カジノ解禁をふくめた統合型リゾート(IR)推進法が成立し、カジノ実現に向けた動きが本格化している中、民間シンクタンク「国際カジノ研究所」の所長でカジノ推進論をとなえている木曽崇氏と、静岡大学人文社会科学部教授でカジノ反対運動を展開している鳥畑与一氏が2月28日、東京・有楽町の外国特派員協会で、そろって記者会見を開いた。

昨年12月にIR推進法が成立して以降も、国内では「カジノ反対」の声が根強く残っており、読売新聞など大手メディアの世論調査でも、反対の意見が多いという結果が明らかになっている。この日の会見の質疑応答では、「こうした状況について、どう考えるか?」という質問があり、賛成・反対の双方の論客は、対照的な答えを出した。

●「推進派にとっても、青天の霹靂だった」

木曽氏は、反対の意見が多い要因の1つとして、昨年末に2週間という短い期間の審議で法案が通ったことが大きいことを指摘した。「われわれ推進派にとっても、青天の霹靂(へきれき)以外なにもでもない。反対の意見も一つの正論であって、それに対して、推進派は真摯に答える義務がある。その機会が失われたことが、世論がマイナスに動いている要因だ」と述べた。

一方、鳥畑氏は「反対運動に参加しはじめてから、周りで、実に多くの人が『私の家族が…私の友人が…私の知り合いが、ギャンブルで身を滅ぼした』という話を聞いた。ギャンブル依存症は、人を巻き込む病気で、実に多くの国民がいかにギャンブルが地域を壊してきたかということを知っている。だから、反対の世論が強い」と答えた。

●「カジノのコマーシャルが流れと、国民の意識は変えられていく」

実際にカジノが設置されることになると、現在は「カジノ反対」が多い世論も変わっていくのだろうか。

木曽氏は「おそらく世論が少しずつ変わっていくのは間違いない」「メディアもだんだんと、より個別の具体的問題点を指摘して、その部分を改善させるという建設的な論調に変わってきている。少しずつ、国民の考え方もよりプロダクティブな方向に動いていくと思う」と述べた。

鳥畑氏は、日本より一足先にカジノを解禁したシンガポールで、カジノのコマーシャルが禁止されていることをあげながら、「日本でも、今のパチンコと同じように、カジノのコマーシャルが流されると、国民の意識は大きく変えられていく」と指摘した。そのうえで、ギャンブル依存症の怖さを含めて、「国民の認識に基づいた厳しい規制が将来的に必要だ」と訴えた。

(弁護士ドットコムニュース)

「なぜ、世論はカジノ反対が多いのか?」推進・反対の論客がそろって記者会見