イランというと、日本で報じられるのは核開発疑惑と経済制裁、アフマディネジャド大統領のコワモテな発言ばかり。イスラム教の国というが、普通の庶民はどんな暮らしをしているのだろうか。
10歳のときに来日してきたイラン人芸人、エマミ・シュン・サラミが『イラン人は面白すぎる!』で明かす、イラン人の不思議な生態とは?
―イスラム教というと厳しい戒律が頭に浮かぶのですが、イランの人は意外とうまい抜け穴をつくって、楽しく生活しているんですね。
毎日5回、一回も欠かさずにお祈りするとか、イスラム教をバカにしたら胸ぐらをつかまれる、なんて怖いイメージを持たれてるかもしれませんが、実際はそうじゃないんですよ。例えば、イスラム教ではお酒は飲んじゃいけないんですけど、闇市で皆堂々とお酒を買ってたりしますから。「ヨーロッパから来る友達のために用意してるんだ」とか言って。
お祈りも、公式の場ではやりますけど、仲間同士でいるときに「お祈りやるからオレちょっと抜けるわ」みたいなヤツはまずいないです。戒律をまじめに守るヤツは、なかなか友達ができないんじゃないかと思いますよ。
―ただ、11ヵ月に1回、1ヵ月の断食期間(ラマダン)は大変そうです。
日の出から日没まで、水も食べ物も口にしちゃいけないことになっています。食べ物はなんとか我慢できないこともないんですけど、水が飲めないのはキツいですね。イランでは、夏場は40℃を超えますから。でも、ラマダン中はそこかしこで顔を洗うイラン人を見かけます。実はこっそり水を飲んでいるんですね。あと、川にわざと時計を投げて、「なんてことだ! 祖母の形見を落としてしまった!」と叫んで川にもぐってる人も見たことがあります。
―テレビもラマダン用の特別態勢になるとか。
基本的に食べ物は放送しません。だから料理番組はお皿だけ用意して、「ここにナンがあります」というような、エア料理番組をやっていたりします。
それから、イランでは日本のドラマやアニメ人気がすごいんですが、『アンパンマン』なんて大変ですよ。そもそも普段から、あんがイランにないのでアンパンマンは「黒豆パンマン」、食パンマンは「焼きたてナンマン」みたいな扱いになっている。その上、ラマダンの最中は食べ物を映せないから、モザイクがかかったりするんです。でも、敵のバイキンマンは食べ物じゃないからそのまま。すると、モザイクがかかった正義の味方が普段どおり映ってるヤツと闘うなんて構図になる。
―放送しなきゃいいのに。
子供から大人まで国民的な人気があるので、中止したらクレームが来たそうですよ。
―性事情はどうなんでしょう? 週プレみたいな雑誌はないんですか?
あり得ないですね。だから、国外のポルノ雑誌は喜ばれます。賄賂として使えるんじゃないかな。もちろん、今はネットが普及して事情は変わってきてはいると思いますが、やはり法律で縛られていても性衝動には勝てません。アラーも偉大ですが、マラも重要だということですね。
―日本語上手ですねえ!
もう20年近く日本にいますから。ただ、20年前も今も、イラン人は親日的ですよ。だから、この本がきっかけで、日本の人にイランへ関心を持ってもらえたらうれしいです。
(撮影/高橋定敬)
●エマミ・シュン・サラミ
1980年イラン生まれ。首都テヘランで幼少期を過ごした後、10歳で来日。芸人・武井志門と漫才コンビ「デスペラード」を組み活動している。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』内「メキキの聞き耳」にレギュラー出演。6月17日(日)13時から単独ライブ『日本イラン化計画』を渋谷公園通りシアターDにて開催予定
イランは「危険なテロリスト国家」と思われてるかもしれないが、実際のイラン人はこんなにステキな人たちだった! 断片的なイスラムについての知識が、庶民の生活の全体像にキッチリはまっていく、抱腹絶倒、これまでになかったイラン文化紹介の本。
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