「アート引っ越しセンター」で知られる引っ越し会社グループ「アートコーポレーション」で働いていた元従業員の男性3人が10月10日、同社と同社の労働組合に、未払い残業代や、給料から引きされた引っ越し事故の賠償引き同意のない組合費の返還など計約376万円の支払いをめ、横浜地裁に提訴した。

男性らは、

(1)同社がつけた賃台帳と男性らが計算した残業代の差額の支払い

(2)「引っ越し事故賠償制度」に基づいた賠償の返還

(3)制度があると知らされていなかった通勤手当の支払い

(4)業務連絡で使用した私用の携帯電話の支払い

(5)引き同意がなかった労働組合費の返還

めている。

アート社、未払い残業代の差額認める

訴状などによると、今回提訴したのはアート引越センター横浜都筑支店の元社員2人と元アルバイト1人。いずれも2011年4月2013年4月の間に入社し、2016年8月2017年5月の間に退社した。

社外の労働組合を通じた未払い残業代に関する団体交渉の中で、同社は2017年6月13日、「当社が把握していた労働時間と実際の勤務時間に異なるところがあったため、正しい勤務実績に基づいて賃を算定した場合の不足分を支払う」と差額があることを認めた。しかし、その後の労基署を交えた交渉においても、未払い残業代などの支払い範囲は一定程度とし、さらに内容を口外しないといった条件がつけられたため、訴訟に至ったという。

「事故賠償」を給料から勝手に引き、足りない分は追加請

提訴後、元社員の男性(24)と代理人の宿昭一弁護士らが厚労省記者クラブで会見し、同社の「引っ越し事故賠償制度」の問題点について説明した。

これはベテラン中堅の正社員、常勤アルバイトなどの引っ越し作業のリーダーに対して、1件の事故につき1人3万円を上限に損賠償を負担させる同社の制度だ。顧客のクレームがあり会社が賠償を支払った場合、ほぼ自動的にリーダーが賠償を支払わされていたという。

男性らがいた横浜都筑支店では、同意がないまま給料から「引っ越し事故積立」として勝手に引きされていた。男性によると、1日500円の積み立てだったが、それで賄えない分については1回の現場会議額を提示され、リーダーで割り勘して支払っていたという。

宿弁護士は、「とりわけ重過失があったり、故意に落としたような事故であれば、支払いはやむを得ないが、同社が請していたのは通常の業務で生じている損だ。こういったものは使用者側が支払うべきで、リーダー責任として請するのはおかしい」とした。

勝手に引き「放っておくことができない」

会見に参加した元社員の男性(24)=横浜市=は、「毎過酷な残業をして心身ともに疲れ切って、毎日睡眠不足に襲われている中で、物を壊したらお金を払えということがずっと続いていた。(事故賠償について)自分以外にも、かなり多くの額を勝手に引きされている人がいる。『放っておくことができない』と皆でをあげて、訴訟を提起した」と話した。

また、今回の裁判とは別に、数か以内に原告3〜4人による、「引っ越し事故賠償制度」に基づく賠償の返還請事件の提訴も予定しているという。宿弁護士は、「同社で全的に行われている制度のため、今後訴訟が大きく広がっていく可性がある」と話した。

アートコーポレーション広報部は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「訴状が届いておらず、内容がわかりかねるためコメントできない」とコメントした。

弁護士ドットコムニュース

「アート引っ越し」給料から勝手に「事故賠償金」を天引きされた…元従業員が提訴