ひきこもり・自立支援をうたった団体について被害者同士がつながる機会を作ろうと、被害者や支援関係者が 5月22日東京都中央区で記者会見を開いた。会見には主催した20代女性とその父のほか、元職員の40代男性など被害者3人、精神科医の斎藤環氏、ひきこもり新聞の木村ナオヒロ編集長などの支援者が出席した。

ひきこもりの問題は医療と福祉のはざまで起きている

会見した20代女性は2015年秋、親子喧嘩を相談しようとした母が自立支援団体の「なんでも相談」に電話したのをきっかけに、ひきこもりではなかったが強制的に連れ去られ、その後3か月にわたって施設で殴る蹴るの暴力を受けながら軟禁状態を強いられたと主張している。「施設と警察と親に殺される前に逃れる方法はないんじゃないか、と追い詰められました」と涙ながらに振り返った。

女性の母は契約金約570万円の返還など損害賠償を求める訴えを起こしている。代理人の望月宣武弁護士は、ひきこもりの問題は医療と福祉の狭間の中で起きていると指摘。「ひきこもりは必ずしも精神疾患を背景にしておらず、医療としてはカバーができず、福祉の面からもバックアップもない。最近は何らカリキュラムもなく賃貸アパートの一室に連れて行かれるケースが多く、手軽なビジネスのようになっている」と話した。

●親の気持ちを逆手に取った、ビジネス目的の支援業者

ひきこもり問題を取材しているジャーナリストの池上正樹氏によると、こういった団体は非行少年などの問題が取りざたされた1980年代に過酷な訓練で校長などが傷害致死罪などに問われた「戸塚ヨットスクール」を契機に社会問題化した。

池上さんは「本人の同意がないままに、家族に売り飛ばされている状況が野放しになっている」と指摘。その背景には、ビジネス目的の支援業者から不安を煽られ詐欺のような手口に飛びついてしまう家族の姿があるという。「藁をもすがるような親の気持ちを逆手に取った形で、親が団体にマインドコントロールされている」と分析した。

また厳しいトレーニングを課すことが多かった以前の自立支援団体に比べて、最近は自立支援をうたいながらも実際には何も行わない、詐欺のような団体が増えているという。「一部の自立支援施設がガイドラインを作り、詐欺的な団体とは線引きをしたいという動きも起こっている」と話した。

支援者らは今後、自立支援業者に関する情報共有ネット(仮称)を設けて、情報を集めて共有したいとしている。問い合わせ先のフォームは<http://bit.ly/johokyoyunet>、メールアドレスは<yamaboushinokai@gmail.com>。

(弁護士ドットコムニュース)

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