デスノートという言葉のみで、発言が不適切とするならば、それは『言葉狩り』といわれても仕方ないと思います。

現場の先生方も世代の異なる生徒とのコミュニケーションに四苦八苦しています。なぜ、そのような発言があったのか、ただ批判するだけでなく、その背景事情まで見て、より適切な指導はどうすればいいのか考えていきたいですね」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
舟橋 和宏(ふなばし・かずひろ)弁護士
学校内トラブル(いじめ、停学退学問題、学校事故など)を専門的に取り扱うほか、いじめ・非行予防授業も精力的に行っている。その他にはインターネットトラブル(SNS上のトラブル、発信者情報開示請求など)等を扱っている。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/

小学校講師、児童に「デスノートに名前書くぞ」発言で学校が謝罪…言葉狩りか?