国会7月10日、閉会中審を行う。焦点は、学校法人加計学園医学部新設問題。特に前川・前文科事務次官が参考人として出席することが注を集めている。

 そもそも閉会中審自民党は拒否していた。それが都議選前の6月23日自民党竹下国会対策委員長が「都議選の結果を見て考える」と発言したことは記憶に新しい。アンチ安倍の有権者は「都議選で大敗北し、政権は閉会中審に応じざるを得なくなった。追い詰められてきた」と期待するかもしれないが、それは相当に甘い見通しのようだ。政治ナリストの伊藤夫氏が言う。

竹下委員長の発言は、失言と批判されてもおかしくありませんでした。当り前のことですが、加計学園問題と都議選は関係だからです。とはいえ、閉会中審の実施は、常に自民党導権を握っていたのも事実です。竹下発言が逆説的に示していますが、今回の閉会中審は都議選の大敗北を受け、有権者には低姿勢に謝っているイメージをつくるために開かれるわけです」

 まだまだ自民党は余裕があるようだが、伊藤氏に審の注ポイントを挙げてもらおう。

前川氏が何を発言するか、に尽きます。新しい内部文書や、物、もしくは信憑性の高い言が出てくるかということです。しかし、わずか半日の審です。有権者が望むような相解明の実現は、基本的には厳しいでしょう」

 伊藤氏が着するのは、和泉洋人・首相補佐官が参考人として呼ばれていないことだ。和泉氏は昨年、前川氏を呼び「総理は自分の口から言えないから、私が代わりに言う」と発言したとされるが、和泉氏は否定している。また「10/21 萩生田副長官ご発言概要」という文科省の内部文書では「「和泉(洋人)補佐官からは、文科省だけが怖じ気づいていると言われた。官邸は絶対やると言っている」との一文が存在するのも大きく報道された。

加計学園問題の本質とは?

 前川氏と同じ「加計学園問題の重要なキーパーソン」であるにもかかわらず、和泉氏は閉会中審の“対外”となった。しかも審は予算委員会ではなく、内閣と文教科学委員会が舞台。おまけ安倍首相は出席しない。確かに、依然として自民党国会運営導権を握っていることがわかる。

「野党の責務を考えれば、予算委員会で安倍首相を出席させて閉会中審を行わせてこそ100点満点でしょう。しかし今の国会における与野党の関係を考えれば、それは不可能です。とにかく閉会中審を開かせたということで、野党は100ゼロという完封負けではなく、20点ぐらいは得点したことを意味します」(伊藤氏)

 それにしても、ここに至るまで怒濤の展開が続き、「そもそも加計学園問題って、何が問題視されていたんだっけ?」という方も少なくないだろう。一体、加計学園問題の本質とはなんなのだろうか。

「極めて単純化すれば、加計学園問題とは、『特区構想や規制緩和を活用し、特別に医学部を新設することで、医を増やすことの是非』が問われているわけですが、率直に言って、特区構想や規制緩和の基本理念医学部新設が相容れないことは明らかでしょう」(同)

 特区構想なら「人自動運転バスを特別に許可し、成功したら全に広げていく」のが代表例だ。規制緩和なら「電力自由化」だろう。参入障を下げて各社間の競争を生み、電を下げさせるのが狙いということになる。しかしながら特区規制緩和政策で「特別に医学部の新設を認めた」として、どんなメリットがあるのか。医師を大幅に増やし、それを全に広めていくことが必要なのか。動物病院間の競争を化させ、診察料を引き下げることが国家の懸案事項なのだろうか──当然ながら、答えは「否」だ。 

「むしろ加計学園医学部を新設すると、私学助成金が交付されます。かなりの額ですし、言うまでもなく助成金は税が原資です。加計学園医学部民の税を使うことが正しいかどうかというのが、この問題が有権者に問うている本質でしょう」(同)

 加計学園の問題を「そもそも贈収賄事件ではなく、決定プロセス明正大に行われている。だから政局化するのは正しくない」と擁護するもある。だが、これも「有権者の本音」を視した論にすぎない。

政治の怖いところですが、有権者は『手続きが法的に正しいか否か』などという問題に関心は持ちません。『安倍首相の友人を、特別にひいきした』という疑惑が生じたことそのものを手厳しく批判しているのです」(同)

 安倍首相が思い出すべきだったのは、「李下に冠を正さず」という格言に違いない。

安倍首相められていたのは、官僚に『加計学園の加計孝太郎理事長は私の友人だ。だからこそ医学部の新設問題は私に忖度せず、むしろ厳しく審してほしい』と明言することだったはずです」(同)

支持率低下の深刻度

 自民党といえば「有政治家が、自分の知り合いを強引に共事業に参画させる」という場面が、ノンフィクションでもドラマでも、当り前のように描かれてきた。今回の疑惑も、根本は同じだろう。

「確かに加計学園問題を、昔から繰り返されてきた有政治家による『政治の行使』と見ることは間違いではありません。しかしながら1点だけ、私には初体験だったことがあります。総理大臣の関与が取り沙汰されたことです。いやしくも一トップです。それが『政治屋』のように強引な政治を行使することは、もが謹んできました」(同)

 安倍政権が窮地に立たされているのは事実だ。しかし政権は乗りきれると考えているし、これまでも実際に乗り切ってきた。特定秘密保護法でも、安保法制でも、一時的に支持率は下落しているが、その後は回復している。今回なら、8月実施とも報道されている内閣改造が支持率回復への正念場なのは間違いない。小泉進次郎氏や、橋下徹氏の入閣可性が取り沙汰されている。だが、仮にサプライズ人事を実現させても、支持率が回復しないシナリオもあり得るという。

「これまで安倍内閣に対する支持率低下は、政策に対する異議申立てでした。そのため、よくも悪くも法案が通ってしまえば、反対を続けても意味がありません。有権者は渋々だとはいえ、納得せざるを得ない。ところが最近の安倍政権に対する不信は、政権の体質、政権の驕りに対する批判なんです。これは政策とは異なって尾を引きます。抜本的に安倍政権が姿勢を変えない限り、不支持者は一定の層として存在し続けるでしょう」(同)

 問題は、不支持者の受け皿だ。都議選では「民進党以外の受け皿」を示した都民ファーストの会が圧勝した。これが有権者自身と、政治家に与えた影は決して少なくないという。

安倍政権に対する高い支持率は、『他に選択肢がない』ためだという摘はなかったわけではありませんが、都議選でその正確性が明されたというのは大きいでしょう。受け皿さえあれば、相当数の有権者は安倍政権に批判的な投票行動を行うわけです。ならば閉会中審を経て、内閣改造の支持率への影が出えば、自民党内の“ポスト安倍レース”が化したり、野党再編が進んだりする可性があります」(同)

 いずれにしても、安倍政権の屋台は健在だとはいえ、あちこちの“み”は相当にしくなってきた。まずは閉会中審を、安倍政権がやり過ごせるかどうかが最初のハードルらしい。
(文=編集部)

参考人招致に臨むことになる前川喜平氏(写真:写真:Natsuki Sakai/アフロ)