宅配便市場は、2008~09年度と2年連続で取り扱い荷物数が前年度比マイナスを記録。市場は踊り場に差しかかったと見られていたが、2010年度は2・6%増と反転し持ち直した。

 この主な理由は、業界トップのヤマト運輸と、2位の佐川急便の新しいサービスが奏効したことだとされている。宅配便市場が成熟化する中、この2社をはじめ、日本通運、福山通運などのプレイヤーが競い合っている。その中で、新サービスを投入したトップ2社がシェアを伸ばし、寡占化が一層進んだ格好だ。

【宅配便会社のランキング】 

 市場では体力に勝る2強の拡大は今後も続くと見られ、4位以下の企業は、対抗策を含めて生き残りをかけた厳しい戦いを強いられることになる。この宅配便の業界体質について、キャリコネの口コミに寄せられた各社の社員の声から探ってみた。



根性論がまかり通り、現場を軽視

 ヤマト運輸は、過疎地で地元スーパーと組み、買い物に行けないお年寄りなどに荷物を届ける事業や、通信販売で購入した家電製品に独自の保証制度を付けるサービスを展開。付加価値で潜在需要を掘り起こす新サービスを展開している。

 こうした事業の拡大を図る自社の問題点について、30代前半の男性社員は次のように指摘する。

 「人数が減っているにもかかわらず、新しい労働力を入れません。今いる人間で何とかしようと考え、いっさいの報酬や改善などは考えず、一契約社員に人事や庶務などの責任を押し付けます。一方で、残業は労働時間の観点から、一切禁止され、限られた時間の枠の中で増えた仕事量の消化を求められます」

 新しいサービスを展開するには何よりも社員のスキルや士気が大切にされるべきだが、シェアを維持することが第一目標となり、現場がおろそかになっているとしたら大きな問題だろう。

 一方、ライバルの佐川急便は、東京都内などの都心部に自転車や徒歩で近隣を配達する小規模店舗を集中出店するなど配達網の整備を進め、トップのヤマト追撃の体制を進めている。

 佐川急便の20代後半の男性社員は自社の社風について、こう言う。

 「佐川はドライバーに根性論を押しつける体質がまだ残っており、ドライバーのスキルに頼りすぎ。もう少しシステマティックでなければ将来性は厳しいと思う」

 どうやら、いまだに業界には根性論で社員に滅私奉公を求めている古い体質が残っているようだ。こうした悪弊は早急に改善する必要があるだろう。



配達業務だけでなく物販のノルマがある会社も

 一方、宅配便会社の中には、通常の配達業務以外に物販のノルマが課せられる企業もあるようだ。福山通運の20代後半の男性社員は、こう書き込んでいる。

 「冬はオレンジ類の販売がさかんでノルマがある。販売先がない場合は、社員が購入して実家や親戚の家に送ったりしていることも」

 拘束時間が長く、そうでなくても厳しい業務仕事環境のなかでこのようなノルマがあるのでは社員としてはたまったものではないだろう。

 宅配便業界は全国に倉庫やトラックなどの配送網、配達員などを用意が必要な「装置産業」だ。このため、規模を拡大すればするほど、経営効率は上がる。

 しかし、業界が成熟化を迎えた現在、あの手この手で需要を開拓しようとしても、現場への負荷が高まるばかりだ。宅配便業界の抜本的な改善には「現場(ドライバー)と管理職(事務職)に溝がある」(ヤマト運輸の28歳の男性社員)という環境を改め、体力と気合いの体質から脱することが求められている。

 


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