今を遡ること、10年前。2007年に放映された数多くのTVアニメ。思い返せばなんと名作の多いことか…!

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これまでにCharacter JAPANでは、アニメ10周年を記念した特集を展開していますが、今回は「アニソン」をテーマに振り返ってみようというのが本稿。アニソン大好きライターである筆者が厳選を重ね、当時の大ヒット曲や隠れた名曲から10曲をピックアップ。

いまだ色褪せることない魅力をご紹介していきますよ!

もってけ!セーラーふく』(『らき☆すた』OP主題歌)

2007年を代表する大ヒットアニソンといえば、やはり『もってけ!セーラーふく』でしょう。

京都アニメーション制作の『らき☆すた』のオープニング主題歌としてテレビで放映されるやいなや、そのファンキーかつハイテンションな歌とサウンドがアニメファンの心をガッチリと掴みました。

当時のニコニコ動画人気も相まり、大量の「踊ってみた」動画や、MAD動画、アマチュアミュージシャンによるリミックス曲がアップされ、ネット上を大いに賑わせました。また、その流れを受けて、公式のリミックスアルバムがリリースされるなど、まさに一時代を築いた一曲です。

作詞は畑亜貴さん、作曲は神前暁MONACA)さん。前年に、同じく京都アニメーション制作の『涼宮ハルヒの憂鬱』の劇中歌『God knows...』でも大ヒットを飛ばしている有名音楽クリエイターによるタッグが生み出した楽曲です。

神前さんのインタビューによると、この曲は、ミクスチャーロックバンドの「YKZ」(アニメ『R.O.D -THE TV-』のオープニングに曲が起用されたこともあるバンド。ヒップホップアーティストとの積極的な交流が特徴でした)を意識して曲作りを行っていたこと。

この後、神前さんは、スカパンクを取り入れた『SOMEONE ELSE』(『WORKING!!』OP曲)や、「ニューウェーヴ+スカ+ヘヴィメタルロシア歌謡」な『七つの海よりキミの海』(『波打際のむろみさん』OP曲)など、ユニークな楽曲を次々にリリースしますが、そんな神前さんのクロスオーヴァー(交配)路線な音作りに繋がる代表曲として絶対にチェックしておくべきナンバーです。

アンインストール』(『ぼくらの』OP主題歌)

ぼくらの』は、鬼頭莫宏先生が『月刊IKKI』誌での連載作をアニメ化した作品。その衝撃的なシナリオで、この年の話題を集めた作品の一つでした。

オープニング主題歌となったのが、声優やアニソン歌手への楽曲提供のほか、梶浦由記さんとの音楽ユニット「See-Saw」でも注目を集めた石川智晶さんによる『アンインストール』。

多重録音を駆使した重厚なコーラスによるイントロに始まり、美しも不穏なメロディが支配するサウンドとサビでリフレインされる「アンインストール」という歌詞がリスナーに強烈な印象を残します。

ぼくらの』の作品性を言語化したかのような、儚く、どこかペシミスティックな雰囲気が漂う歌詞も併せて、10年経った今になって聴き返してみても全く古びることがない、新鮮な感性で対峙をできる曲です。

楽曲全体に漂う不可思議なメロディには、石川さんが徐々に自身のサウンドに取り込んでいった民族音楽的なエッセンスの萌芽を感じられたりもします。未だに、新しい発見を与えてくれる楽曲です。

ミーナぽてまよ、そしてグレンラガン

『ビューティフル・ストーリー』(『月面兎兵器ミーナ』ED主題歌)

月面兎兵器ミーナ』は、フジテレビで放映されたドラマ版の『電車男』(もう、このキーワードの時点で圧倒的なノスタルジー!)に登場した劇中劇をベースにしたメディアミックス企画。

そのアニメ版でエンディング主題歌に使用されていた曲が『ビューティフル・ストーリー』でした。

歌うは、アニメの中で主人公「月城ミーナ/佃美奈」を演じた井上麻里奈さん。そして、作詞・作曲を手掛けたのは、「Perfume」「きゃりーぱみゅぱみゅ」のプロデュースで知られる中田ヤスタカさんです。

この曲は、中田ヤスタカらしいサウンドに仕上がっており、ピコピコしたテクノポップ井上麻里奈さんの声が乗る声優版エレクトロポップアニソンであり、そのキッチュでオシャレな電子音は、当時のアニメファンに大きな衝撃を与えました。

Perfume公共広告機構のCMに使用された『ポリリズム』で、お茶の間レベルの人気を得る、そのほんの少し前に、中田さんの音楽ワークとアニメカルチャーがクロスオーヴァーを起こしたアニソン、声ソンの特異点です。

片道きゃっちぼーる』(『ぽてまよ』OP主題歌)

ゼロ年代のアニソンシーンを振り返った際に、その時代性を物語る特徴の一つとして、パソコンの成人向け美少女ゲーム……所謂"エロゲー"出身の歌手による活躍が挙げられます。

KOTOKOさんや、川田まみさん、MELLさん、島みやえい子さんらを輩出した「I've」、佐藤ひろ美さんや榊原ゆいさんのような女性歌手、桃井はるこさんのユニット「UNDER17」などなど、ゼロ年代のアニソンを盛り上げた才能溢れるアーティストの名前を挙げ出すと枚挙に暇がありません。

この『片道きゃっちぼーる』を歌った「MOSAIC.WAV」も、美少女ゲーム文化圏と密接な関係にあったアーティストの一組です。

独創的な歌詞の数々を筆頭に、とことんテクノでポップなサウンドと「み~こ」さんの舌っ足らずアニメ声ヴォーカルが織り成す楽曲の数々は、「電波ソング」の代表格として、コアな人気を得ました。

片道きゃっちぼーる』もピコピコした音が可愛らしい、実にMOSAIC.WAVらしい一曲。当時のアキバカルチャーの熱狂的な盛り上がりの思い出と共に、永遠に色褪せないエヴァーグリーンな名曲です。

空色デイズ(『天元突破グレンラガン』OP主題歌)

こちらも2007年の大ヒット作『天元突破グレンラガン』より、中川翔子さんが歌う『空色デイズ』。こちらも語るに欠かせない一曲でしょう!

空色デイズ』は、中川さんの3枚目のシングルであり、ハードロックな曲調にチャレンジした楽曲です。それまでのアイドル歌謡路線から一点し、MV(ミュージックビデオ)での、ワイルドな衣装に身を包み、エレキギターを携えたしょこたんの姿も印象的でした。

何はなくとも疾走感が素晴らしいこの曲。ディストーションが効いたロックなギターサウンドは、ダイナミックなロボット戦がウリの『天元突破グレンラガン』のイメージにピッタリでしたね。

中川さんは、この曲で、この年の紅白歌合戦にも出場。2007年のアニソンとJ-POPを同時に代表するヒット曲です。

絶望先生みなみけご愁傷さま二ノ宮くん

『ユビキリ』(『ご愁傷さま二ノ宮くん』OP主題歌)

こちらも2007年度のテクノポップ系アニソンの名曲。富士見ファンタジア文庫から刊行されていた同名ライトノベルをアニメ化した『ご愁傷さま二ノ宮くん』のオープニングを飾った楽曲です。

アニメの中でそれぞれヒロインを演じた門脇舞以さんと沢城みゆきさんによるデュエットによる楽曲で、キラキラとしたメロディとお二方の歌声のシンクロが堪りません。

特に、サビのメロディの強さは、ただただ素晴らしいの一言。シンプルに高揚感があって、どこまでも上り詰めていくシンセイサイザーの音色は、多幸感に溢れています。

リズミカルに歌詞が綴られるAメロから、歌い上げるBメロへ、そして、門脇さんと沢城さんの伸びやかな歌声を堪能できるサビへと至る。

ポップソングとしてスタンダートな構成の曲ですが、各パートのメロディに力がある為、リスナーに強い印象を残す曲ですね。とことんガーリッシュな歌詞も素晴らしいの一言。

人として軸がぶれている』(『さよなら絶望先生』OP主題歌)

全3期のテレビシリーズとOVAで展開される人気作となった『さよなら絶望先生』。その第1期の放映開始も2007年のアニメ史を振り返る上で、大きなトピックです。

オープニング曲として使用された『人として軸がぶれている』は、「筋肉少女帯」のメンバーであり、作家やタレントなどのマルチな活動で知られる"オーケン"こと大槻ケンヂさんを中心にアニメの出演声優さんで結成された特別プロジェクト「大槻ケンヂと絶望少女達」による楽曲です。

文系人間にとってのカリスマであるオーケンの世界観と、ロジカルかつペシミスティックで捻くれた視点から世の中を斬る『さよなら絶望先生』のブラックな笑いは相性抜群で、この年のアニソン界でも特異な輝きを放ちました。

作曲を担当しているのは、大槻さんと"パンクチーム"「特撮」で活動を共にし、音楽面でのブレーンを務めるNARASAKIさん(COALTAR OF THE DEEPERS)。また、バックの演奏も、特撮のメンバーが担当をしています。

オーケンのアーティスト性がアニメと見事にリンクを果たした作品として、『さよなら絶望先生』は決して忘れることができません。

また、後に『はなまる幼稚園』や『デッドマン・ワンダーランド』『UN-GO』といった作品の音楽を手掛けることになるNARASAKIさんのアニメにおける初期ディスコグラフィーという点でも、強く記憶に留めておきたい楽曲です。

経験値上昇中☆』(『みなみけ』OP主題歌)

さよなら絶望先生』と同じく、2007年にテレビアニメ化され、以降、テレビシリーズが4期に渡って制作されるロングランシリーズとなったのが『みなみけ』です。

みなみけ』は、主人公である3姉妹の日常を、ちょっぴりシュールなギャグを交えて描くコメディ作品。アニメ本編の前に流れる「この物語は南家3姉妹の平凡な日常を淡々と描くものです。過度な期待はしないでくだい」という作品性を見事に体現した秀逸なコピーでも知られています。

アニメ版は、各シリーズ毎に製作会社や制作スタッフにバラつきがあり、その作風の違いも楽しめるアニメでした。

記念すべき第1期のオープニング主題歌であり、同作を代表する楽曲としてファンに愛されているのが、この『経験値上昇中☆』です。

主役を演じる佐藤利奈さん、井上麻里奈さん、茅原実里さんの3人が歌うこの曲は、とにかくポップで、聴いているだけで心が弾むような楽曲です。曲間に入れられる合いの手も楽しく、明るい作風なアニメ本編との相乗効果も抜群でした。

以降のシリーズでも、このお三方による声優ユニットみなみけ3姉妹」がオープニング主題歌を担当するフォーマットが定着。歌もキャラクターも長く愛される作品となりました。

ラストはウミショーもやしもん

DOLPHIN☆JET』(『ケンコー全裸系水泳部 ウミショー』OP主題歌)

はっとりみつる先生の漫画作品をアニメ化した『ケンコー全裸系水泳部 ウミショー』も2007年のアニメ作品です。

オープニングで彩音さんが歌う『DOLPHIN☆JET』は、お色気要素がふんだんに盛り込まれた陽性の作品に相応しく、とてもキャッチーなメロディが魅力の爽快なポップナンバー。特に、サビのメロディの強さは、この年のアニソンにおいても上位に食い込める強靭さを有しています。

浜崎あゆみさんの諸作品にも通ずるトランス感のある楽曲ですよね。

作詞、作曲は、志倉千代丸さん。志倉さんの楽曲らしく、とにかくサビの盛り上がりが凄い曲です。2007年の隠れた名アニソンとして、是非とも再評価をしていただければと思います。

Rocket』(『もやしもん』ED主題歌)

ここまで、アニソン歌手や声優さんの楽曲を中心に、2007年度のアニソンを紹介してきましたが、最後は少し趣向を変えて、ロックバンドが手掛けたアニメ主題歌のベストを挙げさせていただきます。

ノイタミナ枠で放送された『もやしもん』のエンディングで使用されていた「POLYSICS」の『Rocket』です。

80年代のニューウェーヴへの熱狂的な偏愛を、現代的にアップデートし、ハイテンションでアグレッシヴなロックサウンドを聴かせるPOLYSICSは、今年、結成20周年というメモリアルイヤーを迎えました。

ということは、10年前にこの曲をリリースした時点では、丁度折り返し地点の10周年だったわけで……メンバーチェンジや編成の変化を経ながらも、今もその歩みを止めない、否、進化をし続けるバンドの姿勢は、とにかく「カッコ良い!」としか言いようがありません。

Rocket』は、このバンドが持つポップフィーリングが炸裂したナンバーで、親しみやすいメロディとマニアックな感性が、非常にバランスの良い形で両立しています。

ラウドなバンドサウンドとキャッチーな電子音の融合や、とことんナンセンスながらも異常にキャッチーでリズミカルな歌詞など、POLYSICSの"らしさ"がギュッと濃縮されたナンバーです。

こうして2007年のアニソンを振り返ってみると、印象に残る楽曲を残した歌手や作曲家、バンドの皆さんが、10年経った今も現役で素晴らしい音楽をリスナーに届け続けてくれているのが、何とも嬉しく、そして頼もしい限り。まさに、時代を超えて愛される名曲たちですよね。