区民の4人に1人が生活保護受給者という大阪・西成区。日雇い労働者が多く暮らすあいりん地区を抱えるこの街には、生活保護受給を“ビジネス”にする人々がいるという。大阪市西成区役所保健福祉課の担当係長が語る。

生活保護を対象としたビジネスあいりん地区に限ったものではないと思いますが、今まで日雇い労働の方が日銭を稼いで簡易宿泊所に寝泊まりしていたのですが、この不況で仕事がなくなったために、簡易宿泊所の経営も難しくなってきたわけです。そこで“福祉アパート”と呼ばれるマンションに転用され、生活保護受給者がたくさん居住している。それ自体は不正でもなんでもない。ただし、一部、地域にいる方に声をかけてアパートに住まわせる事例もある」

そうして囲い込んだ生活保護受給者たちから、生活保護の一部を“ピンハネ”するのがビジネスの正体だ。

「いろいろ形態があって、純粋に生活が苦しい人を連れてきてピンハネをする。当然、これは業者が悪い。あるいは働いているにもかかわらず、その事実を隠して、生活保護費を受給させキックバックを業者が要求する。この場合、両者とも悪い。それから、紹介してもらって、福祉アパートに入った人が紹介料を払った。その人が別の人を連れてきてキックバックをもらう。こうなると誰が悪いのかわからなくなってしまうケースもある」

ここまで来ると、もはやねずみ講だ。不正の証拠をつかむのが困難だというが、追求する方法はある。

「(不正受給者を)呼び出して聞き取りするなかで、小遣い稼ぎでやっていた人が、自分まで生活保護を受けられなくなると思えば情報提供はあり得る。そのなかで事実を積み上げて業者に対応するわけです」

とはいえ、1人ずつ聞き取り調査を行なっていくため、労力がかかる。しかも、始めは絶対に認めないらしく、時間もかかってしまう。ただ、どんなに労力と時間を費やしても、不正は追及すべきだ。それが税金を納めている国民に対する責任だろう。

(取材/鈴木英介)