宮崎駿監督が引退を撤回し、新しい長編アニメーション映画を作ることを発表した。これに伴いスタジオジブリ求人を発表したのだが、その待遇が海外サイトで注目を集めている。

ジブリサイトに掲載されている求人内容によると、応募資格は、制作に必要な日本語力のある18歳以上。給与は月20万円以上で、賞与は年2回、交通費も上限はあるが全額支給だ。社会保険完備で週休2日制、3年間の有期雇用契約で、期間の延長や正社員への転換は無い。

日本では悪い待遇ではないが、海外からは「冗談だろ?」と呆れる声

この募集要項が海外のアニメ関連求人サイトCartoon Brew Animation Jobsのfacebookで取り上げられると、「安すぎる」という指摘が相次いだ。

「日本語が話せて月給20万円?冗談だろ?ロサンゼルス絵コンテ作成の4分の1以下じゃないか」
2次元アニメのプロの背景美術として働いているけれど、この条件は『本当に』悪い……。ああ……」
「有名企業なのに20万円て低すぎ……東京で暮らすのは安くないのに……」

など、冷笑や失望、驚きを露わにするコメントが多い。

日本のアニメーターの低賃金さはこれまで度々問題視されてきた。NPO法人「若年層のアニメ制作者を応援する会(AEYAC)」が今年2月に発表した調査によると、10代から30代の若手アニメーターのうち、月給20万円以上を得ているのはたった3.9%しかいない。

こうした点を踏まえると、今回話題になったジブリの求人条件は、業界の中ではかなりの好待遇だが、そもそもの日本のアニメ業界の薄給さからすれば、これで好条件になってしまうことに問題があるとも言える。

新人だとしても「学校を卒業したらプロでしょう?」という声も

ここまで大きな反響を呼んだのは、英語に翻訳された際に「未経験可」という募集条件が抜け落ちた影響という見方もできる。

ジブリが出した日本語の求人案内には「業務経験は問いませんが、研修期間(6ヶ月)を経て、一定のレベルに達した後に制作に加わっていただく、新人育成を前提としております」とある。一方Cartoon Brew Animation Jobsの投稿には、終業開始日、契約期間、月給、日本語能力必須、応募締め切り日の情報しか訳されていなかった。

これだとfacebookの英語情報だけを読み、経験を積んだ熟練のアニメーターへ支払われる給与だと誤解する人がいてもおかしくはない。実際にfacebookのコメント欄には、日本語を読める人から

「日本語版読んだ?この募集はトレイニー向けだよ?」
「20万円は東京の平均的な新卒の給与。だからこれは明らかに新人を募集しているよ。熟練者じゃない」

と、募集要項の給与は新人を雇う前提の額であることが念押しされていた。

とはいえ、いくら新人育成だとしても安すぎるという見方は根強い。

「だとしてもこんな安い給与なのはおかしい。学校を卒業したらプロでしょう?食べ物や快適な住まいを確保するには費用がかかるんだよ。東京は物価も高いんだし」

との反論もある。ツイッターの反応を見ると、日本国内ではジブリの募集を良い条件と捉えた人も多い。国内のアニメ業界に対する認識と、海外からの見方に大きな差があることが浮き彫りになった。