小田急電鉄が「複々線」完成にともなう新ダイヤを発表。「複々線」が非常に大きな影響を与え、特に「混んでて遅い」とされる小田急の朝の通勤時間帯、大きく変わりそうです。停車駅見直し、「メトロえのしま」新設なども行われます。

「ボトルネック」解消で大きく変わる小田急のダイヤ

小田急電鉄が2017年11月1日(水)、新たなダイヤを発表。2018年3月から、「小田急線の通勤」が大きく変わりそうです。

小田急線は1日およそ200万人のお客さまにご利用いただいておりますが、最混雑区間の混雑率は東京主要区間でワースト3。『朝の通勤時間帯の混雑』という非常に深刻な問題を抱え、これまで『混んでいて遅い』という意見を頂戴しておりました。新ダイヤでは、そのイメージを一新することができます」(小田急電鉄 星野晃司社長)

線路が「片側2車線」に 混雑率、大幅緩和へ

2018年3月のダイヤ改正で、新宿駅側の複々線区間が増えます。道路にたとえると、これまで片側1車線だった区間が片側2車線になって“車線”が増えるため、運行できる列車本数も増加。ラッシュピーク時の列車本数が27本から36本になり、輸送力は40%アップ。「ワースト3」の混雑率は192%から150%程度になる見込みです。

ダイヤ改正で複々線化されるのは、東京都世田谷区内の世田谷代田~東北沢間1.6km。片側1車線でボトルネックになっていたこの区間の複々線化で、登戸駅川崎市多摩区)から新宿駅側が“片側2車線化”されます(代々木上原駅からは新宿駅方面、東京メトロ千代田線方面へそれぞれ片側1車線の線路が延びる形)。

所要時間を短縮 ピーク時に「快速急行」大増発 「通勤急行」「通勤準急」新設も

複々線になることは、道路にたとえるなら、追い越し車線ができるようなもの。そのため、速い列車が先行する各駅停車など遅い列車につっかえることが減るため、所要時間が短縮されるという効果も生まれます。

ダイヤでは平日朝の通勤時間帯上りで、速い「快速急行」を25本増発し28本運転。ラッシュピーク時の所要時間が、町田駅から新宿駅までは最大12分短縮の37分、小田急多摩センター駅から新宿駅までは最大14分短縮の40分、経堂駅から大手町駅までは最大6分短縮の27分になります。

また、停車駅の少ない「通勤急行」(停車駅:唐木田、小田急多摩センター小田急永山、栗平、新百合ヶ丘、向ヶ丘遊園、成城学園前、下北沢、代々木上原、新宿)と、「通勤準急」(停車駅:本厚木から登戸までの各駅、成城学園前、経堂、下北沢、代々木上原、千代田線内)も新設されます。

通勤時の着席機会が増加 小田原へ「悲願の60分切り」実現

都心へ、乗り換えなしの「直通列車」を増発

平日朝の通勤時間帯上りで、千代田線に直通する「急行」「通勤準急」「準急」「各駅停車」を17本増の28本運転。そして多摩線から新宿駅へ直通する「通勤急行」「急行」が13本新設されるほか、江ノ島線から新宿駅へ直通する「快速急行」も15本に増加。「都心方面へ速く、乗り換えなしでの通勤が拡充」されるといいます。

着席機会が増加 新たに小田急多摩センター始発も

平日朝の通勤時間帯上りにおける特急ロマンスカーは、4本増の11本運転に。新たに海老名駅へ7本が停車し、藤沢、大和、秦野、本厚木、相模大野、町田、新百合ヶ丘駅の停車本数が倍増します。

また、同じく平日朝の通勤時間帯上りで小田急多摩センター始発列車(「通勤急行」)が6本、新たに設定されるほか、藤沢、海老名、向ヶ丘遊園、成城学園前駅を始発とする列車も増えます。

新宿~小田原間、悲願の60分切り実現 「メトロえのしま」新設

特急ロマンスカー「スーパーはこね」の新宿~小田原間が5分短縮の最速59分、新宿~箱根湯本間が9分短縮の最速73分に。“新宿~小田原間60分切り”は小田急史上初めてで、「悲願」だったそうです。

また、東京メトロ千代田線経由で土休日、新たに北千住~片瀬江ノ島間の特急ロマンスカーメトロえのしま」が新設されるほか、朝の上り特急ロマンスカーの名称が「モーニングウェイ」、千代田線直通は「メトロモーニングウェイ」になります。

「ロマンスカー」「快速急行」などの停車駅見直しも

「快速急行」は登戸停車へ 「多摩急行」は運転取り止め

ダイヤでは、特急ロマンスカーの停車が、向ヶ丘遊園、新松田駅で取り止められます。

快速急行」は新たに登戸駅へ停車するほか、多摩線での運転が始まります。停車駅は栗平、小田急永山、小田急多摩センター、唐木田です。

「準急」は全列車が千代田線直通で、新たに千歳船橋、祖師ヶ谷大蔵、狛江駅に停車します。

「通勤急行」と「通勤準急」が先述の通り、平日朝の通勤時間帯上りで新設されます。「通勤準急」は全列車が千代田線直通です。

多摩線千代田線を直通する「多摩急行」「急行」は運転が取り止められ、日中に唐木田~新宿間直通「急行」が新設されます。なお、多摩線千代田線の直通列車はほぼなくなりますが、列車の接続に配慮しているとのこと。

終電時間の繰り下げなども実施

このほか、新宿駅発の終電が多摩線は33分遅い0時38分になるなど、終電時間の新宿駅発車時刻が繰り下げられるほか、初電時間の繰り上げ、平日夕・夜の「快速急行」など下り列車増発、日中の向ヶ丘遊園~千代田線直通「準急」新設、土休日における新宿~片瀬江ノ島間の「快速急行」を2本から83本(上下合計)に大増発するといった改善が行われます。

「混んでいて遅い」を返上するという新ダイヤでの運行は、2018年3月中旬から実施される予定です。

【写真】実現する「複々線」のイメージ

小田急は2018年3月のダイヤ改正にあわせて、制服も一新する。中央右が星野社長(2017年11月1日、恵 知仁撮影)。