世界で初めて地下鉄が開業したロンドン。五輪を控え市内各所でおこなわれていた路線の新設やリニューアル工事も大詰めを迎え、7月末の開幕に備えている。今回様々な新交通機関が整備されたが、どのように変わったのだろうか。

最初、ロンドン地下鉄は1863年にパティントンとファリンドン間で営業を始めた。その5年後にサウスケンジントンとウェストミンスターを結ぶ路線が設けられ、1884年に両路線は市内を周回するように走るサークル線の一部に接続した。車両は蒸気機関により牽引されたため、トンネル上部には煙を排出するための換気口が設けられていた。

その世界初の地下鉄開業から約150年を迎えた現在、ロンドンの市内交通網は大きな転換期を迎えている。その目玉が中心部の地下を横断するように建設中の「クロスレール」と呼ばれる新交通システムだ。

郊外と都心を結ぶ路線と地下鉄の相互乗り入れが進んでいる日本と異なり、ロンドンの場合、郊外から市内中心部へ訪れるためには各ターミナル駅で降車して、地下鉄へ乗り継がねばならない。しかし、クロスレールが開通すれば、郊外からの列車はターミナル駅を終点とすることなくロンドン中心部の地下を通り、再び郊外へ出る直通運転が可能になる。ロンドン交通局によれば、設置予定の駅は38で、その内8駅を新設。メイデンヘッドからヒースロー空港ターミナル駅であるパディントンショッピング街のボンドストリートなど市内主要駅を通ってホワイトチャペルで分岐、ビジネス街のカナリー・ワーフからアビーウッドまたはシェンフィールドに達する。ピーク時には1時間当たり7万8000人、年間では2億人の乗降客を見込んでおり、2018年に開業予定だという。

また、ゴンドラを使いテムズ川を渡河する公共交通機関「エミレーツ・エア・ライン」は五輪を目標に開業間近だ。これはテムズ川を挟んだロンドン東部グリニッジ半島とロイヤル・ドック間を5分で結ぶ路線。名称の通りエミレーツ航空が10年間3600万ポンド(約44億円)でスポンサーになっている。各ゴンドラは30秒毎に運行され、自転車車椅子にも対応している。運行能力は1時間当たり2500人で、バス30台に相当するそうだ。また単なる移動手段だけでなく、ロンドンの観光アトラクションの一つとしても集客を期待されている。
(加藤亨延)

地下鉄として使われていた蒸気機関車。