任天堂の時価総額は、8月23日終値時点で5兆972億円だ。東京券取引所1部上場企業の時価総額ランキングの14位。キヤノン武田薬品工業日産自動車を上回り、本田技研工業ホンダ)、ソニーに迫る。任天堂の時価総額は6月15日、8年5カぶりに5兆円の大台に乗せて以来、好調を保っている。

 価を押し上げたのは、3月3日に発売した家庭用ゲーム機「Nintendo Switchニンテンドースイッチ)」だ。スイッチは据え置き機でありながら、屋外に持ち出して複数の人が遊べるところに新しさがある。

 当初、内外で発売1カの出荷台数200万台を計画していたが、予想をえる274万台を記録した。その後も爆発的に売れ、6月末には累計販売台数は470万台に上り、現在も品薄状態が続いている。

 スイッチが牽引して任天堂の業績はV字回復した。2017年4~6月期の連結決算日本会計基準)は、売上高が前年同期2.5倍の1540億円、営業利益は160億円の黒字(前年同期51億円の赤字)、最終利益は212億円の黒字(同245億円の赤字)と黒字転換した。黒字幅は4~6月期としては08年以来、9年ぶりの高準となった。前年同期350億円あった為替差損が、4~6月決算では円安に振れたため71億円の差益が出た。為替だけで421億円善されたのが大きかった。

 ゲーム機本体だけでなく、ソフトも売れた。「ゼルダの伝説シリーズの最新作などがヒットし、スイッチ向け販売が814万本となった。

 そのため任天堂は、18年3月期の業績予想で強気の見通しを立てている。売上高は前期53増の7500億円、営業利益は2.2倍の650億円の見込みだ。ただし最終利益は450億円で56の減益になる。

 173月期の最終利益は1025億円だった。大リーグシアトルマリナーズ運営会社の持ちの売却益645億円や、任天堂が議決権の32を所有する持ち分法適用会社、ポケモンからの投資利益202億円を計上したことによる。18年3月期は特別利益がなくなるため、最終利益は半減する。

 通期でスイッチ1000万台、スイッチ向けソフト3000万本の販売を計画している。その好調の陰で悩みの種は、スイッチが品薄なことだ。増産したくてもスマートフォンに使われる半導体部品の需給が逼迫しているため、思うようにつくれない状況にある。

 最大の勝負どころは、10月下旬から始まる欧クリスマス商戦と日本の歳末商戦だ。この時期に、スイッチをどれだけ売ることができるかにかかっている。それは、今後の販売台数を占う試石となる。かき入れ時に間に合うようにスイッチを増産して、品薄状態を解消できるだろうか。

時価総額5兆円台はいつまで続く?

 それでは、任天堂の時価総額5兆円台はいつまで続くのか。ゲーム銘柄は価の上昇・下降の振り幅が大きい。

 任天堂は、据え置きゲーム機Wii」などが人気だった07年に時価総額が10兆円の大台に乗せたあと、一度は1兆円台まで減少した。

 昨年、スマホゲームポケモンGO」が盛り上がった際にも、任天堂価は乱高下した。16年7月19日の高値は3万2700円だったが、同8月初旬には2万円近辺まで急落した。

 そんななか、君島達己社長キャラクター提供するIP(知的財産)戦略にを入れている。

 ユニバーサル・スタジオ・ジャパンUSJ)は6月8日20をめどに開業する新エリアSUPER NINTENDO WORLD(ス―パー・ニンテンドーワールド)」の着工式を行った。USJ過去最高となる600億円を投じ、人気ゲームマリオカート」を模したアトラクションを設ける。任天堂ゲームコアな利用者ではない家族連れに、キャラクターに直接触れてもらうような仕掛けをつくる思惑だ。

 任天堂は、ゲーム機ゲームソフトに続く柱に、人気キャラクターライセンスビジネスを据える。マリオがその第一弾で、IP戦略の本丸テーマパークだ。

 USJテーマパークが実際に稼働するのは20年以降になる。それまでは浮き沈みがしいゲームで生き抜いていかなければならない。

 価は07年11月1日、上場来高値の7万3200円をつけた。ここ10年来の安値は12年7月25日8060円である。

 スイッチ人気で、久しぶりに任天堂に活気が戻ってきた。17年の高値は6月27日の3万9530円。今後、4万円をえるのか、逆に下落に転じるのか――。スイッチの品薄状態が年末まで続くと、市場では「価の上昇は限定的になる」との見方も広がっている。
(文=編集部)

「Nintendo Switch」(「任天堂 HP」より)